4:激怒
女神歴1367年1月2週6日
昨晩はおなじみの女子会が開かれ、クラレスの順番が決まったのだ。だた、昨晩は久しぶりに会ったサルーンと夜を共に過ごしたテリストだった。
起床すれば嫁全員と1人ずつ挨拶を交わして食事を済ませ。寛ぎの間で来客を待つのだ。
「それにしても来ないな。結局は誰なのよ?」
「そうね。心構えも必要でしょう。帝国からギルトに出向して来ている彼よ」
彼か、分らんな。彼方は俺の嫁に元勇者がいる事から、帝国に対して良い感情を持っていないだろうと推測してるはず。何もせず接触しなければ一悶着も起こらずに平穏無事に過ごせる。その状態で会うとか俺なら選択しない。
下手に藪を突けば蛇何処ろかドラゴンが出て来る恐れがあるからだ。
可能性の問題としては帝国は周囲一帯の国から疎まれ警戒されている。結婚式に先立ち、皇国の者が護衛を引き受けて迎えに行く場合は皇国へも弓引く事になり襲う確立としては激減する。その為の協力要請なのかもしれないな。
「どうしたのテリ。何か考え事?」
「ああ。可能性の問題を考えていた。周辺一帯に警戒されているからな。殺すなら結婚式に向かってる最中なり、帰還してる最中に襲うのが一番手っ取り早い。ただ、それをすると皇国の特別行事を妨害したと考えられる。皇国と事を構える可能性があるって事だ。それでも絶好の機会を逃がすかは不透明だ。
そこで取れる手は皇国に護衛の依頼をする事だ。主催者が護衛に就けば、流石に襲う率としては激減するからな。そこら辺かなと考えてた」
「ありそうな話ではあるわね。もし、その依頼なら」
「乗るな。俺が送り届けてそのまま潰す」
『勇者召喚している国でしたね』
そうだ、と切り出して被害者である事を説明していると先方がやって来た。ただし、俺たちにとっては重要な相手では無い。よって1階の応接室で会うのだった。
彼方は一人だが此方は11人と2匹だ。クインとアウローラは俺が抱いている。
対面に座っているのは中央にサルーン、そして両脇に俺とデルフィアだけで、後の者は俺たちの後ろに立っている。
「お会いして頂き誠にありがとうございます」
「お早う。何分返礼の使者として火龍一族の元に出向いていたのでな。申し訳ない」
「謝罪は不要です。国として当然必要な事柄でした。無事勤めあげられたと聞いております」
ふむ。正式に帰還して来たことを教えたのか。本来なら4月に変える予定だったのだが。ま、教えても支障はないか。
「納得して頂けたようで何より。それで、俺に用事があるとか。何用です?」
「テリスト様は現在、帝国の置かれている現状を知っておいででしょうか?」
ん? スタンピートの発生で対応が遅れ、相当に被害が出たとかの件か? 良く分からんな。
「それってスタンピート関連か? その後は全く情報を受けてないが。何かあったのか? サルーン」
相手に情報提供してもらうのが一番分かるのだが、それでは対価を、などと言われたくはない。だからこそサルーンへ振ったのだ。
「スタンピートの影響ではあるけれど根本は違うわ。隣国のカリース連邦とそのお隣のバーナル王国が連合を組んで帝国に侵攻したのよ」
ほう、弱っている所を叩くとか、スタンピートの終結に合わせてジアラハルトへ戻った直後に攻めたとなれば相当に良いタイミングで切り込んだな。こりゃ戦力次第だが落ちたな。
「そりゃタイミングが良いな。確実に落ちるんじゃねえの」
テーブルに頭ゴンから言葉を綴る。
「以前テリスト様の仰っていた件を実行して頂きたい。報酬は望まれる額を用意いたします」
ふざけるな! 一方的に契約を破断し、ジアラハルトを叩けとか、喧嘩を売りに来たのか!
「サルーン、用事が出来た。クインとアウローラを抱いておけ」
「……」
無言で二匹を受け取ってくれた。俺は立ち上がり、入り口の扉には近づくが。扉を開けずに振り向く。
「よもや俺に喧嘩を売りに来たとはな。死ね【フレイムアロー】」
足元から発動させ。対象を貫通したとしても窓を突き破り外へ出るようにと計算して放ったのだ。そもそもこの場で殺せば血を飛び散らせる。そこで、焼きつければ飛び散らないだろうと選択したのが火の魔法だった。
が。事もあろうにデルフィアが割って入り俺の魔法を完全に受け止めたのだ。片手で。
「デルフィア、そこをどけ!」
『テリスト止めろ。この場でこやつを殺しても何の解決にもならん。ギルドへの出向者を殺せば其方とも揉めるぞ』
「揉めるね、大いに結構! 国の対面を汚せとそいつは言ってきたんだぞ! 契約を一方的に破棄してみろ。俺の対面で済むはずが無いだろ。そもそもこいつは俺が受ける可能性があると思うからこそ来てるんだ。ここまでコケにされて黙っているほど俺はお人よしじゃない。分かったらそこをどけ!」
『それでもだ。テリストがこやつを殺せば、その罪を皇国が背負う事になるとなぜ分からん』
「そうか、なら止めれるものなら止めてみろ。俺の全力をな【聖水よ雷よ風よ光輝よ還元し、穿ち穿ち穿ち穿されし溶かせ貫け貫け穴隙、フォースジャベリン】
デルフィアも俺の詠唱を聞き、直ぐ様に対処を開始する【フレア・マキシマムエッジ】
俺の混合魔法は先ほどと同じ角度だが大きさが電柱どころじゃない。3つほど寄り合わせた大きさだ。ただし、本来なら瞬間的に1発発動すれば止まるのだが。俺の場合は常にMP供給をして止めない様にする。
デルフィアは避けもせずに真正面から受け止めるが流石の混合魔法。それも相性的にかなり不味く受け止めた手から煙が立ち上る。その姿を見てエレクティアが即座に行動を起こし【オーバーマジック・フレア・マキシマムエッジ】を発動して二人かがりで魔法を受け止めるのだった。
『テリスト止めなさい! お母様を殺す気ですか!』
「だからそこをどけと言っている! 俺はそいつを殺したいだけだ。単に間に割って入られただけ。デルフィアを殺す気なんて微塵も無い!」
当の本人はガクガク震えて腰が抜けたのか蹲ってしまっている。ただ。俺のMPが危うい。尽きて行くのが手に取るようにわかる。
もう自棄だ。MP供給をしたまま収納に手を突っ込み魔力結晶石からマナドレインで補給しながらそれをもつぎ込む。彼方には連日MPを与えていたので無尽蔵にMPがある。力尽きるのはこちらだ。この手しか無かった。
「テリ。もうやめて頂戴。お願いだから奥さんになる人を傷つけないで、ね。お願いよ」
泣き、抱きつかれてしまった。そして俺はMPの供給を止めた。
アリサを連れたまま2人に何度も【ハイヒール】を掛けて治療をし。そのまま部屋を後にする。そのまま寛ぎの間に戻るのだった。




