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36:失敗

 雑談は就寝する部屋でしていた。勿論ベッドを収納して場を整えた上でだ。なんて事は無い、アンナの容体を考えて傍に居る方が安心だろうとの判断だ。


「こ、此処は……」

「お目覚めみたいだなアンナ。体調はどうだ? まだお腹が痛むか?」

「そういえば痛くない、です」

「無事治療も完了って所だな。経過観察しなきゃならないのもあるが、そうだな、食事は明後日夕方から消化しやすいのを食べて良いぞ。それまで酒禁止で水分のみの摂取に制限してもらう。良いな?」


 切開部分すら完全に治療が済んでるから経過観察は不要だと思うが念の為だ。安全に配慮する事は当然だろう。何せド素人が執刀したのだし。


「はい。あ、あの。助けて頂いてありがとうございます」

「いやいや。困ってたらお互い様だ。職場には明日出向いて俺から説明しておくよ。養生すると良い。そうそう書類は受け取ったよ。ありがとう」

「はい。それよりもテリスト様は不治の病の治療法を知っておいでだったのですね」

「俺の元居た国では治療方法が確立されててな。身近に発症した人物がいて話を聞いてたんだ。初執刀だったがうまく行って良かった」


 何でも聞いておくとためになる事もあるものだな。中には、女性看護師の方に除毛された事を羨ましがる者も居たが、本人は痛みでそんな事考える余裕は無かったらしい。


「それでその。色々と踏まえて考えての話ですが。テリスト様に嫁ぎたく思います」

「は?」


 今、俺と結婚と言ったよな……確かに命の恩人だが。だからと言って即決するか普通?


「ですから。テリスト様に求婚申し上げます。その、私の毛も剃り、あそこも見ましたよね。他の方に嫁げません!」


 なんじゃそりゃ! 治療するのに必須だろ。そもそも感染予防の為に剃ったのであって他意はない。医療行為の一貫を貞操概念と一緒くたにしてどうするよ!

 そもそも、貞操概念強いのなこっちの人たちって。嫁さんと同様の扱いをしたココアの例を上げればそうなのかもしれないが……。


「もう少し冷静になってくれないかね。そもそもだ。医療行為に必須事項だから仕方なしだったんだぞ。対策を怠れば、また別の病に侵される危険がある。その為に必要だた行為だぞ、一緒くたに考えるな」

「確かにそうだと思いますが、それとこれとは別です。責任を取って下さい」


 理不尽だろ! それじゃ医者は嫁さんが際限なく増えるぞ。あんまりだろ。


「な、それってさ。医療行為をしてる奴って嫁さんが際限なく増えるよな。こっちの常識じゃどうなのよ」

「テリ。此方の医療行為は問診だけで鑑定に添った薬を調合して渡すの。下半身をむき出しにして体を切り開く行為はしないのよ」


 ん? 切開手術無し?


「ちょっと待て、病巣を切り取って治療をしないのか?」

「そうよ。不治の病の様に聞こえるけど。仙丹やエリクサーと言った霊薬なら治るもの。切り開かなくてもね」


 は? いやいや。切らなきゃどうにもならんのが霊薬とやらで1発で治るのかよ!


「あ、あの。テリスト様のご出身は獣王国なのでは? 獣王国でも切り開いて治療する方法は確立されていなかったと思います。どちらのご出身なのですか?」


 い、いかん。取り繕うつもりで言った言葉に地雷が……。挽回は……不可能みたいだな。何やってるんだ抜け策だなとでも言うような目つきで見られている。やらかしちゃたよ……。


「さ、さてなぁ。何処の国だろ。記憶にございませんですよ。なっはははっ!」

「テリ。無茶な事言ってる自覚はあるんでしょうね?」

「テリクン痛すぎです。本当の事を言ってはどうですか?」

「そこ! それを言ったらばれるだろ! あっ……」

『突っ込みが盛大な自爆になりましたね』


 結局は説明する事になり、ついで、口止めの必要性から嫁に迎えることになったのだ。なし崩し的に。


「うーん。俺が動くと敵は増えるわ、嫁さん増えるわで何かしらトラブルになるよな」

「そうね会議に出れば貴族が降格するし。その前は処刑になったわね」

「だよな。俺って引きこもり生活推進って事かね。明日からの帝国対策は全部任せるわ。俺は城に籠ってお留守番しとく」


 そう。全く動かなければトラブルは舞い込まないはずだ。やっぱりハンター稼業程度をのんびりとしながら、程度に生きて行くのが一番だよな。その方がトラブル少なそうだし。


「トラブルになっても助けてあげるから前に出なさいよ。それが家長の務めってもんでしょ」

「1つ訂正しろ。家長はサルーンだ。俺じゃ無い」

「はいはい。それはサルーンさんが相手の場合だけでしょ。他は全員テリの家名を受け取るんだから、そんな説明は通用しないわよ」

「理不尽だ!」

「どんなに言っても変わらないわよ。アンナの事はリカに任せてあんたは最前線よ」


 そうなんだよね。タダでさえ手が少ないのに一人抜けるとたちどころに仕事が増える。それを踏まえれば俺が外れれる選択肢は皆無だ。


「それも面倒だよな。いっそ町ごと吹き飛ばすのなら10秒も掛からんのに、ちまちまちまちま本当に面倒だ」

「そんな事言ってるけどテリの事だから罪も無い人を見殺しになんてしないでしょ」

「だから面倒なんだよ。ちょっとカーラ、こっちに来てくれ」


 今の俺には癒しが必要だ。此方に来てと手招きする。


「直ぐに寝るんだから落ち着きなさいよテリ」

「あ、あの。いつもこんな調子なのですか?」

「事あるごとに頻繁にこうなるわね」

「はぁ」

「適当な事を言うから納得しちゃったじゃないか。何時もじゃないに決まってるだろ」

『確かに何時もじゃないですね。数日間隔位かしら?』

「うむ。数日間隔程度だな。さてさて。病人がいる事だしさっさと寝るわ。ちょっと退いてくれ。場を整えるから」


 ヤヨイとリカは脱がずにパジャマ代わりの服へ着替えるがその他は全員が素っ裸になって寝るのに絶句しているようだ。何より。俺がカーラと寝るのに目を見開いてみていた。

 カーラには俺に背中を預ける形で寝てもらい。俺が後ろから抱きしめて寝るのだった。


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