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会談と言う名の交渉の日にちは決まった。最大の懸念はアルフォンスか。本人は国元へ行かずとも手下を使えば調整は可能であろう。副と肩書にあるように手下を使う権力を握っている。どの様な日程で行動していたのかを聞き出した所で黒とも白とも判断が無理なのだ。
日本では証拠が無ければグレー色だと放逐だが此方は一族郎党皆殺しの風習が残る世界だ。ヘルネルト陛下の言うように処刑してしまうのが手っ取り早くは有るんだよな。冤罪かも知れないが部下の管理不足ではある。
それに、タウラスの民感情では明確な敵がいる方が後々と移巴しやすいだろうか。思惑に乗るのも手だな。
今日も今日で忙しいねぇ。サルーンたちを皇都に送り、俺は物資配達員か。
「そうだった。今日皇宮に戻って来るよ。1人紹介する事になったから」
「また何かやらかしたのかしら?」
「やらかしたよ。人命救助したら嫁さん増えた」
「はぁ。それで、身元は確かなの?」
「大丈夫だよ。帝都の東にステーツって町が有るんだけど、そこの魔物ハンターギルドの受付業務担当者の方」
「信用できる身分ではあるわね。連れていらっしゃい」
「そんな訳でデルフィア、アルローラを頼むよ。戦地に行くからお願いする」
『戦地ですか……分かりました。テリストはすべきことをなさい』
「ありがとう。こっちは俺だけで済むからな。皆も皇宮に戻っててくれ。そうだな、ちょっと料理を頼めるか?」
『複雑な工程を聞いても分からないぞ?』
「バターって品を作ったからそれを油の代わりに使って焼くだけ、後はシンプルにちょろっと塩を振るだけ、ただし足だけな。胴体はそのまま確保よろしく」
と説明しながら蟹入りの箱を5箱取り出した。そしてバターを入れている鍋を宛がう。
「それと1箱はオウカとこに持って行ってくれ。2箱は近衛騎士に振舞ってくれ、調理方法は任せる。これでこの品は品切れな」
『わかったが一応あの大きな鍋を貸してくれるか? 使うかもしれん』
それもそうか、あれじゃなきゃ茹でれないからな。
「茹でるなら沸騰から1時間な。生だと腹壊すから注意だ【ゲート】」
「それではお先に失礼しますよ」
サルーンを皮切りに一礼しつつ転移門を潜り、皇宮へと移動した。
「すまないな此方の事で時間を取らせて、それじゃ戻りましょうか【ゲート】」
転移後、何処に品を降ろすのか話し合った結果、魔物ハンターギルドには必ずある地下訓練場を無理やり借り上げる事になった。
帝都へ向かっていた部隊の兵站部隊の品と帝国軍への後続部隊の品を丸々納品し、別途タルロス団長へ会談の場を設けて頂いた。さしで話す為に。
「先ずは謝罪を。今回民間の方々が犠牲になった事に関してカーリス連邦は全くの無実であったと確信いたしました。バーナル王国と同列に扱った事、申し訳ありません」
「ですが。連合内で起こった事には変わりありません。頭をお上げください」
「いえいえ、私が先走り、貴国に対して大変な圧力を掛けてしまった責任があります。ですが、謝罪のみでは到底不足です。慰謝料としては少なくは有りますが、これをお納めください」
光下級竜の外皮は防具作成依頼と代金とで使い切り手持ちに無いので、その他7種の属性竜の外皮を1枚ずつ提示したのだった。
「なっ!」
「フリーサイズで作成されますと相当な量が必要らしく、精々フルセットで2着程度が限度の様です。個人用として作成すればそれなりに作れましょう。それぞれに対応した属性であれば相当に強固な対魔術障壁となりましょう。これらの品で謝罪を受け入れて頂けらた幸いです」
「元々連合の不手際だったのです。それでも謝罪が必要とのお考えなのですね」
「勿論ですよ。筋を通すべき所は通します。勿論不手際があれば当たり前の行為です」
「……テリスト様の誠意、確かに受け取りました。ガルサス陛下は必ずテリスト様をお許しになるでしょう」
「そうであれば喜ばしいですね。それでは失礼させて頂きます」
此方には握手の習慣は無い。片腕を相手に預ける行為になるからだ。それは敵であった場合、不意に襲われれば最悪のタイミングになりえる。よって、その様な愚行を犯す者は居ない。
分かれる際はどんなに相手の爵位が高かろうと会釈程度で済ます事も普通の事なのだ。決して相手を目線から外す事はない。何時敵に回るのか分からないのだから。
部屋を退室した所で【ゲート】を発動し帝都の城、4階の寛ぎの間へと直接転移した。
「ただいまー。すまないな3階で会議もしてたんだが迎えが遅くなった」
「はい、アウローラが飛び出して行きましたし。リカさんからも聞いておりました」
「少し今日の事を説明しておこうか」
少々端折って説明をし、何故会談を行ったかの説明をした。
「そう。連合がですか……」
「連邦の方は被害者だと判断した。俺の事を相当に危険視してる様だし、そんな安直な手を下すと自滅すると確信してる節があるからな。
バーナルの方が分からんな。命乞いの口利きを蹴った腹いせか、それとも皇国を貶めて自国の割り当てが増えるようにと画策したか。どちらかだと思うが判断材料が無い。
直接交渉して来たアルフォンスの口を割ろうと、他人を巻き込んだれと自暴自棄になってる可能性から自供は当てにならないしな」
「その。判らない状態でバーナル国王が拘束され、此方に送られるのですか」
「だな。直近はこんな感じだ。それを話したいんじゃないんだよね。今日皆に紹介するから皇宮へ行くぞ。サルーンには既に連絡済みだ。安心して皇宮で生活してくれ」
「こうぐう! あ、あの。本当に私が皇宮で生活しなければならないのでしょうか……」
ん? 俺はフルネームで名乗ったはずだが、他国の長とはいえ知らないものなのかね。俺も全然知らないから人の事は言えないが、ギルドの職員でそれは不味いんじゃ。
「今更でしょ。俺が名乗ったの覚えてない? テリスト・ファーラル・アーレアルね。ファーラルは元々一般人だった俺が頼んでアレサリア・ファーラルから頂いたの。で、アーレアルはサルーン・アーレアル・アヴァサレスの名の通り、サールンから貰ったのね。
もっと正確に言えば、サルーンの立場だと俺が嫁に迎えるのに問題があってね。俺が婿入りして家名を残すのよ。で、他の奥さんは俺が嫁に向かえるからファーラルの家名を受け取る訳ね。
複雑だけど家長はサルーンであり俺でもある。そこの説明を吹っ飛ばしてアンナが求婚した上に俺には拒否する権利が無かった訳だ。あの事情のせいでね。理解したか?」
「……」
「あの。テリスト。そんなに一気に説明しても理解が追い付かないのでは。私もテリストの立場を聞いて放心したもの」
「そうかねぇ。最初あった時からある程度知ってそうな感じだったんだよね。スタンピートを潰した英雄とか言ってなかったっけ? あれ? 別人だったか?」
「いや。私に聞かれても……」
「この調子じゃ残りの奥さん紹介したら肩身が狭そうだなぁ」
そうそうたるメンバーが揃ってるものな。特に守護龍3人は特殊と言える。人の領域で生活してる上で、結婚までするのは初じゃ無いのだろうか?
「そうですね。何かしたい事でもあれば其方をして頂くのはどうでしょうか? 何かしら注力していれば落ち着くかもしれませんよ」
「確かに受付嬢するほどの人物をそのまま囲うのは勿体ないな。後程話し合おうじゃないの。さてと、彼方も待ってるだろうから移動しようかね【ゲート】」
もちろん場所は皇宮入り口前だ。部屋へ直通では顔通しが出来ないものな。はやり近衛騎士たちに覚えてもらわないとな。




