【第18話】誤解されやすい男
Tシャツ姿の男が丹念にロボットの調整をしていた。
ロボットは高さ2.5メートル。小さめだが、搭乗式のヒト型ロボットだ。
外観検査。全体の汚れをふき取る。傷ついた部品があれば交換。
電圧測定。バッテリーの電圧降下は許容内だ。
メモリチェック。全ビット異常なし。メモリ空間はクリーンだ。
「まだ県大会1回戦で使っただけだよ。
そこまでしなくても問題ないんじゃない?」
ロボットの調整をしていた男の後ろから、小柄な女子生徒が声をかけた。
男は振り返って応じる。
「部長……、
それじゃあ俺が無駄に働いたって言いたいのかよ。」
「相変わらずのネガティブくんだね。
心配いらないから、今日はもう上がっていいよ。」
男は部長の言葉を聞き流しながら作業を続ける。
「メンテ不足だったらどうしてくれんだよ、なあ。」
「いや、その場合でもパイロットの僕としてはがんばるけど。」
「……お、ネジがゆるんでたなあ。」
「一緒に帰らない?ちょっとヌクドナルドにでも寄って行こう。」
「誰が行くかよ、あんな狭くて居心地の悪い店。」
「あはは、ジュースをかけられたんだっけ?
まだ根に持っているの?」
部長は笑いながら、近くにあった学ランを手に取ると、
男に近づいて肩にかけた。
「ほら、おごるから……って、
その悪趣味なTシャツも相変わらずだなあ。
何て書いてあるの?」
「……闘狂。」
男のTシャツには謎の漢字がプリントされていた。
闘狂Tシャツの男は学ランに袖を通しながら立ち上がる。
「メンテは終わった。俺は帰る。」
「敬意!敬意を払って!
小柄な合法ロリに見えるかもしれないけど、先輩で部長!」
「それじゃあ、おごるだけあんたが損だろうよ。」
「ちょっと話があるんだ!」
「話?ここで聞く。」
部長はため息をついてあきらめた。
闘狂Tシャツの後輩を誘うのは無理そうだ。
腕のいいメカニックには違いないのだが、ネガティブでかたくなだ。
「2回戦の相手だけど、パイロットが交通事故にあったらしい。
棄権かもしれないね。」
部長の言葉に、闘狂Tシャツの男は目を見開いて、一瞬固まった。
論弩高校ロボコン部。
機堂高校の県大会2回戦の対戦校であった。




