表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/62

50:購入へ

 62階層の踊り場に到着した俺たち。だが、流石に業務が立ち仕事とは言え、前回もだがメイドさんにはきつい様だ。この階層へ来る者はおらず俺たちだけだ。上の階層では身支度を整えているグループには会ったのだが。

 アリサに降ろしてもらいテーブルやソファーを取り出して場を整えた。後はのんびりしててもらう。前回は失敗した誘引だが、今回は魔力無しで実行してもらう、エレクティアに。


 今回は無事に誘引が成功し順調に倒す事が出来た。探知スキルが限界に達しているデルフィアの確認により他の者がいないと太鼓判を頂いたので実行したのだ。

 後は寄って来る順番に斬り刻み、ドロップ品の回収が済めばオウカと分けるだけだ。昼までも掛からずに終了し、現地から【ゲート】でオウカたちを送った。

 俺がターラルの魔物ハンターギルドに寄ると言った事から、アリサとカーラが同行し、残る面々を皇宮へと転移させ、俺たちはターラルの北門の傍へ転移、そこから歩いて向かった。


 魔物ハンターギルドに近づくとどうにも様子がおかしい。以前であれば勧誘やら雑談でそれなりに声が聞こえていたものだが入り口を通って尚声は一切聞こえない。

 人が居ないという事では無いのだ。気配感知と魔力感知、両方でも感知できていた。スタンピートの際にはかなりの人数がたむろしていたのだが、以前の状態程度の人数へと戻っている。

 その沈黙の原因たる存在に注視しているらしく俺が入っても、以前の様に道が開かれる事は無かった。

 当然注視されている存在には興味は無い。すたすたと受付嬢の元まで向かうのだった。


「こんにちは。すみませんがコカトリスの卵の在庫ってありますかね? 20個程度売って頂きたいのですが」

「ようこそお越し頂けました。在庫はございますが、テリスト様にお客様です」


 ちらっと向ける目線からするとやっぱり注視してる存在がお相手のようだねぇ。


「それはどうでも良いが、俺に用事があるのなら皇宮を紹介しなかったのか?」

「テリスト様とお会いする前には行けないと突っぱねられてしまいまして、連絡する事も禁止すると仰せで対応のしようもなく……」


 ちらっと見た所、火属性じゃなく風属性か水属性の龍族なんだよなぁ。火属性以外と親交があるとは聞いてないが秘薬の事を考えれば無関係ではないはずだ。火属性の火龍のみがかかる病気とは説明を聞いてないからな。そっち関連で盟約が果たされた事を火龍が触れて回ったのかもしれない。確認するまでは不明だが……。


「仕方ないか、どうにも龍関連のようだし無視は無理だな。アリサ、卵を買っといてくれ、ちょっくらご挨拶して来るわ」

「そんなの後で良いでしょ。行くわよ」


 引っ張られて行く事になったが、よく見ると分かる。かなりデカイ男だ。火龍族と違ってきちんと服も着ているようだし好感度は高めかな。髪色から風属性か。とりあえずは此方から挨拶としようか、彼方は俺がテリストだとは分からないはずだしな。


「龍族の方とお見受けします。テリスト・ファーラル・アーレアルと申しますが何の御用でしょうか?」


 俺の方を見ていなかった。俺がそう声をかけた事から、椅子を倒さんばかりに立ち上がり、立ち上がったら俺の胸倉をつかみ片腕で持ち上げたのだった。


『貴様がテリストか! 麗しのデルフィア様を娶っただと! 獣人の分際で! 即刻婚約を解消しろ!』


 なるほど、痛くも痒くも無いが皇国内で舐められるのは非常に不味い。敵対するにしても関係悪化の懸念がある為に対処を誤るのも宜しくない。どうすべきかねぇ。

 とりあえずこの状態を解除させるか。

 右腕で持ち上げられている状態だ。相手の手の甲を上から右手で掴み、左手は相手の肘へ。右手は相手の手が親指側へ捻り込み、左手は肘を右上へ押し上げてやる。肘の関節が極まるので相手は無理に逆らえず、後は地面にまで落ち込むように抑え込んでやれば完了だ。

 ここまで対処される前に此方へ攻撃を加えれば良いものを、それをしないからこそ一方的に極める事が出来た。


「いきなり初対面で無礼を働くとかあるまじき行為だな。おたく、もしかして喧嘩を売りに来たのか?」

『き、貴様こそ。俺にこの様な行動を取れば俺の種族と戦争がしたいのか!』


 馬鹿な行動をして来たのはこいつだしな。戦争がお望みなら受けて立つだけだ。関係悪化を懸念していたが、相手がそもそも配慮する素振りすら見せていない。ならば遠慮は無用だな。

 完全に押さえつけているので暴れられようと問題無い。腕1本へし折る覚悟なら抜けれるけどな。そこまで覚悟はない様だ。


「なるほど。お前は戦争の切っ掛けになる様にと俺を挑発しに来た訳か。アリサ、俺の刀を抜いてこいつの首を撥ねろ。デルフィアにこいつの種族の集結地を聞いて殴り込むぞ」

『なっ! き、貴様! 本気で俺たちに戦争仕掛ける気か!』


 何をとぼけているんだこいつは? 先に仕掛けて来たのはこいつだ。戦争がしたいのか確認をとるのなら、それは真っ先に俺が出すべき言葉だ。言われて当然の事をしたと本人が言ってるようなもの。ならば元々戦争する為に挑発して来た。俺ならそう考えて行動をとる。


「いやいや。お前がそもそも喧嘩売って来た。それに対処したら戦争ちらつかせてきた。なら受けようかって話だろ。お前の首はきちんと届けるから安心しろ」

「はぁ。確かに今のテリの実力なら可能よ。だけどそんな事をしたら龍族全てが敵になるかも知れないわよ。独断で決められる事じゃないわ【ゲート】を繋げなさい。デルフィアさんを連れてきてあげる」

「止めてくれ! 俺が悪かった、謝罪するからそれだけは止めてくれ!」


 それほど拒否するなら意思返しの為に是非とも連れて来ないとな。


「そうか、止めてほしいか。それならご期待に答えなきゃならんな【ゲート】」


 転移門の出現を感知した相手だが、事もあろうにギルド内で俺の顔目掛けて種族特有のスキルを放って来たのだった。


『貴様! 【エアロールスラッシュ】』


 いわば小さな台風だった。その範囲、横幅は僅か50cm程度の暴風を顔目掛けて放たれたのだ。拘束している腕を解放し、後ろに仰け反る事で回避を試みたのだが接触していたが為に完全に躱す事叶わずに受けてしまった。体は無事だが顎から頬まで切り刻まれて血まみれだ。流石は龍族。レベルは俺よりだいぶ低いがその魔力の集積力は並じゃない。傷は浅いけどな。残った魔術は建物の天井までをも貫通してしまうのだった。

 その隙に俺から離れ、体勢を直しついで【オーバーエンチャント/ウィンドマキシマムエッジ】を発動、人型で取りえる最高の状態をとるのだった。

 遠巻きに見ていたハンターたちだったが、事態を把握した者は我先にと逃げ出し始めた。建物を貫通する魔術を見たのだ、当然の結果だった。


「なんだ、結局はやる気満々か。それなら俺も対処しないとな」


 小太刀を引き抜き【エンチャント/アクアブレードLv5】を掛ける。流石に室内で長物を扱うと周りに被害があり過ぎるからだ。


 隙だらけだったのだが仕掛けて来ないとは結構慎重だな。


「どうしたよ、さっきの勢いのまま攻めて来い。来ないならこっちから行くぞ!」

『待ちなさいテリスト!』


 ぐっ。この絶妙なタイミングで来たか。突然閉じればアリサが危ないからと維持したままにしたが、それが原因で決着付けそこなったか。運が良いな。


『げっ。デ、デルフィア様……』

『テリスト大丈夫ですか?』


 目を見開いて心配そうに声をかけて来る。今は血まみれだからな。顎付近の太い静脈が切れたのかもしれない。


「この程度どうって事は無いが、実害が出た以上こいつらの種族とは接触しなきゃならんな、抗議なり戦争なりな【グレーターヒール】」


 治療魔魔術の発動で出血が止まったのを見て安心したようだ。相手へ顔を向けて相対する。俺の前に出てだ。


『……ギャロス、何用です。テリストをこの場で待ち伏せするとは何事だ』

『それは、その……』


 言い難い様だな。俺が代弁してやるよ。


「デルフィアとの婚約を解消しろだってさ、実力行使に走ったから俺との戦争を希望してるらしい」

『それで天井の穴ですか……』


 来たばかりなのに目敏いな。


「だな。俺が避けたから天井まで貫通してる。魔物ハンターギルドに喧嘩を売ったのは確実だな。さてどうする? こいつを殺して素材を代金にすれば修復できるだろ」

『……』


 こうなれば分が悪いのだろう。さっさと発動したスキルを解除するも、何も話せないでいた。これじゃ蛇に睨まれた蛙だな。


『そうね。テリストがそれを望むのなら私が手を下してあげるわよ。どうするの?』

『エ、エレクティア様まで……』


 実害受けた俺が手を下さないとの判断は無い。エレクティアには傍観してほしいものだ。実力に差があり過ぎるからな。


「エレクティアの手を煩わせるまでも無いだろ。あの程度なら俺でも十分に相手は務まるさ。ここでは迷惑掛かるからな。ギャロスと言ったか? 外に行くぞ、付いて来い」

「はぁ。相変わらず敵対と見れば容赦ないわね。テリスト止めておきなさい」

『キュアアアー!』


 サルーンが来たかと思ったら開口一番それか。後ろからアウローラが俺の頭に飛びつくし、どうしろって言うんだか……。


『は? りゅ、龍王様が何故この様な場に…………も、申し訳ございません、決してその、敵対する為に来たわけではなくてですね、その……』


 良く分からんな。アウローラが何か話しかけたのか? それよりも収束させないとなぁ。


「ギャロス。俺とデルフィアの婚約解消と言ったな。皇国と火龍族の盟約を汚す行為だぞ。お前の行為は敵対宣言してるも同然だ、そのうち攻め込むから首洗っとけと族長に伝えておけ」

『そ、それは……』

「誰だ馬鹿者! ギルド内では戦闘行為は禁止だと何度説明したらわかるのだ!」


 今度は上の階から降りてきたギルドマスターか……やっとられんな、話し合う事が多すぎてカオスすぎる……。

 周りが全員敵といって良い状態となった。こうなれば逃げ道は無い。そもそも自力脱出可能な状態では無いが。


 当の本人は混乱していた。少し脅して婚約破棄を呑ませればさっさと帰る予定だったのだ。それが最初から頓挫してしまった。あっさりと力で負け、組み伏せられたのだ。下手に喧嘩を売って良い相手では無かったと即座に理解した。そこで戦争となれば躊躇し、矛を収めるかと思った事を口に出したのだが、これに相手が乗ってしまった。

 一番恐れていた事、皇国の中枢をなす人物に知られることだった。あっさりと知られてしまった。どう取り繕うか、考えても浮かんでこない。どうすれば良いんだ!


「なあアリサ。俺って今日はのんびりして過ごす予定だったのよね。それが長時間の話し合いが必要な事態に陥ってるんですけども。どうするんですかこれ? とりあえず殺して修理代金でも捻出するか?」


 呼びに言っていたアリサも当然戻って来ている。俺の休日を容認している事から話を振ってみた。


「ご愁傷様よねテリ。いますぐに殺すのは駄目よ。とりあえず方向性を決めてからよ」


 ま、順当は返答ではあるな。その話し合いがめんどそうだが……。


「え……テリスト様……。サルーン様もお越しだったのですか……」


 馬鹿やらかしていた一部の人物に俺たちが関わってるとは思わなかったのだろう。足早にやって来たギルドマスターだったが。どう取り繕えば良いのか分からない様であった。


「騒がせてしまったようね。部屋を一つ貸しなさい。其方で話し合いましょう」

「はい。それでは関係者の皆様はお出で下さい、此方です」

「デルフィア。サルーンの後ろに張り付き護衛をしてくれ。そこのお前! お前は俺の前を歩け、拒否したり妙な真似をしたら即座に斬り殺す」

「ああ、分かった……」


 観念しているようで何よりだ。3階にある一番広い会議室へと連れだって移動した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ