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37:

 翌朝。挨拶ついでにキスと胸を揉んで行く。なんて欲望に忠実な生活か! いや、ストレス溜まっている自覚はあるんだけどね。

 今日もエレクティアはグリフォンの背中に抱き着いて寝ているのか。よほど気に入っているらしい。

 本日の予定はアンナの病欠を報告する事と退職……あ、そう言えば聞いてなかったな。退職するかを。

 先ずは朝食だが、ここで食べると匂いが残って、食べられないアンナには酷だとは思うのだが、本人の希望により食卓へと全員で席に着いた。

 そして一般的なシチューとパンの組み合わせの食事にチーズの塊が提供される。勝手に切ってパンにはさんでくれって事だ。そして飲み物には果実100%のジュースだ。アンナには倍に薄めて提供だが。そして食事後。


「アンナも家族になるって事で言葉を崩させてもらおうかな。俺の事はオイと呼ばなければ適当で良いよ」

「またそんな適当に言ってると突拍子も無い呼び方されるわよ。常識知らずとか」

「はぁ。あのね、お願いだから変な二つ名ぽいのを付けないでくれるかね。アリサにもつけるか? テリ専用突っ込み屋とか」

「あながち外れてはいませんね」

「やっぱりそうだよな。カーラも分かってるじゃないか」

「……テリ。あんたは命が惜しくない様ね」


 額に血管を浮き彫りにさせてすごんで来るとか、我が嫁ながら怖いものがあるな。


「はいはい。悪かったって。謝罪させてもらうからそう興奮するな」

「アンナさんの休業届はテリクンが出せば済みますが。退職されるのですよね?」

「はい。皇国で生活になる事は織り込み済みです」

「病欠ってことで説明はするが退職に関してはアンナ本人が伝えるべきだろうからな。半端だろうけど給料も受け取る必要があるし」

「それと引っ越しも必要よね」

「マジックバッグを宛がって俺が連れて行くさ。

 さて、今回は川辺の町の住人が強制運用されている。これを何とかしなきゃならん。そこで上層部を潰して指揮系統をズタズタにするのが今回の目的だ。ただし、下手に遺体を残すと犯人探しに住人が疑われるかもしれん。そこで、クイン以外は回収する方向で頼む。クインは爪を立てて攻撃すれば人間の仕業では無い事がはっきりと分るからそこは気にしなくて良い。概要はこんな所だな」

「ちょっと待ちなさいよテリ。その方法が一番効果の出るタイミングは包囲する寸前よ。今倒したら結束する時間を与えるわ」


 模範解答だな。ただ、彼方は完全に後がない。頭が潰されようと悪あがきするのは止まらんだろうな、止まるなら、皇帝一家が捕らえられたと知ってる現状下ならば、とっくに下ってるはずだ。下る気配さえ見せずに徹底抗戦の構えならば、相当数が死ぬまで戦闘を止めないだろうと想像できる。


「まぁまぁ、理由はある。敵の目前で頭が潰れたとしよう。頭が無くなっても手足は動く訳だ。それも、勝手に動かないと全滅すると分りきっている。俺なら命令無しでも勝手に動く。違うか?」

「……違わくはないわね。だけど人質が沢山いるような状況よ。攻めた時点で勝手に手足は動くんだから対応しようがないわよ」


 それはそうだ。その場で一気に潰すのが最大の防御にもなり得る。指示系統の壊滅が成されれば少しは混乱するはず。これに乗じようか。


「うーん。それじゃこうしようか。主要人物を特定しておこう。余りに酷そうな奴はその場で排除するとして、包囲が完成したら即座に頭を排除。町に住む者を味方につけて反抗作戦ってのはどうだ?」

『ついでに私が龍化して南側を封鎖すれば絶望感が広がるでしょう。そうなれば犠牲者も少なく集結するはずです』

「うむ。その案を貰おうか。南側の門へはエレクティアに任せる。他は内部へ侵入してエレクティアの咆哮に合わせて作戦を決行する。各門に1人ずつと領主館に1人。合計6人で良いな」

「リカには城に残ってもらうとして数はぴったりね」

「あ、あの。テリさんであれば問題無く遂行可能な作戦だと思います。思いますが、お姉さんたちはその、大丈夫なのですか?」


 普通なら疑う所だよねぇ。エレクティアだけは突出して何の躊躇も無く放り込めそうだが。


「ここの面子で一番強いのはエレクティアかね? 次点で俺かな。そしてほとんど同等で強いのがアリサ、カーラ、クイン。少しレベルが下がってヤヨイとリカだな。本気を出すまでも無く1人で軍隊を手玉に取れるから心配要らないよ。

 そうそう、アウローラは参加させない。ブレス1発使わせたら町ごと無くなるが、そんな事望んでないからな。のんびり待ってくれよ」

『キュア!』


「は、はぁ」

「具体的に言うとレベル500をとっくに超えてるから心配無用だ。並の魔術を直接受けても着弾すらしないから化け物だよな」

「その化け物の親玉があんたでしょ」

「違いないな。にゃはははっ! ってか。

 報告ついでに俺が現地の近くに転移場所を確保してくる。それまで待機してくれ。それではな【ゲート】」


____________________________

 テリストが転移して姿を消した後。


「あの。テリさんは何時もあんな調子なのですか?」

「普段は結構ちゃらんぽらんしてるわね」

「そうですね。普段のテリクンは何も気負いも追わずに自由気ままに生きてますね。する事が多すぎて振り回されている感が大きくはありますが」


「ただ。本気になったテリはおっかないわよ。善悪の判断でと言うより。自分に害悪だと判断したら見境なく。それも完全に潰れるまで手を抜かないわ」

「そこまで行くのにも結構な段階がありそうですよね。貴族は皆殺しにすると言ってましたが、結局は善意を見せて頼って来る人には手を差し伸べてますし」

「判断する基準を明確にしてるのですね」

「そこが持論ではあるわね。明確な判断基準を持つ事。これが出来ていれば会話でもぶれることなく対応できるそうよ。そのせいで皇国の貴族の中にはテリを危険視してる人も少なからずいそうね」

「その危険視が実際に行動に移ったとしたら?」

「一族は兎も角。家族は皆殺しにするでしょうね。下手に残すと後に禍根が残り、巻き込まれた場合は余計に死人が増えるとか言いそう。

 今伯爵の位についてる人がテリの判断で城の2階に住んでるわ。3国の会議に出席させる約束をしてるのよ。戦争の切っ掛けになった者の処刑のみで許しを請うとか言ってたけど。仮にそれが皇帝の家族だった場合は突っぱねるわね。生きていれば求心力の旗にはなるもの。絶対に生かす選択はしないわ」


「冷酷って事でしょうか?」

「そうとも言えますがそうとは言えませんよ。将来的に家族へ降りかかる火の粉が発生しそうなら完全に叩くと判断してますね。

 獣王国から皇国へ亡命する決断をした時には国王から命を狙われました。その時は執事やメイド、家族を人質にされる事を一番警戒していました。

 その事は杞憂に終わりましたが、自身に近しい人の為なら自ら手を下す。そう言う事ですね」


「即断即決はテリの良い所ではあるけど欠点でもあるわね。

 行動より論戦ではほぼ負け無しね、其方の方が重要かもしれないわ」

「テリスト様は揚げ足を取りますもの。相手の言った欠点をほじくり返して穴を空け、自身の有利な様に相手を手の上で転がす感じが凄いのです」

「ジアラハルトから出向していたあの人は見ていて哀れでしたね。弱点と思っていた城破壊が長所になって逆に追い詰めたのは見事でしたから」


「テリさんがジアラハルトの城を破壊したと聞き及びましたが、事実だったのですね」

「皇国に亡命してから知りましたね。その時使った魔術は禁術だったと。今も複数の魔術を組み合わせて発動したりしてますから。

 テリクンはエレクティアさんが一番強いと言ってましたが。禁術を駆使すれば誰よりも強いでしょうね。将来的にはアウローラが一番強くなるかもしれませんけども」


「え? この子がですか?」

「誰も鑑定してないから正確な強さは誰も知らないわ。だけど種族が龍王なのは確実なの。成体まで成長すればレベルも相応になるらしいわ。そこまでクラスの高い龍と誰も対峙した事が無いから憶測なのよ。火龍のトップがそう判断を下しているから信憑性は最も高いわ。

 現時点でアウローラが暴れた場合に止める事が出来るのは、テリと婚約してる人だけね。

 大人しくて人懐っこいから誰も心配してないわ」


 そのアウローラはリカに抱き着いて顔をスリスリしているが。寸胴で丸っこいから可愛いのだよ、角もそれほど伸びていないので脅威では無い。


「この場には居ませんけど他にテリクンの婚約者が6名います。その内1名はテリクンの名前にある様に皇国の女帝ですね。

 他には同じく女帝の妹君と獣王国から同じく亡命者が2名。そして火龍族の方が2名です。

 そして紹介するのに省けないのはクインです。一度は命の奪い合いをした女王様でもありますが、テリクンにとっては命の恩人でもあります。なにかにつけべったりですから、下手すれば婚約者よりクインの方が一番テリクンと仲が良いかもしれませんね」


『仲間意識ではないがの。主は主じゃしな。主と出会えたことに感謝しておるのじゃよ』

「え、ええ? 話せたの!?」

『拙者も話せるのでござる。忘れられるのは寂しいのでござるよ』

「ご、ござる!?」

『驚くのがそっちでござるか。それは酷いのでござるよ』


 2体目は新鮮味が無いのだった。


「此処にはいませんが、話せる魔物がもう1体います。今はサルーンさんの使い魔として皇国にいます。元々はテリクンが召喚したのですが、速度特化だったので主を変えたのですよ」

「はっははっ。とんでもない方に求婚しちゃったみたい……」


「口八丁手八丁もそうだけど経済力も半端じゃないわよ。テリだけの資産では無いけど皇国の国家予算の10年分以上は持ってるでしょうね。経済が混乱するだけの資産はあるわ」

「暇つぶしと称して狩りに行けば資産が増えますからね。異世界の知識もあるから商売も始めようと思えば始められますね。本人は手間が増えるから嫌だと言ってますが。使い魔貸し出ししようかとか話してましたし。投資で少しの散財は出来ますが、増えると指摘したらあっさりと手を引きました」

「テリは付与魔法も使えるから、適当に買って来た品に付与すれば魔術の施された魔道具を作り放題で稼ぎ放題なのよ。出会って直ぐに咎めたからする気は無いでしょうが、それだけでも稼ぎ放題よね」

「そもそもですよ。一般常識で考えては駄目な相手です。テリクンだからしょうがないと考えなくては駄目なんです。常識で計ってはだめです。そこだけは注意ですよ」


「は、はぁ」

「テリの事だから近い内に魔物を狩りに行くと思うわ。もちろんアンナを連れてね。レベル100以上には上げると思うわ。家族が危険な目に合うのを避けるように避けるようにと行動するから確実ね」

「ひゃ、100もですか」

「遅かれ早かれ説明すると思いますから今から話す事は内密にですよ。経験取得を大幅に増やせるスキルをお持ちです。どんなに時間が掛かっても1週間かからずに上げると思いますよ」


 テリストの非常識ぶりを説明する面々。主にアリサとカーラがであるが。それから程なくテリストが迎えに来た事から、タウラスの町から南方に位置する街道沿いの森に転移したのだった。

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