【第21話】県大会2回戦 その1
県立ロボコン競技場の控室。
2回戦を30分後に控えて、みんないつになく落ち着かない雰囲気です。
「岩田さん、来るんですかね。
俺、どうしたらいいです?」
1年生の航くんは特に不安と期待と入り混じったような、微妙な感じです。
出場の可能性があるかもということで1週間前から急ピッチで特訓してきたので、
私も彼に出て欲しい気持ちと、申し訳ないけどウミちゃんに来て欲しい気持ちと両方あります。
「航ジン一年生、いつでも出られるように準備しておけ。
出場した場合にはもちろん勝ってもらうつもりだからな。」
真黒くんだけはいつも通り。
勝つために、ただその一点のために航くんに指示を出します。
彼のロボットや勝負に対する気持ちがどこから出てくるのか、
ちょっと不思議です。
でも、今は私も信じたい。
県大会に勝ち残ることを、
リクくんが目覚めてまた私たちと戦ってくれることを、
この夏がまだ続くことを。
「江波先輩、ゲッコウ、動かしてみてもいいですか?」
「あ、いいですけど、狭いからちょっと歩かせるぐらいですよ。」
航くんはヘッドマウントコンピュータをかぶると、控室の中でゲッコウを歩かせ始めました。
ツキカゲは操作者の脳波を入力として次の動きを予測し、
手足のサポーターが動くようになっていました。
ゲッコウもこの技術の応用で脳波で遠隔操作可能になっています。
「航ジン一年生、同じ側の手足が動いておるぞ。」
「えっ、あっ…… すいません!」
ゲッコウは幼稚園児の行進みたいに動いていました。
真黒くんの指摘で、航くんは動きを直します。
だいぶ緊張していますね。
「真黒くん、入り口まで見に行ってみましょうか。
ウミちゃん、来てるかもしれません。」
「ヌラックは反応なしか?」
「…… ええ、既読ではあるんですけど。」
通信アプリのヌラックで昨日の夜からメッセージを送っていましたが、
応答はありません。
無理もないとは思うし、常識的に考えて私たちのほうがおかしいでしょうが、
今は彼女の空手で鍛えた精神と、リクくんを思う気持ちにかけるしかありません。
「機堂高校、機堂高校のみなさんは試合会場にお越しください。
繰り返します。機堂高校……。」
呼び出しの放送がかかりました。
試合はまもなくです。
「部長。」
「うむ…… 時間切れだな。
航ジン一年生、初陣だ。」
「待って!」
誰かが控室のドアを開けました。
「あたしを出してくれるって…… 言いましたよね、ワガハイ先輩。」
走ってきたのでしょう。汗だくで息を切らしていました。
ウミちゃんです。
「遅かったな、A案。
出るからには勝ってもらうぞ?」
真黒くんが人の悪そうな笑みを浮かべました。




