【第13話】デート その1
県大会1回戦の翌日、俺はツキ子先輩の部屋にいた。
ツキカゲのメンテナンスのために呼ばれたのだ。
「結構ひどくやられましたね。」
ツキ子先輩は、ツキカゲの手サポーターを触りながら言った。
サポーターは少し凹んでしまっていた。
昨日の試合のゴム弾だ。
「すごい威力でしたからね。
生身だったら骨折していたかも。」
「よく勝てましたよね、さすがリクくん。
それに、面白いデータも取れました。」
ツキ子先輩の机の上にはツキカゲのヘルメットが置かれていた。
ケーブルでデスクトップマシンに接続されている。
「ツキカゲのAIも更新中です。
次の戦いではリクくんの動きを予測して、
今よりもっとうまくサポートしてくれるでしょう。」
「すごいですね。俺には全然わかりません……。」
「人が体を動かすときも、次はどうやって動かすっていうつもりがあって、
準備しておくじゃないですか?
ツキカゲもリクくんの動きをお勉強して、準備することで、
リクくんの動きをより速く、より強くできるんです。
それに次からは自動音声でナビゲーションしてくれる機能も……。」
ツキ子先輩の説明はやっぱりよくわからなかったが、
活き活きしていてかわいい。
「いやいや!何を言ってるんだ、俺は!?」
俺はすかさず自分の右手で自分の頬を殴った。
「リクくん?」
先輩が怪訝そうな視線を俺に向ける。
「いや、はは、何を言ってるんでしょうね、俺は?」
「さあ?」
先輩は小動物のように首を傾げた。
いかん、頭がおかしくなる。
「じゃあ俺、もう行きますね!この後、予定もあるので。」
「どこか行くんですか?」
「はい、ちょっと試合の時に着るインナーが砂でだいぶ傷ついたので、
買い換えようかと……。」
「それなら、私も行きます。
次の試合に向けて、協力したいですし。」
「……。」
先輩からは逃げられなかった。
しかも、先輩の家を出るときに先輩のお母さんからも追撃を受けた。
「あら、ふたりでお出かけ?デートかしら?」
「いやいや、部活の買い物です!」
俺はあわてて靴を履き、玄関を出た。
少し待つと先輩も出てくる。
「先輩のお母さんにも困っちゃいますよね、ははは……。」
「…… デートなんですかね?」
「いやー、はは…… どうでしょう。」
俺があいまいに笑うと、先輩は自分の右手で俺の左手をつかんだ。
「手ぐらいつなぎましょうか。せっかくのデートなんですから。」




