エピローグ1:支配者の告白。――彼女の「推し」になりたくて、俺は世界を買い取った
神宮寺本邸、リフォームされた主寝室。
月光が差し込む広いベッドの中で、俺の腕に収まり、安らかな寝息を立てている女がいる。
神宮寺 花音。
つい数時間前、全世界の前で俺の「所有物」であることを誓わせた、俺の妻だ。
「……ふふ……湊、さん……尊い……」
寝言でさえ、俺の名前を呼びながら「尊い」などと口走る。
彼女は知らないだろう。その無防備な呟き一つで、俺の理性がどれほど容易く、音を立てて崩れ去っているかを。
(……供給? 違う。これは、俺の『渇き』だ)
初めて彼女を見たあの日。
自分と瓜二つのアイドルの写真を見て、涙を流して震えていた彼女。
俺は、神宮寺の頂点に立ち、金も権力も、女の誘惑もすべて手に入れてきた。だが、あんなにも「魂を捧げるような眼差し」を向けられたことは一度もなかった。
猛烈な嫉妬が、胸の奥で爆発した。
俺と全く同じ顔をした、画面の中の「虚像」に。
彼女の視線を、熱量を、その震える指先を――すべて、俺だけのものにしたい。
そのためなら、副社長の椅子も、家柄も、国家予算並みの資産も、すべて「餌」に過ぎなかった。
「……花音。……君は俺を『天然』だと言うが、俺はいつだって計算ずくだったんだぞ」
俺は、彼女の柔らかな頬を指先でなぞった。
彼女が喜ぶなら、ドバイの海を買い占める。
彼女が驚くなら、東京中のビルを彼女の色に染める。
彼女が「推し」を拝みたいと言うなら、俺自身がその「推し」を超え、彼女の宇宙のすべてを俺という存在で埋め尽くしてやる。
「……俺以外の男(KYLO)の名前を呼ぶたび、君をどこか遠くへ監禁してしまいたくなる。……その震える唇を、俺の愛だけで塞いでしまいたくなるんだ」
俺は、彼女の首筋に深く、深く顔を埋めた。
漂ってくる、俺と同じシトラスの香りと、彼女自身の甘い匂い。
……重い。……自分でも制御できないほどの、この「独占欲」という名の重力。
(……もし君が、俺を『顔』だけで選んだのだとしても、構わない。……その顔を利用して、君の人生すべてを俺がプロデュースしてやる)
俺は、寝ている彼女の耳元で、誰にも聞かせられないほど低く、執着に満ちた声で囁いた。
「……おはようからおやすみまで、君の視界に入るのは俺だけでいい。……君が流す涙も、あげる歓喜の声も、すべて俺が買い取った。……一滴も、外の世界には漏らさせない」
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」の正体。
それは、一人の地味なOLに、一生「ガチ恋」され続けたいと願う、あまりにも不器用で、暴力的なまでに純粋な、一人の男の「執念」だった。
「……愛している、花音。……明日も、明後日も、100年後も。……君を、俺の愛という名のパラダイスから、一歩も出してやらないからな」
俺は、愛おしさに耐えきれず、目を覚ましかけた彼女の唇を、再び深く、熱く、上書きするように奪った。
エピローグ1をお読みいただきましてありがとうございます。
次のエピローグ2をもちまして、本作は完結となります。次のエピローグ2もぜひお読みください!
連載開始から今日まで、皆様のブクマや評価、そして何より温かい感想に支えられて、無事にここまで書ききることができました。本当にありがとうございます。
この物語が、少しでも皆様の日常の楽しみになっていたなら幸いです。
【大切なお知らせ:新連載について】
さて、さっそくではございますが、来週から心機一転、新連載をスタートいたします!
・新連載開始日:4月17日(金) 21時頃を予定
・ジャンル:異世界ファンタジー
今作とは違った面白さをお届けできるよう頑張ります。
1週間後の4/17(金)に、また新しい物語でお会いできるのを楽しみにしています!




