【第17話】B案
「岩田リク二年生の容態はどうだ?」
病院に着くなり、真黒くんが言いました。
「生きているけど…… 意識が戻るかはわからないと、お医者さまが。」
「そうか。
さしあたり、二回戦のパイロットが問題だな。」
この人は、こんなときでもロボコンのことを。
「ご家族は?」
「みなさん、リクくんのそばに。」
「岩田ウミ一年生もいるのか?無事なのか?」
「はい、リクくんがウミちゃんをかばうときに突き飛ばしましたが、
ちょっとぶつけただけみたいです。」
コートまで着込んでいたせいか、擦り傷さえなかったんですよね。
「なるほど。それは不幸中の幸い。」
「はい、リクくんはウミちゃんを大切にしていましたので。」
私の声が聞こえているのか聞こえてないのか、
真黒くんは両腕を組んで考えごとをしているような素振りでした。
「うむ、これまでの言動から判断するに、今日はいったん引き返すのが賢明だな。
江波ツキ子三年生、我輩は帰る。
明日から急ピッチで航ジン一年生を仕上げなければならん。
江波ツキ子三年生はゲッコウをすぐ使えるよう立ち上げておいてくれ。」
「ゲッコウを明日すぐって……!」
無茶苦茶を言わないでください。
リクくんがあんなことになって、私だって……。
「つらいか?だからこそだ。
こういうときに沈む気持ちに引きずられるべきではない。
自らやることを探し、もがいて時を進めていくのだ。」
「おっしゃられていることはわかりますが…… そもそも、
航くんではリクくんの代わりにはなりません。」
航くんが五月からゲッコウの操作を練習し始めて、まだ二か月も経っていません。
航くんはリクくんと違って格闘技経験者ではなかったので、
ツキカゲのノウハウや学習データを比較的応用しやすい
ヒト型ロボットのゲッコウを彼のために作ったのでした。
「もちろんだよ、江波ツキ子三年生。
だが時間がないからこそ、できることはすべてやっておかねばならん。
航ジン一年生には悪いが…… 彼とゲッコウはB案ということだ。」
「B案…… では、A案は?」
「うむ、そちらは任せておけ。」
納得いかないことだらけの私を置いて、
真黒くんは足早に去って行きました。




