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第26話 コロッケ祭り後編

 翌日。

 俺は朝からコロッケ作りの準備をしていた。

 納屋から錆びてボロボロになった大鍋や鍬をひっぱり出す。

 この前片付けた時に見つけたガラクタだ。

 

「ラルクさんは自由に使って良いって言ったよな」


 これだけボロボロだと使いようが無いだろうしね。

 魔改造でそれらを1つに融合させる。

 錆は消えて真新しい鉄の塊が出来た。

 シワ1つ無い流線型のフォルムだ。

   

「鉄の塊ってスライムみたいだよな」


 その鉄の塊が動き出す。

 と言っても命を吹き込んだ訳じゃない。

 アイアンスライムもどきを潰しては延ばして大きな浅鍋へと変形させる。

 コロッケを揚げる為の鍋の完成だ。


「フライパンじゃ小さいし、大鍋だと深くて使い難いからな」


 出来上がったコロッケ用鍋を魔法袋(マジックバッグ)の中に仕舞う。


「おはようございま〜す!」


 元気な声と共に女の子が走ってくる。

 エリスちゃんだ。


「もう、エリス! もう少し大人しくなさい」

「ローレンス様から体が弱いのだから無理をするなと言われたじゃありませんか」


 アリサとセリカもエリスちゃんを追ってきた。

 セリカは大きな袋を担いでいる。


「むぅ、お姉様もセリカも細かい事を気にし過ぎですわ」


 エリスちゃんは頬を膨らまして不満を表している。


「それにここに来ると不思議と体が楽になるのです。ここで暮らせたら良いのに」

「エリスちゃん、体の調子が悪かったの?」

「あ、うん。ちょっと……」


 俺には隠したい事なのか、エリスちゃんにしては歯切れが悪いな。


「アレフ様、この子は最近特に調子が悪かったのですわ。外に出ると必ず寝込んでしまう程でした。それが昨日は屋敷に戻っても寝込むどころか元気なままだったのです」

「ローレンス様もエリス様の体調を心配しててな。体調が良くなるのなら、と連日の外出を認めて下さったのだ」


 アリサの話にセリカが説明を付け加える。


「そんな事よりコロッケを作りましょうよ!」

「待って。まだみんなが来ていないんだよ」


 まだブレンナー家の人に声をかけていないからね。


「……大丈夫。作り始めたら匂いに釣られてやってくるから」


 背後から声が聞こえる。

 そこにはいつの間にかカレンちゃんが立っていた。


「あ、カレンちゃん、おはよう!」

「……おはよ〜」


 エリスちゃんにのんびりと挨拶を返すカレンちゃん。

 しかし家族を食べ物に弱いみたいな言い方をするのはどうなんだろう?


「おはようございます、アレフさん。皆さんも来られていたのですね」

「兄ちゃん早くコロッケやろー!」

「何やればいいー?」


 モニカさんに続いてダレン達が庭に出て来た。


「あんたら朝から元気ね。って、アリサ様にエリス様! おはようございます」

「あらあらみんなもう揃ってるのね。そんなにコロッケが楽しみだったの? わかるわ、私も楽しみで中々眠れなかったもの」


 3人に続いてセリシアちゃんとクラリスさんも出てきた。

 ラルクさんは今日も畑の方に行くみたいだ。


「セリカ、頼んだ物は?」

「あぁ、パンと卵と油はここに」


 セリカが担いでいた袋を下ろす。

 

「じゃあ始めようか。俺はパン粉を作りますんで、卵を割って溶く作業はクラリスさんにお願いしてもいいですか?」

「分かったわ」


 手早く卵を割っていくクラリスさん。

 やっぱり手慣れてる人に頼むと早いね。

 俺は魔法袋からコロッケのタネを取り出す。


「まずはこれをこういう風に小分けしてくれるかな」


 タネを手に取ると楕円形に成形する。


「分かったー」

「こんな感じ?」

「ああ、それでいいよ」

「お姉様、私達もやりましょう」


 全員でコロッケの成形に取り掛かると、あっという間にコロッケのタネの山が出来た。

 まぁ多少大きさが不揃いだけど良いか。


「それじゃこれに小麦粉をまぶす係と溶いた卵をくぐらせる係とパン粉を付ける係に分かれよう。ダレン達はクラリスさんとセシリアちゃんと組んでやってね」

「アレフ様は何をされるのですか?」

「俺? 俺はコロッケを揚げるよ。俺にしか出来ない作業もあるんだ」


 火の魔術で油の温度調節出来るのは俺だけだし、揚げたてのコロッケをすぐに魔法袋に仕舞えるのも俺だけだしね。


「お姉様、こっちでパン粉を付けましょう」

「そうね。何かコツはありますか?」

「そうだなぁ。指の跡が付かないようそっと触る事かな? そこから衣に穴が空いちゃうんだ」


 そうすると揚げてる途中で破裂してしまうんだ。

 魔法袋からコロッケ用の鍋を取り出す。

 鍋に油を注いでいくがちょっと足りないか?

 あ、そうだ。

 あれを使おう。

 猪の脂身を取り出す。

 何かに使えないかと思って残していたんだ。


「これを鍋に入れてと」


 魔改造で固体の脂身を液体の脂に変化させる。

 すると脂身は少しのカスを残して融けていった。

 後は温度を上げていって、コロッケを揚げる準備は完了だ。


「よし、これで良いか。じゃあこれから揚げていくよ!」

「わーい!」


 パン粉を付けたコロッケのタネを次々に油に入れていく。

 ジャーッという油のはねる音がする。

 香ばしい香りが庭先に広がっていく。


「早く食べたいです!」

「はしたないですわよ、エリス」

「……コロッケ、熱々、美味しそう」

「カレンも、終わったのならこっちを手伝ってよね」


 小麦粉を付け終えていたカレンちゃんに、パン粉を付けているセシリアちゃんが注意をする。


 黙々とコロッケを揚げているとダレンが大声で作業の終了を告げてくれた。

 

「衣付け終わったー!」

「はいお疲れさま。アレフちゃん、これで作業は終わり?」

「後は片付け位ですね。揚げ終わったら俺がやるんで、もうしばらく待っていて下さい」

 

 大鍋とか重たいしね。


「じゃあアレフちゃんに任せて私達はコロッケパーティーの準備をしましょう!」

「「わーい、パーティー!!」」

「……楽しみ」

「お母さん、パーティーって何をやるのよ」


 セシリアちゃんがクラリスさんを半目で睨んでいる。


「みんなでコロッケを食べてお喋りするのよ。素敵でしょ?」

「素敵です!」

「面白そうですわね」


 真っ先にエリスちゃんとアリサが賛成していた。


「お喋りは要らないな〜」

「俺も〜」

「なら後でまた今日も剣の修行をするか?」

「え? 良いの?」

「セリカ師匠!」


 セリカが乗り気じゃないグレン達の相手をしてくれる事になった。

 セリカもお喋りは遠慮したがるタイプだしね。


「今日はパーティーと聞いていましたので、屋敷からお菓子とお茶を持ってまいりました」

「あら、ありがとうね。モニカ、キッチンに焼いておいたアップルパイがあるんで取ってきてちょうだい。セシリアとカレンはテーブルを用意してね」


 クラリスさんの指示の下、テキパキとパーティーの準備が進んでいく。

 運ばれてきたテーブルには白いクロスが掛けられ、手作りだとは分からなくなっている。


「アレフちゃん、コロッケはもう終わり?」

「これで最後ですね」

「じゃあパーティーにしましょ。ほら早く早く」


 クラリスさんに急かされるままにテーブルに着く。

 テーブルにはアップルパイやクッキー、お茶が並んでいるが中央には何も置かれていない。

 ここにコロッケを置けば良いのかな?


「真ん中にコロッケを置いてね。わぁ~、美味しそう! パチパチパチ」


 山盛りのコロッケを並べるとクラリスさんの音頭で拍手が上がる。


「これがコロッケですか」

「美味しそう〜!」

「……ジュルリ」

「カレン、涎を拭きなさいよ。でも本当に美味しそう」

「兄ちゃんまだ食べちゃダメ?」

「我慢出来ないよぉ」


 昨日から頑張っただけあって、みんな待ち切れなさそうだね。

 セリカも獲物を狙う鷹の目でコロッケを凝視している。


「じゃあ食べようか。揚げたてで熱いから気を付けてね」


 俺の言葉にみんなは一斉に手を伸ばした。

 サクッと音があちこちから聞こえてくる。


「美味し〜い!」

「美味しいですね」

「これは美味しいな」

「……美味」

「家でも作りたいわね」

「頑張った甲斐があるわ」


 ダレン達は無言でがっついている。


「アレフさん、ソースを出してくれませんか」

「あ、忘れてた。コロッケにこのソースをかけても美味しいよ」


 モニカさんに言われてテーブルの上にソースの瓶を出した。


「このままでも美味しいですけど私はソースをかけた方が好きですね」


 モニカさんはソースをかけたコロッケを食べると幸せそうな笑顔を浮かべた。


「このソースは面白いですわね。甘辛くてスパイスが効いて」

「何個でもコロッケ食べれそう!」

「……美味美味」


 山盛りのコロッケがみるみる減っていく。

 多めに作っておいて正解だったな。

 でももっと簡単に作れるようにならないと。

 魔術で出来ないか考えておこう。 

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