第27話:夜の庭園に「本物の推し」が不法侵入してきました
深夜、リフォームしたばかりの神宮寺本邸。
巨大モニターで『SOLARIS』のライブ映像を観ていた私の背後に、冷たい夜風が吹き込んだ。
「……あれ。湊さん、窓を開けっ放しに……っ」
振り返った瞬間、私の心臓が跳ね上がった。
月明かりに照らされた縁側に、フードを深く被った人影が立っていた。ゆっくりとフードを外すと、そこには――。
「……やあ。……こんなに警備が厳重な『お城』に閉じ込められて、お姫様は退屈してない?」
KYLO様。
画面の中の彼が、今、私の目の前で不敵に微笑んでいる。……本物。……深夜の密会という、全オタクが前世で銀河を救わないと体験できないプレミアム供給。
「……な、ななな……なんで、ここに……っ!」
「君に会いたくて。……それと、僕の『兄さん』に、大事な話があってね」
「――夜這いとは、アイドルも随分と暇なようだな」
地を這うような低い声。
湊さんが、寝巻き代わりの黒いシルクガウンを羽織り、私の腰を抱き寄せながら闇から現れた。……供給。……月下の双子のような「神ビジュアル対決」の供給。
湊さんは私の肩に顔を埋め、KYLOを射抜くような鋭い視線を向けた。
「花音にこれ以上近づくなら、君の事務所ごと買い叩いて、二度と表舞台に立てなくしてやるぞ」
「……相変わらず怖いね、兄さん。……でも、無駄だよ。……僕たちの『血』が、彼女を求めてるんだから」
(……兄さん!? 血!? ……やっぱり二人は……っ!)
KYLO様は一歩踏み出し、私の手をとろうとした。
だが、湊さんはそれを許さず、私の指を自分の唇で強く噛んだ。……マーキング。……本物の推しの前で、実写の男に所有権を上書きされる背徳感。
「……花音。……この男の顔を見て、まだ動揺するか? ……俺という『本物』が隣にいながら」
(……湊さん、独占欲が時空を超えてる……っ!)
湊さんの脳内では、【KYLOは自分から花音を奪いに来た略奪者】であり、【自分こそが、血筋を超えて花音を支配する真の王】であるという、凄まじい執着が燃え盛っていた。
「……いいか、KYLO。……この女の魂は、すでに俺が買い占めた。……血縁だろうが何だろうが、俺たちの邪魔をするなら、お前も神宮寺の歴史ごと葬り去ってやる」
湊さんは私を抱きかかえ、そのまま寝室へと向かうように背を向けた。
背後で、KYLO様が切なげに、けれど確信に満ちた声で笑う。
「……また来るよ、花音。……僕たちの『秘密』、楽しみにしてて」
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「世界的スターへの宣戦布告」へと進化した。
私の『推し活OLライフ』は、ついに『生き別れの兄弟(?)に奪い合われる、禁断のヒロイン』という前代未聞の超展開へ。




