【第11話】県大会1回戦 その1
お兄の胴回し回転蹴りが顔面に直撃して、相手の選手は倒れた。
一本。
世界大会優勝だ。
高校生にして、空手の世界チャンピオンになったのだ。
すごい!お兄、カッコいい!
あたしはお兄に飛びつく。
お兄は余裕の笑顔で受け止めてくれる。
会場を埋め尽くす拍手。
ツキ子姉が隅っこから歩いてきた。
すっかり反省したようで胸も小さくなっている。
「すみません。
やっぱりリクくんはロボットなんかより空手をやるべきでした。」
「これにて一件落ちゃあーっく!」
「えっ!?」
突然近くで聞こえたお兄らしからぬ声と台詞にびっくりして
自分が飛びついた相手をよく見ると、
お兄じゃなくてワガハイ先輩だった。
目が覚めた。
「……悪夢だわ。」
母の運転する車で家から1時間ほど走って、県立のロボコン競技場に着いた。
屋内外に、何種類もの地形や特殊な仕掛けまで備えた本格的な施設らしい。
くそっ、いくら流行ってるからって税金をこんなことに使いやがって!
あたしが大人になったら絶対こんな県知事には投票しない。
「ウミー、ちょっと待ってー」
イライラしながら歩いていたら、ちょっと早く歩きすぎたらしい。
母に呼び止められた。
「ごめん、お母さん。」
「去年も来たけど、立派すぎて迷っちゃうわ。
リクたちが試合をするA会場ってどこかしら?」
「A会場はこのまま200メートルほどまっすぐ行って左です、ご母堂。」
「……うげっ!」
思わず声が出た。
ワガハイ先輩だ。
「こらっ、ウミ!はしたない声を出すんじゃありません。
ごめんなさいね、親切に声をかけてくださったのに。」
「いえいえ、お気になさらず。
部員のご家族ともなれば我が身内も同然。
困られている姿を見て放ってはおけなかったのです。」
ワガハイ先輩はキザったらしく母に頭を下げる。
「岩田ウミ一年生も、よく来たな。
ようやく兄貴の応援をする気になったか。」
「……別に。」
あたしはワガハイ先輩から目をそらした。
今日は母がお兄の県大会の応援に行くのに、
どうしてもと言うからついてきただけだ。
ロボット部に納得したわけじゃない。
「まあ、せっかく来たのだからとくと見ておけ。
お前の兄貴は強いぞ。我輩の全国制覇計画には外せぬ駒だ。」
ロボットなんか関係なく、お兄はもともと強い。
お前なんかに言われなくてもわかってる。
「では試合前のミーティングがあるので、失礼!」
言うが早いか、ワガハイ先輩はすごい速さで走り去った。
「部長さん、面白いかたよねえ。」




