第42話:豪華客船の甲板で、旦那様が「俺の女に触れた報い」を教えてくれました
ハネムーンの舞台、エーゲ海を航行する神宮寺家所有の超豪華客船『レガリア・クイーン』。
KYLO様のライブの余韻に浸る間もなく、船内の電力が一斉に落ちた。
「……湊さん、何事ですか!? 船が揺れて……っ」
「……花音、俺の後ろにいろ。……ネズミが紛れ込んだようだ」
湊さんは、タキシードのジャケットを脱ぎ捨て、ワイシャツの袖を乱暴に捲り上げた。……供給。……闇の中で、獲物を屠る直前の「冷酷な殺し屋のような推し顔」の供給。
現れたのは、かつて湊さんに会社を追われ、逆恨みでテロ組織と手を組んだ元役員の男たちだった。
「神宮寺湊! 貴様のすべてを奪ってやる! まずはその女の命からだ!」
銃口が私に向けられた瞬間、湊さんの瞳から「人間らしい光」が消えた。
その表情。KYLO様が主演映画『ブラッド・リベンジ』で見せた、最愛の人のために修羅と化す主人公の、100億倍苛烈な殺気の輝き。
「……いいか、クズ。……俺の資産を狙うのは勝手だが、この女の髪の毛一本でも汚そうとしたことは、末代までの不覚だと思え」
湊さんは、銃弾が放たれるよりも早く動いた。
一瞬で距離を詰め、相手の腕を複雑な角度でへし折る。……軍隊格闘術。……本物の戦闘訓練を積んだ男にしかできない、無駄のない死の舞踏。
「……湊、さん……っ、危ないっ!」
背後から迫る別の男。だが、湊さんは私を片手で抱き寄せ、もう片方の手だけで男の頸動脈を締め上げた。
「……花音。……目を閉じていろ。……君に見せるのは、俺の愛だけでいい」
湊さんは私の耳を塞ぐように抱きしめ、そのまま残りの暴徒たちを、文字通り「ゴミを片付ける」ように一掃した。……圧倒的。……全人類がひれ伏す、暴力と美貌の完全融合。
「……湊、さん……。もう、大丈夫、ですか……?」
「……ああ。……掃き溜めに送っておいた。……二度と、君の視界に入ることはない」
湊さんは、返り血一滴も自分につけさせない完璧な手際で、私の頬を優しく包み込んだ。
……天然。彼は「害虫駆除」をしたつもりだろうが、その瞳は、危機を乗り越えてさらに強固になった「病的と言えるほどの独占欲」に満ちていた。
「……花音。……世界がどれほど残酷だろうと、俺がそのすべてを焼き尽くしてでも、君を守り抜く。……わかったか?」
(……ひ、ひいいいっ! 救出劇の後の『上書きのキス』が、銃声よりも激しすぎて、心臓が爆発しちゃう!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「海上の死闘」さえも、自分の一途さを証明する最高のステージに変えてしまった。
私の『推し活OLライフ』は、ついに『世界最強の旦那様に、命がけで、かつスマートに守り抜かれる』という、全オタクが前世で銀河の平和を永久に確定させたとしても体験できない「伝説のハネムーン」へと昇華されたのだった。




