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第22話 隠れ家強襲

 日はとうに沈み、三日月がその姿を海に映し出している。


「ここがその場所か」


 俺は物陰に身を隠し、とある建物を見張っていた。


「あぁ。しかしあの男の言う事が当てになるのか? ギムガス商会の実行部隊の隠れ家がミーシア教の備蓄倉庫の1つだなど私には信じられん」


 真面目なセリカには受け入れにくいんだろう。

 セリカの言う通りここは港に程近い倉庫街の一角、ミーシア教が貧しい人達や飢饉の為に食糧を保管している倉庫の前だ。


 俺は裏路地でのやり取りを思い返していた。


◇ ◇ ◇ ◇


「アレフ、またお前か。いい加減にしてくれ。それにしても何だこの臭いは……」


 考え込んでいた俺に、セリカが声を掛けてきた。

 後ろには部下なのか5人の騎士を率いている。


「水で流したけどちょっと血の海だったからね。それより助かったよセリカ。俺一人じゃどうやればいいか悩んでいたんだ」


 オッサンを確保して覆面達の遺体を回収してモニカさんと合流しなくちゃいけないからな。


「一体何があったんだ。風が無いのに突然竜巻が現れたと報告があったんだがお前の仕業だろう?」

「ギムガス商会の襲撃があったんだ。15人だったかな。味方に殺されたり自決したりしたからよく数えていないけど。生き残りはそこのゴミ箱に入ったオッサン1人だよ」

「アレフは殺してないのか?」

「誰も殺してないよ。隠れ家の場所を聞き出したかったからね」


 結局たまたまオッサンが隠れていてくれて助かったよ。


「それで隠れ家の場所は分かったのか?」

「あぁ、そこのオッサンが教えてくれた。ミーシア教の備蓄倉庫だってさ」


 俺の言葉にセリカの眉が吊り上がる。


「ミーシア教の備蓄倉庫だと? 港近くの倉庫街の事か?」


 セリカの眼光に射抜かれると、オッサンは縦に首を激しく振った。


「あぁ、そうだよ! その中の1つが隠れ家になってるんだ! もう許してくれよ! 俺は何もしてねぇんだ!」

「それはお前の話が本当だったらな。それまでは拘束させてもらおう」


 セリカの合図で騎士達がオッサンを縛り上げていく。


「ついでにそこの覆面達の遺体も回収してくれない?」

「分かった。何者か調べてみよう。お前はこれからどうするんだ?」

「モニカさんを家まで送ってくるよ。それから深夜になったら隠れ家に殴り込みかな」

「ならば隠れ家へは私も同行しよう。本当にミーシア教の倉庫が使われているのか確かめたい。何よりアレフは港周辺の地理は明るくないだろう?」

「確かに港に行った事は無いな。頼むよ」


◇ ◇ ◇ ◇


 そしてモニカさんを家に送った俺は、セリカと合流して倉庫を見張っているんだ。


 倉庫街に人影は無かった。

 ここ一帯はミーシア教の管理する備蓄倉庫なので、関係者以外は近寄らないはずだとセリカが教えてくれた。

 だが……


「また男が出て来たよ。これで3人目か」

「見回りに来た関係者といった感じでは無いな。頻繁過ぎる」

「どうしようか? 後を尾けてみる?」

「いや倉庫が先だな。魔術で中の様子は分かるか?」

「ちょっと見てみるよ」


 探知の魔術で倉庫の中を探ってみる。

 手前の方には30人程がバラけている。

 さらにその奥には13人が1箇所に固まっていた。


「んー、40人よりちょっと多い位かな。まぁいけると思うよ」


 倉庫に近付くと壁に人が通れる程の穴を切り開ける。

 中は一見酒場のようだった。

 アルコールと妙な臭いが漂っている。


「なんだ、てめぇらは!」

「やっちまえ!」


 壁際のテーブルで酒を飲んでいた男達が立ち上がる。


「飲んでて急に立ち上がると危ないよ」

「ぐがっ!」


 転がっていた酒瓶を蹴飛ばすと、良い音を立てて男の頭に命中した。

 

「てめぇ! ふざけんなよ!」


 掴みかかってきた男に短剣を一閃。

 短剣に込める魔力(マナ)を抑えているので、切れ味は全く無いけど意識を奪うには十分だ。


「アレフ。向こうの檻に人が囚われている。ここは私に任せてそっちを頼む!」

「分かった。無茶しないでね」


 セリカと入れ替わって倉庫の奥へ向かう。


「やろう!」

「くたばりやがれ!」


 行く手を阻む男達を蹴散らし、檻の前に立つ。

 檻に囚われていたのは、20過ぎからまだ子供まで様々な年齢の女性達だった。


「……た、助けて」

「今出してあげるよ。けどまだ危ないから気を付けてね」


 鉄格子を切って彼女達が出口を無理矢理作る。

 探知の魔術で1箇所に固まっていたのは彼女達だったんだな。


「セリカ! 檻から助けたよ! 彼女達の護衛をお願い!」

「分かった!」


 呼び掛けるとセリカがこちらに戻ってきた。

 セリカは何人か斬り倒したからか、返り血を浴びているけど無傷みたいだ。


「クソ! このままじゃマズい! アレを使うぞ!」

「アイツら無しで危なくないか?」

「何でこんな時にアイツらは居ないんだよ! 構わん、俺が責任を取る! 隣から連れて来い!」


 リーダー格の男が指示を飛ばすと、何人か扉から外へ出て行った。


「セリカ、彼女達を連れて後ろに下がっていて。何か出してくるみたいだ」

「あぁ」


 巻き添えを食らわないようにセリカ達を下がらせる。

 開け放たれた扉から檻が運び込まれた。

 女性達が入れられていた檻よりずっと堅牢な檻だ。

 リーダー格の男が駆け寄って檻の鍵を開ける。


「ふはははっ! これでお前らは終わりだ!」

「グルルルルッ」


 檻の中から低い唸り声が響いた。

 姿を現したのは大人の背丈はありそうな巨大な犬だった。

 ただし頭が3つある。

 ケルベロスだ。

 昔読んだ魔獣図鑑には危険度はSランクとあったな。


「ケルベロスだと!? 魔獣をファノスに持ち込んで、貴様等何を企んでいる!」

「なに、親愛なる領主へのプレゼントだよ。少し休んでもらおうと思ってね……永遠の眠りになるがな」

「くっ! アレフ、ケルベロスは危険な魔獣だ。街に出さないよう何としてもここで仕留めてくれ!」


 セリカが必死な表情で叫んでくる。


「はっ! たった2人で倒すつもりか! コイツを捕まえるだけでも6人死んだんだぜ」

 

 リーダー格の男は鞭を取り出すと、ケルベロスに向けて振り下ろした。

 あの鞭は魔道具だな。

 魔獣の調教に効果があるみたいだ。


「グルル……ガウッ!」


 ケルベロスの頭の1つが紅い火球を放ってきた。

 かなりの威力があるみたいだ。

 避けたらセリカ達が危ないな。


 水の魔術と風の魔術を魔改造する。

 大量の水の玉を含んだ竜巻が火球に巻き付きて消していった。


「なっ!? だがそう何度も受け切れまい!!」


 鞭を振り下ろす度にケルベロスは火球を吐いてくる。

 しかし、全て水竜巻が飲み込んでいく。


「あー、悪い事は言わないからその鞭を使うのはもう止めた方が良いよ」


 火球を防ぎながらリーダー格の男に声を掛ける。

 動けず砲台として火球を吐き続ける事でケルベロスの機嫌が悪くなっているのに気が付かないのか?


「その手には乗らんぞ。もう防げなくなってきているのだろう」


 そしてリーダー格の男が鞭を振るってもケルベロスは火球を吐かなくなった。


「なんだ? おい、命令を聞け!」


 なおも振り下ろされる鞭に、鬱陶しいとばかりにリーダー格を睨むケルベロス。

 その瞳は怒りに燃えていた。


「ヒィッ、この鞭があれば支配出来るんじゃなか、ギャアアアッ!」


 ケルベロスがリーダー格の男に喰らいついた。

 上半身を噛み千切られて血が噴き出す。

 倉庫に骨を砕き肉を咀嚼する生々しい音が響いた。


「うわ……」


 ケルベロスの荒々しい食事風景に捕まっていた女性達の何人かは気を失ってしまった。

 セリカにそっと倉庫から出るように言えば良かったかな。


 リーダー格の男を喰らったケルベロスは、次は俺の方を睨んできている。

 火球を防いでいた俺にも怒りの矛を向けているようだ。

 

「ガアアアァッ!」


 テーブルを蹴散らし、ケルベロスが襲い掛かってきた。


 速い!

 これが魔道具に縛られないケルベロスの実力か!


 迫りくる牙から身をかわす。

 するとケルベロスは残りの頭も振り回して続けざまに噛み付いてきた。

 続く三連撃を何とかかわしきったものの、俺は体勢を崩してしまう。


「アレフ!」


 駆け寄ってきたセリカが一太刀浴びせるが、ケルベロスには浅い傷しか与える事ができなかった。

 しかし流れた一筋の血は、ケルベロスの気を逸らすのに十分だった。


「はああああぁっ!」


 俺は魔力を込めて短剣を振り抜く。


「ギャワン!」


 短剣はケルベロスの頸を切り裂き、3つある頭の1つを切り飛ばした。

 しかしケルベロスはまだ生きている。

 頭がまだ2つ残っているからか。


「グルルルッ……ガァッ!」


 再びケルベロスが飛び掛かってくる。

 マズい、口の端に炎がちらついている!

 至近距離から火球を吐くつもりだ。

 回避しようとした時、右足に激痛が走る。

 見るとさっき切り落としたケルベロスの頭が噛み付いていた!

 頭だけなので食い千切る程の力は無いけど痛いものは痛い。

 そしてその痛みがケルベロスに絶好のチャンスを与えてしまった。

 回避する間は無いので、相殺しようとケルベロスに短剣を叩き込む。

 その直前、ケルベロスの炎が消えた……魔力切れか?

 ケルベロスからも困惑の気配が漂う。


「喰らえ!」


 その隙を逃さずにケルベロスに斬り付ける。

 魔力を込めた短剣はケルベロスの頭を切り裂き、胴体まで真っ二つにしていく。

 ケルベロスは2つになって転がる。

 流石にもう死んだよな?


「ふぅ、危なかったぁ」

「流石アレフだな。怪我は大丈夫か?」

「噛まれたけどそんなに深くはないね。それとさっきはありがとう。助かったよ」


 傷口に回復魔術を掛ける。

 まさか生首が噛み付いてくるなんて思いもしなかったな。

 まだまだ甘いって事か。


「これで貸しを少し返せたな」


 セリカは疲れているはずなのに清々しい笑顔を浮かべている。


「気にしなくても良いのに。そういえば捕まっていた人達は?」

「あぁ。悪いと思ったがもう一度檻に戻ってもらったよ。頑丈な分安全だからな」

「じゃあ彼女達を連れて一旦戻ろう。倒れてる奴等を連行する人手も必要だしね」


 こうして俺達は倉庫を後にしたのだった。

 

 

すみません。

これからは毎日更新ではなく1〜3日おきの更新になります。

これからも「破門魔術師、スキル「魔改造」で人生大改造」をよろしくお願いします。

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