39:予定は未定
領主館へ1人は無事なまま到着させた。そう、移動先は領主館だ。そして4人目を拘束し、まだ無事な状態で到着したのだった。そして先に到着した騎士が慌てて報告し、その警告から集まったであろう騎士に周囲をぐるりと取り囲まれたのだった。
「そこのハンター、その者を解放しろ! 解放せねばこのまま斬り殺す!」
「事情も知らん奴が何をほざくかと思えば本当に頭が悪いな。頼むから話の出来る奴を呼んでくれないかね」
「クソ、何が言いたいのかは知らんがそいつを放してからだ!」
「言っておくがハンターの決まりを無視して戦争を手伝えとか抜かした挙句、殺そうとして来たから正当防衛で対処してるに過ぎないぞ。それをお前が強引に対処するってのなら、お前らも危害を加える者として対処するが良いんだよな?」
「何をこの非常時に言っている! 緊急であればこそ、その様な決まりなど帝国では覆される!」
うーむ。一般人ならまだしも、対等の関係であり、戦争への強制参加に関しては全く取り決めの無いハンターに強要させるとか、帝国は屑揃いだな。
予定としてはほとんど手を付けずに対処する予定だったが、修正する必要がありそうだな。
「クククッ、アハハハッ。馬鹿がここにも居たよ。大陸中どこへ行ってもハンターとしての取り決めは覆らんよ。お前が適当に誤魔化して覆そうともな。それとも何? 俺と敵対したいわけ?」
俺はハンターから足を洗ったがどうでも良い。そもそも一般市民が強制運用されても問題無いなど馬鹿げた法律があるのならそのまま噛み破るだけだ。
「この非常時に面倒な。抜剣! 厳戒態勢を取れ!」
「はいはい。敵対宣言頂きました。それじゃ死んでくれ」
拘束している奴の腰辺りに指を突っ込み背骨ごと少しずつ握りしめ。頭上に掲げるのだった。
「ギャァアアアアア!」
「魔術を叩き込め! その後切り刻め!」
「双方やめよ!」
突然領主館の方から怒鳴り声の命令を騎士が聞いたかと思えば攻める手を振りかざさずに止まるのだった。そしてその者が俺の元まで通る道を開け。俺と対峙した。
「状況を考えろ! 素手でフルプレートメイルを引き裂く者に貴様らが束になろうと勝てるか!」
「し、しかし。我々がこのまま手をこまねいて何もしない訳には……」
その言葉すら無視して。俺の1歩前まで来るのだった。
「貴様。いや。貴殿は……皇国のテリスト・ファーラル・アーレアルか? (なぜこのような場に、いや。愚問か)」
後半は小さい声だったが丸聞こえだ。
「ほう。俺に気が付くとはなかなかの見識をお持ちだな。で、このまま戦闘するか? 俺はどちらでも良いぞ。手間が省けるだけだ」
「貴殿がその気ならとうに我らは全滅だ。この場では何だ。ついて来てくれ」
流石アリサだ。俺から離れずついて来ている。丁度良いからそのままついて行くか。きっとそのままアリサも侵入してくるだろう。
騎士を地面に落として先導する奴の後を追い、領主館の一室に案内されるのだった。
30分程度か、待たされ入室して来たのは4名だ。いずれも騎士の格好をしているが一人だけ素材が違う。ダマスカスで作成してあり真っ黒のフルプレートメイルだ。
その者が声をかけて来た。
「貴殿がテリストか。時間が経てば殺し合う我々だ。紹介など必要あるまい。何を目的とし来たのだ?」
「いずれ取る上位連中の首を検めに来ただけだ」
「何だと貴様!」
「何だと言われてもな。とっくにお前らの首には紐がまかれているって事を認識するんだな。お前らの旗頭である皇帝一家は拘束済みだぞ」
「そうであろうな。帝都に向かった者から伝令が来ない所を見ると、貴殿らが打倒したのであろう。一つ聞かせてくれ。なぜ貴殿はそれほど帝国を踏みにじる?」
「踏みにじるだと……そもそも踏みにじったのは貴様ら帝国だろうが! 人の命を弄んだ挙句に平気で人を殺す貴様らに、引導を渡すのは当然だろうがボケ! 決めたぞ、今の言葉でな。貴様らの1兵たりとも逃がさん。せいぜいその首を洗って待ってろ!」
「チィ。今の内に殺せ!」
【フライ】を発動してアリサを抱き寄せ【ファイアボール】を館の内壁に叩きつけ、その爆圧を利用して領主館の窓から脱出するのだった。
その光景に周囲にいる騎士が反応して集結して来る。適当な路地裏に着陸して【フライ】を解き気配遮断を発動する。その時にはすでに領主館の壁と天井が吹き飛び。酸素を提供できる良い環境になった事から良く燃えているのだった。石材製なので中身だけだが。
「テリ。気が付いてる? トップが死んだわよ」
「死んだな」
「指揮系統がめちゃめちゃになったわよ」
「うん。壊れたな」
「体型は分からないけど結構な美人さんが居たわよ。殺して良かったの?」
「人を殺して何とも思わない連中の仲間だ。殺すつもりだったから問題無い」
相手方の集まっていた4人の内1人は女性だったのだ。男女差別はよろしくない。敵であればなおさらだ。未成年であれば親の言う事に逆らえずに、言う事を全うしているだけかもしれないが、これには当てはまらず一掃する。
「思わぬ対応で行動方針が決まったからな、長居は無用だ。連合の接触前から乗り込んで食い散らかすぞ。彼方にも少々は手柄を譲るが。ほとんどの功績は頂く事にする。その方が死人は少ないと割り切る事にした」
「はぁ。やっぱりこうなるのよね。予想はしてたけどこれなら来なくても良かったわ」
「はいはい。エレクティアを探すのがちょっと面倒だが。今動いてる様だしさっさと捕まえに行くか。後は楽だしな」
俺の探知能力では、静止しているエレクティアを発見する事は出来ない。動く事で微量ながらも漏れ出る魔力をなんとか拾っているに過ぎないのだ。
起きている間、常時発動しているのでその内追いつく事も考えられるが、当分先になりそうだ。彼方も俺と同等の経験をしているので、下手すれば、スキルレベルがカンストしなければ追いつかない恐れもある。幸いなのは、気配遮断も魔力遮断も、常時使っていないので追いつけるかもしれない希望的観測にすぎないが。
「その前に領主館に集まってるのを排除して行くわよ。一般の人を巻き込まない絶好の機会だから叩きなさい」
「それもそうだな。お言葉に甘えますか」
再度【フライ】を唱えて飛翔し、上空から騎士の固まっている個所にファイアボールを投げ込み一掃して仲間と合流すべく移動を開始した。合流するたびに【ゲート】で城へと送り、最後に自身が転移して全員帰還を果たすのだった。




