【第14話】デート その2
あたしはカーテンの隙間を少しだけ空けて、隣の家のツキ子姉の部屋の様子を探っていた。
お兄とツキ子姉は、床に座って話をしている。
「なに笑顔で談笑してんのよ!」
「ああ、近い!顔が近い!」
「用が済んだならさっさと帰ってきなさいよ!」
聞こえるはずのないツッコミを一人で続ける。
むなしい。
ようやく、お兄が立ち上がった。帰ってくるようだ。
そこであたしが玄関に回ってそっと様子をうかがっていると、
なんとツキ子姉がお兄の手を握って家と反対方向に歩き出した。
「き…… 緊急事態だわ!」
あたしは帽子とサングラスとマスクとサマーコートを急いで身に着け、
二人の後を追った。
二人の向かった先はスポーツ用品屋だった。
あたしは商品棚を挟んで隣の列に身をひそめ、棚の隙間から二人をのぞく。
そう、のぞきだ。
あたしは一体どうして、こんな季節外れの厚着で実の兄ののぞきなんか……。
「これは新製品で、圧力をうまく全身に逃がして
ダメージを減らしてくれるみたいですよ。」
「ちょっと試着してみますね。」
スポーツインナーは空手やジョギング用だけでなく、
最近はロボット用にかなり頑丈なものも出ていた。
インナーの買い替えに付き合うぐらい、あたしだってできるぞ。
「いい買い物ができましたね。」
「ツキ子先輩のおかげで勉強になりました。」
二人はスポーツ用品屋を出ると、クレープ屋に並んだ。
「付き合ってもらっちゃいましたし、おごりますよ。」
「すみません。実は甘いものには目がなくて……。」
バカ言うな。
ツキ子姉なんて机に向かってるだけなんだから、カロリー取りすぎだ。
太るぞ。
もうすぐ暗くなる。補導されるぞ。
あたしは精一杯の念を二人に送ったが、
そんなもの意にも介さず、二人は仲良く並んでクレープを食べていた。
仲がよろしいことで。
「今日は一日付き合わせちゃってすみませんでした。」
「いえ…… 楽しかったですよ。」
二人がようやくツキ子姉の家の前で別れようとしたときには、
もう夜の7時前だった。
いつもならあたしの夕飯を作ってる時間だろ、お兄。
あたしは少し離れた電信柱の陰から二人を見る。
「そうそう、帰る前に…… ウミ!」
「ひゃい!?」
突然、名前を呼ばれて変な声が出た。
「ずっと、俺たちをつけてただろ?出て来いよ。」
「…… にゃ、にゃ~ん。」
「出て来いって。」
必死の抵抗もむなしく、あたしは二人の前に姿をさらすことになった。
何故か季節外れの厚着をしているあたしを見て、ツキ子姉は驚いた顔をしている。
むなしい。




