49:
翌朝一緒に寝た嫁さんとお互いにお早うの挨拶から、今日はダンジョンへ行く予定なので防具を着こむ。素っ裸でも傷1つ負う事は無いと確信はしているのだが普段着で挑む横着は宜しくない。他のハンターたちの目も当然あるのだ。特に初心者にダンジョンなんて余裕なんだなと勘違いさせてはならない。
特に初陣と慣れてきた頃が一番危うい。傲慢にも俺は強いと勘違いし、有頂天になって挑むのが最も危ういのだ。
食事前にグリちゃんを迎えに行かなくてはならない。昨夜放置してるのでぐれてるかもしれないのだ。早速と何時もの部屋に【ゲート】を繋いだ途端グリちゃんが頭を出して来た。危ない。顔目掛けて突っ込む所だった。
『昨日は酷いのでござる! 置いてけぼり処か食事抜きだったでござるよ!』
「うん、知ってた。1食抜いても大丈夫だろ。魔力があれば活動に支障ないし」
『そうでござるが、それでは楽しみが奪われるのでござるよ』
「本当に食費が嵩む生き物だな。やっぱ今度から自力調達させるかねぇ」
牛肉一塊を毎食食べるとか量が半端じゃない。確かに確保へ赴けば済む問題だが、それがグリちゃんの食材確保のためと考えるとちょっと首をかしげてしまう。
『その問題は保留にするでござるよ。それよりも昨夜お客さんが来たのでござる。拙者が応対したのしたのでござるが、逃げ帰ったのでござるよ』
施錠はして無い事から入ってどうぞと声をかけたのだろう。玄関開けてみたらグリフォンの巨体が目の前にあったらそりゃ逃げ出すだろ。それじゃ誰が来たのか分からんよなぁ。
「名前は分からないだろうけど、そいつの風貌はどんなだ?」
『皮鎧を着こんでござったな。背はテリスト殿とそう変わらなかったでござるよ』
そうなると一人で来た訳か。魔物ハンターギルドのおっさんは俺より背が高いし、あの元伯爵はそもそも皮鎧は着ないし。連合からの使者だった場合にはグリちゃんの事を知ってる事から逃げ出す訳無いし。
これは特定するのは無理だな。可能性としてはギルドの何方かだろう。後で顔を出すしかないかな。
「とりあえず大きくするからちょと顔を引っ込めろ、失敗してちょん切れたら嫌だろ」
切れた瞬間に【グレータヒール】と【ブラッドアップ】を掛ければ死なないとは思が、為すには惜しい個体だしな。
それを聞いたグリちゃんは頭を引っ込め、無事に皇宮へと来た。食事を済ませてオウカ宅の敷地へと転移して合流後、ターラル北門近くへ転移、そこから歩いて移動となる。
メイドさんたち、ダンジョンへ行くのにもメイド服とは……これは目立ちそうだな。
歩いて移動の最中に一枚の羊皮紙をオウカへと手渡した。食事をさっさと済ませてアイスクリームの材料と作り方を書き留めたのだ。
「はいこれ。とりあえず乳が10リットル基準で書いたから、量を増やしたり減らしたりする時は割合を増減させれば良いよ。果物は果肉が柔らかいのを使うように。潰れないと均等にならないから」
「有難う。それで相談なんだけど。濃縮用と冷却用に火と氷を付与してくれない?」
オウカなら抵抗もあるから大丈夫かな。収納のスキル持ちだし、むき身でも周囲へ影響は出ないから大丈夫だろ。耐えられればとの但し書きが付くが。
「付与するのは良いが、火の方はミスリル以上の素材が良いかな。俺は武器に付与して濃縮を、氷の方は攪拌する為の道具にしてるがどうする?」
「泡だて器は良いけど武器はちょっと……何か他に無い?」
金属に付与するのだし熱伝導率が高い。端に付与したとしても時間経過で握りて部分も相当に熱くなる。大丈夫だよな? やっぱりここは確認するのが良いな、手間はほんのちょっとだし。
「えーとだな。握りてまで熱くなるのは理解してるか? 溶ける程じゃ無いが、最終的に肉を焼けるほどになると思うが、根性で握って使えるか?」
「抵抗があるから火傷はしないんだよね?」
抵抗があろうと火龍族ではないのだし、痛いのは痛いんだよな。どうもそこら辺を理解してない気がする。
「ちょっと試そうか。素手で扱えなきゃ話にならないからな」
鉄の塊を取り出して一握り分切り分け、生活魔法の火種で溶かし、それを素手で受け止めさせる。
受け止めはしたのだが。そのあまりの痛さに手を振り周囲にばら撒いだのだ。それはつまるところ周囲に被害が出る訳で、容赦無いアリサにぶん殴られて吹き飛び、俺から治療を受ける羽目になった。骨折しなくて良かったな。相当に加減したようだ。
「オウカ。例えあんたでもやって良い事と悪い事が有るでしょ。周りに被害が出ないよに気を配りなさい」
「ご、ごめんなさい。考えが甘かったです」
「抵抗が上がればそれほど酷くは無いんだがな。今度鍛えろよ」
「普通に火にかければ良いでしょ。無理にテリの真似をするからそうなるのよ」
だよな。氷魔術を付与した泡だて器なら持ち合わせている。作り直す予定だった事から其方を渡したのだが。手にくっついだのだ。手は何気に湿っている。それが凍り付き接着剤代わりになりくっついたのだ。
「痛い痛いよ! テリスト早く取って!」
仕方ないなぁ。火種を使って加熱し、はぎ取ってあげたのだった。これは作れそうにないな。
「なぁ。抵抗を上げないと作れないんじゃないか?」
「そうかもしれないね。聞きたくないけど上げ方はー?」
「簡単だぞ。ひたすら耐えるんだよ。痛くても我慢だ。それで勝手に上がる。オウカは治療魔術が使えるだろ。良かったな、治療しながら鍛えられて。自動の回復も持ってるだろ。そっちを鍛えるのにはHPを減らす必要があるからな、同時に5つもスキルを鍛えられるぞ」
火の抵抗と氷に対する抵抗とそれだが、HP回復、MP回復、水魔術、魔力操作も同時に鍛える事が出来るので何重にもお得な特訓だった。ついでに根性も鍛えられるが、其方はスキルとは別枠だ。
「うわぁ……」
嫌そうな顔をして言うが最初の出だしで火傷や凍傷に掛からない分だけマシだと言える。食べたければ根性で挙げてもらうしか無いな、俺の様に。
俺が取得した際はレベルを1に制限されていた。これ即ち最大MPが低い事を意味する。修業を開始すれば早々にMPを使い果たして気絶したものだ。この最悪と言える延々気絶せずに済むだけ恵まれている。
話しながら進めば早々にダンジョン入口へ到着した。ここの衛兵は以前馬鹿やらかしていた侯爵の元部下だ。今は家族共々処刑され、代官がついている。その手足になったという事だ。
最近はそれほど訪れない。最も、火龍一族の所から帰還して2度目だが、俺たちだと確認すると俺たちが入場しきるまで頭を下げて見送ってくれた。
一階層の踊り場に着いた所でアリサに覆いかぶさる。早い話がおんぶだ。
「テリ、何してるのよ……」
不機嫌そうな声だが俺は聞いてるのだよ。2日ないし3日程度休んでも構わないと言質を取っているのだ。それを実行しようかなと思っておんぶしてもらうのだ。
「2,3日休んで良いと言ったじゃないか。早速休もうかなーと」
確かに休んで良いわよと言ったわね、と納得してくれた。マントは邪魔だからと一度降り、改めておんぶされる。
「ね。胸が成長して無いか?」
と、丁度いい場所にある胸を掴んでいる。
「テリ、あまりふざけてると叩き落すわよ」
「ごめん。だけどさ。実際はどうなの?」
「ブラが少しきつくなって来た……言っておくけどウエストは変わって無いわよ。太ったとか勘違いしない様に!」
魔物ハンターギルドを退職してハンター業に変わり若干やつれはしたが、順調にレベルも上がり、それに伴い食事量も増えた。
当然の事ならが運動量も増加した。前はぷくぷくしていて柔らかかった体だが今は引き締まって来ている。筋肉量が増えた事により新陳代謝も増え、大量の食事でも太らない体質になった。ウエストは変わって無いと言っているが、触った感じは出会った頃と比べて筋肉質な感触が伝わって来る。
「そうかそうか。だけど勘違いはしないでくれよ。何も容姿だけで結婚相手を決めた訳じゃない。能力、性格を含めて考えた上でだからな。少々太ろうと問題無い」
「ふん!」
嫌がっている事を無理にする事は無いと普通に手を回して体を預けるのだった。




