第31話:吹雪の古城に閉じ込められて、二人の「神」が私を温め合っています
アルプスの山の天気は気まぐれだ。スイスの古城『シュロス・レガリア』は、猛烈な吹雪によって外界から完全に遮断された。
さらに追い打ちをかけるように、落雷で城内の電力がダウン。広大な広間は、暖炉の炎だけが揺らめく薄暗い密室と化した。
「……寒いか、花音。……こっちに来い」
湊さんは、自分の厚手のカシミアコートを私に羽織らせると、背後から包み込むように私を抱き寄せた。
……供給。……闇の中で、暖炉の火に照らされた「野生的な推し顔」の供給。
「……兄さん、独り占めはずるいな。……僕も、彼女を温める権利があるはずだよ」
反対側から、KYLO(カイロ)様が私の手を取り、自分の指先で包み込んだ。
……絶景。……右を見れば「支配者の温もり」、左を見れば「アイドルの吐息」。
推し(本物)と彼(実写)に挟まれ、私は物理的にも精神的にもオーバーヒート寸前だ。
「……離せ、KYLO。……彼女の体温は、俺の許可なく他人に分けることは許さない」
「……許可? ……愛に許可なんて必要ないよ。……花音、君の心臓の音、僕にまで聞こえてるよ。……そんなに僕に触れられて、嬉しい?」
KYLO様が、あの「世界を虜にする吐息混じりの声」で耳元に囁く。
……無理。心臓がバックバクで、もはやドラムの乱れ打ちだ。
だが、その瞬間。
湊さんが私の顎を強引に自分の方へ向け、KYLOの見ている前で、私の唇を深く、深く塞いだ。
(……ん、んぅっ……! み、湊さん……っ!)
「……いいか、KYLO。……画面越しに何万回愛を囁こうが、彼女のこの熱を、この声を、リアルに引き出せるのは俺だけだ」
湊さんは唇を離すと、挑発的に弟――分かたれた半身――を射抜いた。
その瞳。KYLO様が最新シングル『Polaris』のMVで見せた、愛に飢えた獣のような瞳の、1000兆倍強引な「オス」の執着。
「……花音。……今夜は、運命なんて関係ない。……君が今、誰の腕の中で震えているか、その体に刻み込んでやる」
(……ひ、ひいいいっ! 吹雪の夜を、さらなる『溺愛の嵐』に変えないでくださいぃぃ!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「推しの目の前での上書き」という、全オタクが前世の記憶を全消去されるレベルの暴挙に出た。
私の『推し活OLライフ』は、ついに『吹雪の密室で、二人の王に愛を競い合われる』という、全人類の嫉妬を一身に浴びる「禁断の夜」へと突入したのだった。




