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第25話 コロッケ祭り前編

 猪狩りから戻ってくると、早速作業の開始だ。

 まずは猪を解体しないとな。

 汚れるから庭先で良いかな?


「よいしょっと」


 魔法袋(マジックバッグ)から猪を一頭取り出す。


「うわぁ、デッケぇ猪!」

「どうやって捕まえたの? やっぱり魔法で?」

「ほらアンタ達! 危ないからこっちに来なさい」


 セシリアちゃんがダレン達を離してくれる。

 刃物を使う時に周りに居たら危ないからね。

 毛皮を剥ぐ為に、猪に短剣を入れる。


「お兄様、一刀両断ですわ!」

「そんなことやらないよ!?」


 エリスちゃんのリクエストには応じずに、手早く毛皮を剥いでいく。


「毛皮の用途って何があるかな?」

「そうですね。やはり冬の防寒具とかでしょうか。後でお母さんに聞いておきます」

「急がなくても良いからね」

「……ぬいぐるみ、入れるくらい大きいの」

「入りたいの?」


 カレンちゃんは頷いた。

 着ぐるみかぁ。

 毛皮で作るとちょっと生生しくないかな。

 猪姿のカレンちゃんを想像しながら骨から肉を外していく。


「お兄様、私にもお願いしますね」

「エリスちゃんも欲しいのか。参ったな、裁縫はあまり得意じゃないんだよ」


 裁縫はアイン姉が得意だからお願いしてたんだよね。


「アレフなら魔法で作れるのではないか?」

「………………!」


 その発想は無かった!

 アイン姉が繕っていたから裁縫は手でやるものと思ってたよ。


「魔術で裁縫か。試した事は無いな」

「あの、アレフ様。裁縫なら私がやりましょうか? これでも私、裁縫にはちょっと自信があるんですよ」


 得意げに胸を張るアリサ。


「お姉様は裁縫が上手なんですよね」

「それならお願いしたいな。でも材料が布じゃなくて皮なんだけど……大丈夫?」


 さっき剥いだ生皮を広げて見せる。

 可愛くない。

 というか正直グロい。


「うっ……が、頑張ります」

「お姉様、無理をしなくてもいいですよ。私はお姉様よりもお兄様に作ってもらいたいですし」

「エリス! アレフ様が大変でしょう!」

「お兄様〜。お姉様がいじめます〜」


 アリサとエリスちゃんが仲良くじゃれ合っている。

 そんな2人の微笑ましい姿を見ながら、俺は肉を切り分け終えた。


「さて、次はコロッケ作りか」


 猪一頭分の肉を魔法袋に仕舞ったところで今度は売り物の準備だ。

 まず芋を茹でて皮をむかないといけないけど、この作業が一番手間が掛かるんだな。


「アルフさん、私もお手伝いします」

「私にもお手伝いしますわ」

「あ、お姉様ズルい! 私もお手伝いするよ」

「お2人だけに手伝わせる訳にいくまい。私も手伝おう」

「……芋はまかせて」


 みんなが手伝いを申し出して向こうではダレン達も手を上げている。

 これだけの人数でやればすぐ終わるだろう。


 大鍋に水を張って芋を入れる。

 量が凄い事になっているが何とかなるだろう。


「火はどうするんだ?」

「芋がこれだけ多いと沸騰するのに時間が掛かり過ぎるからね。火の代わりに魔術を使うよ」


 火の魔術と水の魔術を魔改造する。

 直接鍋の中の水に熱を送り込むんだ。

 するとすぐに水が沸き始めた。


「モニカさん、芋の茹で具合を見ててくれないかな?」

「分かりました」


 次は具だな。

 玉ねぎの皮むきは誰かに頼んでおこう。


「玉ねぎの皮むきを手伝って欲しいんだけど」

「私がやりますわ」

「私も!」


 アリサとエリスちゃんが手を上げた。

 セリカは2人のフォローに回るみたいだ。


「じゃあこの玉ねぎの頭と根っこを切って、皮をむいてくれる?」

「はい」 

「わかったよ」

「玉ねぎの頭と根っこは私が切りますので、お2人は皮をむいてください」


 刃物を使うのは危険と判断したのか、玉ねぎを切るのはセリカが担当するようだ。

 2人はセリカに任せて俺は肉に取り掛かろう。

 風の魔術で猪肉を細かく刻んでいく。


「スゲー!」

「肉が小さくなっていく!」

「危ないから触っちゃ駄目だからね」

「「わかったー!」」


 風の結界の中で肉が細かく刻まれていく様子が、ダレン達には面白く見えるようだ。

 ダレン達を注意すると元気な返事が返ってきた。


 そうして刻んだ肉をフライパンで炒めていく。

 火の魔術で熱しているせいか火の通りが早い。

 

「玉ねぎはどうなったかな?」


 玉ねぎを任せたアリサ達に声をかける。


「グスッ、こんな感じで良いですか?」

「うぅ、目が痛い〜」


 すると涙混じりの声と共に玉ねぎが差し出された。

 ちょっとボロボロになっているけど問題無いか。


「うん、大丈夫。ありがとうね。顔を洗ってくると目が痛いのが楽になるよ」

「分かりました」

「そうするよ〜」


 2人は仲良く井戸に向かう。


「セリカは大丈夫なの?」

「私は玉ねぎを切っただけだからな。一生懸命皮をむいていたお2人程じゃないさ」


 そう言うとセリカは玉ねぎを見つめていた。

 確かにお世辞にも綺麗とは言えないが、2人の頑張りがよく分かる。


「この後刻むのなら見てくれは関係無いだろう? お2人を褒めてあげてくれないか。玉ねぎの皮むきをするのは初めてなんだ」

「あぁ、分かったよ」


 そんな事を話していたら2人が戻ってきた。


「玉ねぎってこんなにも痛いのですね」

「拭いても拭いても涙がポロポロ出て来たよ」

「2人共良くやってくれたね。本当にありがとう」

「そ、そんな大したことはしていませんわ」

「えへへ、まだお手伝いはあるよね? 頑張るよ」


 態度は違っても揃って頬を赤くする2人。

 玉ねぎも風の魔術で刻み、フライパンに入れて炒めていく。


「アレフさん、芋が茹で上がりましたよ」

「モニカさんありがとう。皆で皮をむいて潰してくれないかな。でも熱いと火傷の危険もあるよな。味が落ちそうだけど仕方がないか」


 氷の魔術と風の魔術を魔改造した。

 冷たい風で芋の温度を下げていく。

 すぐに芋は人肌よりも少し温かい温度になった。


「わぁ、触れるようになりましたよ」

「これでみんなで皮をむいて潰してね」

「分かりました。皆さんまずは手を洗ってくださいね」


 モニカさんの指示の下、みんなが芋の下準備にかかっていく。


「芋を潰すのは食べ物で遊んでいるみたいで悪い事をしている気分ですね」

「でも楽しいよ」

「確かに面白いですね」


 アリサ達は初めてなので楽しんでいるようだ。

 ブレンナー家のみんなは黙々と皮をむいて潰している。

 こっちは芋に慣れているからね。


「あらあら、みんなで仲良くやってるのね」


 クラリスさんが庭先にやって来た。

 手には人数分のカップとボトルを持っている。


「お茶の時間よ。一休みしたらどう?」

「そうだね。ちょっと休もうか」


 具の方はもう出来上がったし、みんなも疲れてるだろう。


「もう少しだからやってしまいますね。アリサ様達は先にお休みください」

「もう少しならみんなでやった方が早く終わりますわ」

「みんながやってるのに休めないしね」


 そう言ってアリサ達は止める事なく芋を潰し続いていく。

 結局俺もクラリスさんも加わって、みんなで芋を潰すことになった。。


「終わったよー!」

「「やったー!!」」


 エリスちゃんの報告にダレン達が歓声を上げる。

 流石に全員で取り掛かると早く終わるね。


「じゃあ今度こそ休もうか。あと少しだしね」

「えっ? まだあるの?」

「あとは具と芋を混ぜて形を整えて衣を付けて油で揚げるだけだよ」


 残りの工程をざっと挙げると,モニカさん以外のみんなの顔から笑顔が消えた。

 モニカさんはこの前一緒に作ったから、残りの作業がどんなものと分かっているからね。


「まぁ芋を潰すのが一番大変な作業なんだけど、今日はここまでにしようか。コロッケは明日完成させよう。良く考えたら買ってこないといけない材料もあるしね」


 パン粉用のパンとか揚げ油とか。

 あと卵もか。

 これだけの芋の量でコロッケを作るには全然足りないね。


「楽しかったのですが、流石に疲れましたね」

「私も〜。最後までやりたかったけど続きは明日かぁ」

「あら、じゃあ明日も来れば良いじゃない。みんなで出来たてのコロッケでパーティーしましょうよ」


 クラリスさんがアリサ達を明日のコロッケ作りにも誘う。


「明日もお邪魔して迷惑じゃありませんか?」

「別に良いわよ。それにアリサちゃんもエリスちゃんも頑張ったもの。コロッケがどんな味か気になるでしょう?」

「それは……」

「私は気になるよ!」


 恥ずかしそうにするアリサ。

 はっきり言い切れるエリスちゃんの方がこういう時には得だね。


「すまん、明日もお邪魔する事になりそうだ」


 そんな2人を見ていたら、セリカが謝ってきた。


「クラリスさんが誘ってるんだ。気にしないで来てよ」


 そうした方がクラリスさんは喜んでくれるな。


「そうだ。必要な材料を教えてくれ。参加費という訳ではないが、私達がファノスから持って来れば買いに行く手間が省けるだろう」

「じゃあ頼んでもいいかな? パンと油と卵を買いに行こうと思ってたんだ。量はこの芋の4分の1位でお願い」


 大鍋には大量の芋が潰されている。

 ……頼み過ぎたかもしれないな。


「任せてください!」


 セリカが答える前にエリスちゃんが答える。

 おれたちの話をしっかり聞いてたんだね。


「馬車に荷車を縛り付けてでも持って来ますね」

「いや頼んだ量だけで良いからね」

「分かりました。お姉様、早く帰ってお兄様に頼まれた物を集めましょう!」

「ちょっとそんなに引っ張らないで」


 アリサを連れて馬車に乗り込むエリスちゃん。


「お兄様、ブレンナー家の皆様。今日は本当にありがとうございました。また明日お会いしましょう」

「まったくもう、それは私の言葉でしょ。皆様、明日もよろしくお願いしますわ」


 馬車がゆっくり動き出す。

 御者台のセリカが手綱を片手に手を振っている。

 窓越しにアリサ達も振っているな。

 見送るブレンナー家のみんなも手を振っている。

 楽しかったのでみんな笑顔だ。

 明日も頑張ろう!

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