第41話:名字が変わった瞬間に、旦那様(本物)の理性がログアウトしました
深夜二時半。区役所で婚姻届が受理された直後、私は都内最高級ホテルの、一晩の宿泊費が私の年収を軽く超える「ロイヤル・プレジデンシャル・スイート」に運び込まれていた。
「……湊さん、あの……。入籍したばかりで、まだ心の準備が……っ!」
「……花音。……いや、『神宮寺花音』。……もう逃がさないと言っただろう」
湊さんは、ホテルの重厚な扉を閉めた瞬間、私を壁に押し込んだ。……供給。……月光に照らされた、欲望を隠さない「野性的な旦那様の推し顔」の供給。
彼はネクタイを乱暴に引き抜き、シャツのボタンを上から三つ、一気に外した。
「……湊、さん……っ、……目が、怖いです……っ」
「……怖いか。……無理もない。……これまでは、君が俺の『顔』を推しているという事実に甘えて、一歩引いていた部分もあったからな」
湊さんは私の腰をぐいと引き寄せ、自分と密着させた。
……熱い。彼の体温が、入籍という「免罪符」を得て、爆発的な熱量で私を侵食してくる。
「……だが、もう遠慮はやめた。……君は今、法的に、魂のレベルで、俺だけのものになったんだ。……画面の中のあいつ(KYLO)に、一瞬でも視線を移すことは、もう許さない」
湊さんは私の顎を強引に持ち上げると、逃げ場のない距離で私を閉じ込めた。
その瞳。KYLO様が最新の禁断ラブソング『Deep Obsession』で見せた、愛しすぎて壊したいという狂気の瞳の、100億倍現実味のある執着の輝き。
「……今夜は、君のすべてを『俺』で上書きしてやる。……明日の朝、目が覚めた時、君の頭の中には『夫』である俺のことしか残っていないようにしてやるからな」
(……ひ、ひいいいっ! 入籍直後に、溺愛の包囲網が『終身監禁』にレベルアップしちゃってるぅぅぅ!!)
湊さんは私の首筋に深く、深く、一生消えない「神宮寺の証」を刻むように熱い唇を這わせた。
……天然。彼は「愛情表現」をしているつもりだろうが、その行動は、世界で一番贅沢な牢獄に私を閉じ込める、狂気的なまでの「支配」だった。
「……花音。……愛している。……死ぬまで、俺に推され続けていろ」
(……推され続けていろ!? 旦那様自身が、私の『ガチ恋勢』のトップになっちゃってるぅぅぅ!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「婚姻関係」という最強の武器を手にし、私を「逃げ場のない愛の極地」へと叩き落とした。
私の『推し活OLライフ』は、ついに『最推し(似)の夫に、24時間365日の猛烈なアタックを受け続ける』という、全オタクが前世で多元宇宙を百回救ったとしても体験できない「溺愛の終着駅」へと到達したのだった。




