第49話:東京の夜空に「愛してる」の弾幕、推しの宣戦布告は銀河規模でした
一週間連続披露宴、第六日目。ついに私たちは日本へと帰国した。
その夜、東京の街は異常な熱気に包まれていた。神宮寺重工の技術を結集した数万機のドローンが夜空を埋め尽くし、スカイツリーから東京タワーまで、全てのビルボードが鮮やかなピンク色に染まったのだ。
「……湊さん、外を見てください! 空に……空に私の名前と『愛してる』って文字が流れてます……っ!」
「……当然だ。……明日の最終日を前に、全人類に予習させておかねばならん。……君を愛し、君を支配するのは、この神宮寺湊(俺)一人だということをな」
湊さんは、漆黒のベルベットタキシードを纏い、ホテルのスイートルームの窓際で私を背後から抱きしめた。……供給。……夜景をバックに、世界を自分の愛の色で塗り潰す「独裁的な推し顔」の供給。
その時、東京中の大型ビジョンが突如ジャックされ、KYLO様のライブ映像が流れ出した。
「――兄さん、夜空の文字なんて地味だよ。……僕はね、衛星軌道上のレーザーを使って、今から『花音への愛の詩』を月に刻むつもりさ」
(……月に刻印!? 推しへの愛が、天体損壊レベルまで暴走してるぅぅ!!)
「……KYLO、小癪な真似を。……花音、あんな遠くの光など見るな。……俺は今、この手の中にいる『真実』だけを愛でる」
湊さんは私の腰をぐいと引き寄せ、逃げ場のない窓際で私を閉じ込めた。
……天然。彼は「弟への対抗」をしているつもりだろうが、その瞳は、明日の披露宴を待たずに私を「食べ尽くしたい」という飢えた本能に満ちていた。
「……いいか、花音。……明日の最終ステージ。……あいつ(KYLO)が何か仕掛けてくるだろう。……だが、君を奪えるのは、世界で俺一人だ。……誰にも、一瞬たりとも、君の指先すら触れさせない」
湊さんは私の耳たぶを甘く噛み、そのまま深い、深い、魂まで溶かすような口づけを落とした。
……最終決戦前夜。……神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「全人類への威嚇」へと進化し、私を「逃げ場のない愛の最終ライン」へと追い詰めた。
「……湊、さん……っ、……信じて、ます……っ!」
「……ああ。……明日の朝、君が目を覚ました瞬間から、世界は『俺と君』のためだけに回る。……覚悟しておけ」
(……ひ、ひいいいっ! 告白のスケールが銀河系を越えて、私の理性がビッグバンで吹き飛んじゃう!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「明日の最終回」に向けて、世界一豪華な「地獄(天国)」を完成させたのだった。




