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第28話 聖地、始めました

 屋台でコロッケを売り始めて一週間が過ぎた。


「はい。コロッケ3個ですね。銅貨3枚になります」


 お客さんからモニカさんが代金を受け取り、俺が魔法袋(マジックバッグ)からコロッケを取出して渡す。

 最初は手間取ったけどだいぶ手慣れてきたな。

 よく来てくれるお客さんも居るし順風満帆といったところだ。


「コロッケくだしゃい!」

「すいません、コロッケ2個下さい」


 小さな女の子がお母さんと一緒に買いに来てくれた。

 子どもはリリちゃん。

 毎日お母さんとコロッケを買いに来てくれる常連さんだ。

 今日はおやつに買いに来てくれたみたいだね。


「はい、リリちゃん。熱いから気を付けてね」

「お姉ちゃん、ありがとー」


 すっかり女の子と仲良くなったモニカさんがコロッケを手渡す。

 

「毎日ありがとうございます」

「いいえ、あの子が喜びますし、私も手間が省けますので」

「なら良かったです。こちらも楽しんでいますし」


 お母さんから代金を受け取りながら雑談をする。

 リリちゃんはモニカさんと遊んでいる。


「2人はまだ若いから子どもならすぐ出来ますって」

「俺とモニカさんはそういう関係じゃありませんよ」

「あら、お似合いですし私はてっきり恋人か夫婦で屋台をやっているのかと思ってました」


 そういえば屋台を出しているのは夫婦や恋人が多いな。


「アレフちょっといいか?」

「今日は1人なのか。どうかしたのか?」

 

 珍しくセリカが1人でやって来た。

 普段はアリサやエリスちゃんの護衛で来るからな。


「ローレンス様がお呼びなのだが……」


 そう言ってセリカはチラッとリリちゃん親子に目をやる。


「それじゃ私達はこれで。リリ、帰るわよ」

「お姉ちゃん、お兄ちゃん、ばいば〜い」

「バイバーイ」


 モニカさんは、お母さんに手を引かれて帰るリリちゃんに手を振っている。


「ローレンスさんが呼んでるって? 今すぐ?」

「出来ればこれから屋敷に来て欲しいそうだ」

「あの、私もですか?」

「モニカさんにも関係のある話ですので」


 モニカさんにも関係があるって何だろうな?


◇ ◇ ◇ ◇


 そんな訳で俺とモニカさんは屋敷の執務室へとやって来た。


「急に呼び出して悪かったね」

「それは良いですけどどうしたんです? モニカさんにも関係があるって事ですけど」


 出迎えたローレンスさんに早速疑問をぶつけてみた。


「明日魔法樹の封鎖を解除しようと思ってね。御家族に伝えて欲しいんだ」

「急ですね」

「早く参拝したいって声が多くてね。調査も終わってるから引き延ばせないんだ」


 調査といっても単に様子を見に来ただけだしね。


「参拝者は結構来そうな感じかな」

「おそらくは。ただどうなるかは明日にならないと分からないんだ。突然現れた聖地なんて初めてだからね。当分はアレフ君にも詰めてもらいたい」

「それは良いけど当分ってどのくらい?」

「3日かな。常駐させる騎士達もその頃には慣れてくるだろう」 


 3日なら良いか。

 コロッケ屋台は魔法樹で臨時営業だ。


「分かった。その間は魔法樹に居るよ」

「そうしてくれると助かるよ。それからこれは個人的なお願いなんだが……」


 個人的なお願い?

 お願いなら今までにもされてるけど個人的って何だろう?


「コロッケを15個くれないか。ソースをたっぷり付けてね」

「……毎度あり」


 何事かと思ったらコロッケの注文か。


◇ ◇ ◇ ◇


 そして翌朝。

 魔法樹に参拝しに人々がやって来ていた。

 思ってた以上の人の出だ。


「うわ、多いな」

「ファノスのお祭りでもここまで並びませんよ」

「あらあら、たくさん集まったのね」

「これじゃ畑仕事には行けないな」


 敷地を柵で囲んでおいて良かったな。

 まぁ行儀良く並んでいるみたいだけど。


「……コロッケ、ウハウハ」

「コロッケを売るの? だったら急いで売り場を用意しないと」

「畑に行けない分ここで稼いでおかないとな」


 大黒柱のラルクさんもコロッケ販売に乗り気だ。

 とりあえず屋台を庭先に置こう。

 慣れている俺とモニカさんがメインでいいな。


「すいません。そろそろ門を開けても良いですか?」


 警備として常駐している騎士さんが開門の確認に来た。


「お願いしますね」

「もう大丈夫なのか?」

「心配性ね。モニカやアレフちゃんに任せて、私達はお手伝いするだけよ」


 オロオロし始めたラルクさんとは違ってクラリスさんは楽しそうに構えている。

 ちなみにダレン達は2階の窓から参拝者を眺めている。


 そしてその時がやって来た。

 騎士達が門を開いていく。

 すると参拝者達がぞろぞろと入って来た。

 彼らは魔法樹を指差したり、感嘆の声を上げたりしている。

 泉の前でミーシア様に祈りを捧げ、泉の水を飲むと感謝の言葉を口にしている。

 みんな満足気な表情だ。

 

「皆さん楽しそうですね」


 モニカさんがどこかホッとした表情で呟く。

 魔法樹の正体を知ってるから心苦しくはあるけど、喜んでもらえるのならまぁ良いか。


 開門してから参拝者は途切れることなく魔法樹を訪れ続けた。

 帰り際にコロッケを買っていく人も居て結構な売上だ。

 というか明日には在庫が無くなるかもしれない。

 クラリスさん達には接客ではなく台所でコロッケを仕込んでもらっているけど足りないよな。


 夕方。

 閉門の鐘を鳴らすと参拝者達は帰って行った。

 聖地だからかマナーが良くて助かるな。


「疲れました」


 俺の隣ではモニカさんがひと息ついている。


「お疲れ様。大変だったね」

「アレフさんの方こそコロッケを取り出したり揚げたりと大変じゃないですか」


 別に大変ということは無かったけど、コロッケを用意するのが俺1人なのは効率悪いよな。

 俺がいつも居る訳でも無いし、魔晶石を使った冷蔵庫やコンロが必要かもしれない。

 今度ゲンさんに頼んでみるか。

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