41:謀れた皇国軍
行動へと移れば早いものだ。2分も掛からずに到着する。前回に相手方に認知されているので、対抗処置を取られていようと全く問題はない。
やってくれたな、アルフォンス。南門に転がる遺体。装備から察するに連合に属する何方かの騎士だ。頭に矢を受けたり、魔術で焼けこげていたりする。東西から攻め寄せる部隊の内、一部分が南側から攻められないか模索する為に斥候を放ったのだろう。
当然の事ならがすでに到着している事を意味する。さらに接近し、町の上空より観察すれば、既に戦端は開かれており、既に魔術の炸裂音や悲鳴や怒号が飛び交ている。
それに、南門付近に配置されていた一般兵の反応が無かった事から、既に昨日から戦闘に移行し、それらに割り振られたのであろう事が嫌でもわかる。
当初、内から食い破り、一般兵を味方につけての反抗作戦を画策していたのだが、これでは使い捨てにされ、かなりの犠牲者が出ているであろうことは明白だ。
確認したのだから即座に帰還した。直ぐに行動に移す必要があった。到着早々に声を掛ける。
「すまん、緊急事態だ。既に戦端が開かれ南部に居た住人も割り振られている。直ぐに準備を整えて殴り込むぞ」
「テリどういう事なのよ? アルフォンスの言葉では今日の昼だったじゃない。天候から遅くはなるけど早まる事はないはずよ」
「わかってる。人的被害を此方の責任として押し付けるつもりだったんだろ。本来の到達予定日を誤魔化して、俺たちの到着が遅れたからこそ被害が甚大になったとかの責任論へ持って行きたいんだろ」
「その為に住民を犠牲にしたの!」
「かもしれんと言う予想だ。俺が返答書を書く際に日にちをも書き込んだだろ、その時表情が険しかったからな、その時から既に計画してたんだろ。アルフォンス単独か連合全体か、何方かは分からんが舐めた真似をしてくれた」
「それでどうするのよ?」
話してはいるが、皆はせっせと着替えの真っ最中だ。エレクティアだけはマントを逆にはおるだけなのでとっくに終わっているが、尻尾消せないのかね? 人化スキルの熟練度が問題だとしてもとっくに解決してそうだよな。明らかに弱かったクラリスでさえ尻尾消せていたし。
「アルフォンスの身柄は此方で拘束する。その後皇宮へ連れて帰り牢屋へぽいだ。皇帝一家と同じく公開処刑する。国が関わってたとしたら……奴らのトップの首も取るぞ」
「そのほかの兵士は?」
関係してるかは疑わしいな。作戦立案する部署だけで今回の事を実行に移せる。一般の兵にまで知らせる労力を考えればそんな事はしないだろうと言い切れる。俺なら説明しないからだ。
「上が画策しても下は知らないだろ。要は国元のお偉いさんと実行部の上の連中、それと伝令が知ってさえいれば実行可能だからな。そのまま放置だ」
「またサルーンさんのストレスが溜まる案件ね」
「仕方ないだろ。折角北側を攻め取れるようにと譲歩したんだが、それでも彼方は納得しないみたいだしな。国が関わって無い事を祈るのみだ。本当にサルーンが4カ国を手中に収める羽目になる」
この事を話した時は絶句してたからな。仕事が激増するからと本当に嫌そうだったし、はてさてどう転ぶかねぇ。
「テリスト様。大変申し訳ありませんが、1度皇都へお送り下さい。早めにサルーン様へ報告すべきです」
うーん。対帝国への権限は持ち合わせているが、対連合への、それも相手が王族となれば話は別か。修復不可能な状態まで叩き潰す前に判断を仰いでおくべきかもしれないな。
「わかった。そっちの報告は頼むわ。適当な時間を見繕って何時もの部屋に繋ぐ。ただ、戦争の真っ最中だからサルーンを引っ張って来るなよ。終わった時点で此方から出向くと伝えてくれ」
「どの時点で終わったと判断されますか?」
「そうだな。帝国軍の無力化。とりあえずはそこまでだ。後は彼方と会談が必要だな【ゲート】」
「了解しました」
早く行かせる為に繋げた転移門を使って移動した。確認が済んだら此方の番だ。改めて挟撃予定のタウラス南門前に転移した。おっと、攻める方角を決めてなかったな。
「勇者が居そうな北は俺が行く。西にカーラとアリサ東にクイン、エレクティアは南の排除が終ったら遊撃だ。中央部で指揮をしてる奴がいる様なら排除よろしく。散開!」
飛んで行く途中、領主館跡地の屋根の上に人が居たがスルーした。人の獲物を横取りは良くないと。唯でさえ南門は手薄だ。エレクティアに丸投げしよう。
着地ついでに勢いを殺す為、最後尾に位置する騎士の背中にドロップキックを食らわせて無事に着陸する事が出来た。そして直後【グルゥアワアアアア!】と咆哮が後方より放たれる。
あ、不味い。魔力を乗せるなと言うのを忘れてたわ……。敵さんから寄って頂く為に移動の阻害は不要だったのだが……。
本日は左手に大太刀、右手に小太刀だ。相手の行動が阻害されているのを良い事に殺り放題である。屋根の上に居る者の大半は麻痺の発生から地面へと落ちたが、一部の者は上がったままだ。そちらは初級魔術の【アロー】系で対処する。
後ろの大部分を殺すとちらほら麻痺から解放された者が出始める。そして……(パン)と乾いた音が後方より響く。コツンと頭の後頭部に当たった感触が……って、俺が撃たれたのかよ! 無傷だが。ま、エレクティアが接近してる最中のようだし丸投げするか。
粗方騎士を殺るとちらほら武器と防具の違う者が混じり始める。ハンターたちだ。其方は完全に無視だ。動いている者も居るようだが、どうも、何が起きたのか把握しきれていない様子で周囲を観察しているらしい。
「ハンターと一般市民! 無理やり運用していた騎士の大半は排除した! 戦争に参加したくなければ町の中央に行け! ただ、志ある者は騎士の排除に協力しろ! 今攻め寄せている者は帝国の圧政から諸君らを解放する為に戦っている! 時は来た! 今こそ反撃だ!」
体が動くようになっている者は真っ先に後方を確認する。本当に騎士の大半が倒されているかいないかをである。言葉が本当であると確信した時の行動は……。
ここまで先導出来れば地上に居る事は不利である。射線を確保する為に上空へと飛翔し、魔術で対処する。外壁上にいる騎士連中を一掃する。民間人は一人として混ざっていないようだ、手加減は無用、これが完了する頃、北門での戦闘行為は止んでいた。
連合の部隊と衝突していた一般市民には、そもそも戦意は無い。後方の混乱と同時に武器を捨て、戦意が無い事をアピールする事であっさりと戦闘は終決した。
こうなると問題はクインの行った東かなと向かってみれば最大サイズに大きくなったクインが何やら取り囲まれてモフモフされている……。この分なら西は確認に行く必要さえあるまいよ。
ちょと失礼するかと【ゲート】を発動して皇宮へと帰還するのだった。




