42:交渉の席へ
皇宮の寛ぎの間に転移すると、光の下級竜、フル装備に着替えているサールン以下嫁たちと騎士が詰め寄せていた。戦争参加するつもり満々である。どうしたものか……。
この表情を見るのも3度目かな。能面の様に無表情だが目が座っている。ちょっと逃げたいんだけどもやっぱりスルーは無理ですよねぇ。
「やぁサルーン。もしかして行くつもりかな?」
「そうです。案内しなさいテリスト」
やっぱりだよねぇ。ちょっと注意しておくか。現地を視察するとか平気で言いそうだしな。
「その前に一言言っておく。北側と東側のみしか確認して無いが、無理やり運用された事から市民の死者が3000人は超えてると思う。気をしっかりと持てよ」
「報告を受けた時点で予測済みです。行きますよ」
「デルフィアとココア、サルーンに張り付いて護衛を頼む。他は騎士に接触されないか周囲に気を配れ、行くぞ【ゲート】」
移動先は先ほどと同じくクインの近くだ。北付近よりも殺伐としていない。精神状態が興奮していれば何をしでかす輩が居るとも知れないからな。魔術であれば接近途中で潰せるが、銃器による弾丸を潰すのは結構難易度が高いからな。サルーンを守る為なら少しでもリスクを避ける。
しかし、攻め落とした直後だ。討ち漏らしは無いのだが帝国側に強制されていた者をどうするかだよな、食料の提供をしなければ底をついてるであろうから餓死しかねない。ある程度連合の手が空かない限り会談は不可能な気がする。ちょっと彼方と接触してみるか。
「サルーン。落とした直後であまりいい状態とは言えない。会談するにも相手がいてこそだ。少し時間を貰うぞ?」
「ええ、有る程度の命令を下したのち集まらせなさい。良いですね?」
「了解。クイーン! 領主館前に全員を案内してくれ! 俺は後程合流する!」
『了解じゃよ』
先ずは近場の東から攻めた部隊の部隊長さんからだなと飛翔して、後方へと降り立つのだった。過分に警戒されるが……。適当な人を捕まえて聞き出すのだった。此方は既に納刀しているので素手だが、魔術があるからな、警戒されるのも仕方がない。
「此方は皇国軍副団長のテリスト・ファーラル・アーレアルだ。東からの部隊長さんはどちらだ?」
「これはとんだ失礼を。ガイスト様は前線で指揮をしておられましたので最前線かと思います。伝言であればお伝えいたします」
顔すら知らない人だからな。ここはお願いするのが得策だろう、時間短縮の為にもな。
「ではお願いしよう。伝令のトップも含めて領主館跡地に来てほしい。会談を要請すると」
「はっ、何分事後処理が必要ですので。遅れました際にはなにとぞご容赦をお願いします」
「一通り命令が行き渡ってからで問題無い。それでは失礼する」
北側は前回お会いした副団長さんだった。名前は知らないが……こちらもスムーズに連絡が取れ、西ではアリサが接触していた。
アルフォンスの存在を知って接触したのか。面倒な事になってそうだなと思いながら気配を消して参加するのだった。
「如何なのよアルフォンス。何か弁明有るんでしょうね?」
「弁明? 何に対する弁明でしょうか?」
「とぼけないで! 挟撃する日時をごまかした事に対する弁明よ! 今日の状態から、昨日から戦闘開始してるでしょ!」
「そうでした。昨日の昼頃に宣戦して頂く予定では無いですか、なぜ1日も遅れて参戦なされたのですか」
「なっ、何を言ってるのですか!」
掴みかかろうとしたのでその手を掴んで止めた。この場で死傷させては不味い、確実にアルフォンスの仕業だと証明後にしなきゃな。
「はいストップだアリサ。4日ぶりって所だなアルフォンス」
「こ、これはテリスト殿。挟撃に参戦して頂き感謝いたします」
「ちょっと確認したいんだがよ。其方にいらっしゃる方が西の部隊を率いた部隊長さんか?」
「そ、そうです。こちら、西からの部隊長を務められましたファーシナル様です」
「ファーシナルです。先ほどからおっしゃっておられる参戦時期ですが、我々はここを攻める前段階に一つ攻め落としております。余裕をもって予定が組まれておりましたので時期のずれはありえません。何かの誤解なのではありませんかな?」
そうするとどの段階で組んだかによるな。それと、此方に要請を出した日時が本来は何時だったと認識しているのか。そこで犯人が絞られる。
「まあまあ、その事で少々行き違いがある様でしてね。事態を重く見たサルーン陛下が自ら出向いて来ております。そこのアルフォンスを含めて領主館跡地へと赴いて頂きたい」
「皇国のトップ自らですか!」
「俺が【ゲート】の魔術を使えるのでね。どれだけ距離があろうと一瞬ですよ。参戦時期が遅れるなんてありえないんですよ。ねえアルフォンス」
「……」
渋い顔をして黙り込んでいるが時すでに遅しだぞ。貴様に未来はない。
「ファーシナル殿には注意して頂きたい。もしアルフォンスを連れて来なかった場合には皇国として連合に対し宣戦布告する用意がある。少々負傷しても連れて来て下さいね。国元を更地にしたくないならな」
「何やら不穏ですな。分かりました。アルフォンスを拘束しろ! そのまま領主館まで連行だ! これは最優先事項として実行しろ!」
何をする、これが同じ陣営の者に対する仕打ちか! と叫んでいるが無視される。両手両足を拘束され、連れて行かれた。逃げ出されても面倒なのでその後ろをついて行くのだ。
詠唱をしようとすればぶん殴られて止められている。これなら何もせずとも無事に到着するだろう。
「順当だな。さてさて、どう転ぶかねぇ。隊長さんの態度からして単独犯の可能性が高そうだ」
「そうだけど。酷すぎるわよ!」
確かにな。予想は3000人以上だったが4000人以上に考えを検めなければならないようだ。戦力としては乏しい彼らも武器を持っていれば相対するしかなく手を抜けば殺される。どんな事情があろうとも手は抜けないのだ。参戦時期が1日ズレた事で犠牲者が激増した。
本来なら桁が一つ違っていただろうにな……。
「わかってるさ。だからこそ今こうして動いてるんだろ。大丈夫だ、絶対に逃がさん。後悔先に立たずというが、順当に後悔させてやるよ。
アルフォンス! 貴様だけは連合と敵対しようが絶対に殺してやる。楽しみにしてろよボケ! 公開処刑だ!」
周りの連合に属する騎士は我関せずを決め込んでいる。とばっちりで処刑は御免なのだ。最後に到着したのは俺たちだった。ただね、領主館は燃えちゃって役に立たないのよねぇ。外は雪が積もって何処で話し合うんだよ状態だ。そんな訳でわたくしの出番です。帝都の城前へ【ゲート】を繋げて協議と行こうじゃないの、こうして連合にとって針の筵を歩む、非常に難しい交渉の席へと誘われたのだった。




