【第12話】県大会1回戦 その2
お兄の体が吹き飛ばされた。
試合が始まるなり、対戦相手の戦車みたいなクルマ型ロボットが
ボーリング玉ぐらいの大きな弾を撃ってきたのだ。
両手を交差させて十字受けしたのが見えたけど、
受け切れなかったのかもしれない。
「心配するな、岩田ウミ一年生。
あれは自ら後方に飛び、ダメージを最小限に抑えたのだ。」
何故か一般席に来ているワガハイ先輩が頼んでもいない解説をした。
「先輩、セコンドに入らなくてよいんですか?」
「なに、試合さえ始まってしまえば我輩にできることなどない。
あとは岩田リク二年生と、江波ツキ子三年生に任せるのみだ。
特に今回は、こうして一般席で貴様と話すほうが
我が全国制覇計画にとって有益と判断した。」
「どういう意味です?」
「妹想いの岩田リク二年生は、ずいぶんと思い悩んでおるようだからな。」
話している間に次の弾が撃ち出された。
先ほどより間合いが遠い。お兄は横にステップを踏んで弾を避けた。
……が、砂に足を取られて体勢を崩した。
この試合会場は一面砂だらけ。砂漠を模したステージのようだった。
三発目がお兄に迫る。
「お兄、危ない!」
思わず声が出た。
お兄は回避も受けもできず、弾は直撃。
「あんなの当たったら死んじゃう!」
「落ち着け、さすがに鉛の弾ではない。ゴム弾だ。」
「でも、あんな大きな……!」
「あらあら!ウミ、でもほら…… 大丈夫そうよ?」
母の声に促されて見ると、三発目が着弾した近くで相手の戦車が止まっていた。
お兄の姿は見えない。
「見ろ、面白いだろう?
こういう予想できぬ展開が起こるのが、ロボコンの醍醐味だ。」
ワガハイ先輩がニヤニヤ笑う。
その後は、一瞬だった。
戦車の後ろの砂が盛り上がったと思うとお兄が飛び出してきた。
そのまま戦車に飛び乗り、車体の上に取り付けられていたコアを破壊。
試合は終了した。
「わぁー…… すごかったわねえ。」
母が無邪気に拍手する。
戦車から降りてきた相手のパイロットは泣いていた。
お兄はほっとしたような顔で、ツキ子姉と話していた。
「あれだけのロボットを作るには時間も金もかかったことだろう。
誰もが勝ちたい。そのために最大限の準備をしてくる。
だが、試合では必ず勝者と敗者に明暗が分かれる。
どうだ、美しいと思わんか?」
「…… 別に。」
あたしは、ワガハイ先輩に敢えてそっけない返事をしながら、
母につられて拍手していた手を引っ込めた。




