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34:

 昨晩は帝都を無人には出来ないと、就寝直前に城へと戻り寝たのだった。

 次は何時帰還するのか予定に無いため、グリフォンのグリちゃんも帝都へと連れて来ている。部屋は火を付与した短剣を暖炉に投げ込んでいて熱い位だが。外を見れば雪は止んでおり一面銀世界に覆われている。辛うじて家屋の壁が白くないだけだ。


「これは連合の方も歩みが鈍りそうだな。雪解けを待って春に再度攻めたりって事は無いよな?」

「無いと思うわよ。連合の方が北よりでもっと寒いもの、雪には慣れているはずよ。それより雪に慣れていない南部に張り付いていた帝国軍が不利ね」


なるほど。魔人族の国境付近には雪が降らないか、もしくは降っても積らないのだろうな。


「アリサの言う事も尤もか。雪深くなる前に、北方面から順番に潰して行きますかねぇ。所で、小さい町に魔物ハンターギルドと商業ギルドってあるのか?」

「地図にあった町はある様ね。それより規模の小さい村になると男爵辺りの貴族が統治に当たるからギルドは無いわ」


 常時雇用の職員さんを雇う余力はないか。兼任してると考える方が良いかもしれないな。それよりも、両ギルド共にあるのならば好都合だ。通達するのみで、厄介な強制もせずに済む。


「なるほど。さてと、帝都の南を1つ落として来ますかね。山越えした先だけど」

「待って下さいテリスト。昨日召喚魔方陣を調べましたが、そのまま破壊するには膨大な魔力が込められていて暴発の危険性が高いです。そのまま放置も出来ないから何とか霧散させて二度と使えない様に出来ないかな?」


 準備をしているであろうことは知っていたが。こっちはこっちで魔石に貯め込む方法じゃなくて魔方陣そのものに貯め込む手法なのか。下手に魔物が入り込むと強制クラスアップしそうで怖いな。アウローラならそのキャパから難なく吸収しそうではあるが。そんな事させられないし、俺がマナドレインで吸収しながら何かに浪費するのが一番安全かな。

 新雪だと移動が大変そうだし、俺も現地視察と参りますかね。


「よし。予定変更だ。俺が拡散させるまでエレクティア、クイン、アウローラ、グリちゃんは近くに寄らない様にな。下手に吸収して強制ランクアップの可能性があるからそれは避けたい。

 雪は初めてだろ。遊ぶも良し落とした町の警備するもよし自由にしてくれ。その他の皆もだ。

 冬用の服が必要なら買いに行って来ても良いぞ、エレクティアには悪いがな」


 そう、エレクティアだけは特注品が必要な事からハイどうぞとはいかない所が何とも申し訳ない。


『それなら仕方がないわね。安全圏にまで達したと判断したら破壊する前に見せなさいよ。私も興味があるんだから』

「了解。流石に1日張り付いてマナドレインを使うのは流石に厳しいからな。数日に分けると思う。一応確認に行って1つの町を解放、そして戻って来てから魔力の解放をしようと思う。流石に今の状態だと全然消費してないから避けたい」

「そこはテリが無理しない程度で良いわよ。それより朝食にしましょ」


 食事を済ませて1階のエントランスに行き、二階へ上る階段の後ろに隠し通路がある。そこを抜け、城の裏手へと行けば、件の召喚魔方陣が設置された神殿がある。

 外周を太い柱で支えている事から、ギリシャにあるパルテノン神殿に近いだろうか。召喚時や死んだと思っていた時まで気にもしていなかったが結界が張られている。まったく周囲へ魔力を逃がさない様にする為の霊的の結界らしく、物理系、この場合は移動に制限などは無く侵入できた。


「うーん。これはMP数十万では収まらないかもな。MP吸収を全力で行使したとしても1時間2万程度が限度だろ。何日掛かるか考えるとうんざりするな。これって自然放出するように結界解いたら不味いのかね?」

「テリ。隷属の首輪が千切れ飛んだと言ってたでしょ。これだけの魔力が一気に漏れ出たら建物が吹き飛ぶわよ」


 結界そのものに干渉して使用MPを奪い取れば徐々に結界を薄く出来るとは思うが。薄くなった事で一気に破損したらやっぱり吹き飛ぶ可能性が高いか。

 例の魔方陣を取り出して魔石大に吸収させるって手もあるかも知れないが、取り出した瞬間に吸収して中央部に集まる事から、下手すると余計に不味くなる可能性があるか……。厄介だなぁ。地道に術として使用減少させなきゃ無理か。


「薄くなって即吹っ飛ぶ可能性がありそうだな。仕方ないか、地道に放出するわ」


 確認も出来た事だし出かける事にする。今日は帝都の南方にある一大農業産地の集約地だと商業ギルドで聞いた。奪いはしないが、商人に圧力を掛けて買い叩く奴がいそうだ。そこらにも気を付けて行くか。

 そんな訳で向かったのだが……。俺たちの事を聞きつけていたのだろう。騎士もおらず衛兵もおらず、町の治安を守る者が誰一人としておらず、そのトップである貴族さえ逃げ出した後だったのだ。

 領主館には値の張る様な品は何一つとして残っておらず、あっても生活雑貨の品で何処に行っても購入可能な物ばかりだ。

 国旗を挿げ替えて両ギルドへの用事を済ませると【ゲート】でさっさと帝都の城へと戻ったのだった。


 MPの浪費をしなければならないが魔物を捕まえて来てひたすら【ハイヒール】を掛けるのも芸が無い。と言うよりも消費が少なすぎて話にならない。

 生活魔法で火を出す水を出す風を吹かせるだと公害になりそうだ。

 ここはあれの出番でしょう! 外で上空へ向かって【フォースジャベリン】を盛大にぶっ放してMPを大量に消費。神殿内部で【マナドレイン】で一気に吸収。そしてまた外へを延々繰り返すのだった。


 そしてまだ日がある頃、アルフォンスが俺に会いに来ているとアリサが呼びに来たのだった。

 案内されている部屋へガチャっといきなり入るのは不作法だ。一応ノックをし、入室して挨拶を交わす。

 対面に座るとカーラから茶を振舞われた。アルフォンスには既に提供されているが、温くなってるのでは? と、取り変えられた。


「遠い所よく来てくれた。それで、今日赴いて来たのは何用だ?」


 グリちゃんに乗っていた事から、隠れてコソコソ情報集めが得意なタイプかと思っていたが、帝国軍の前線を突破して来たことから、アルフォンスも【フライ】が使えるであろうことが窺える。一応は助けずとも墜落死は避けられたのかと今更だが考えた。


「帝国軍を挟撃する為に参戦を要請に参りました。此方、要望書となります」


 一応此方が振っていた話ではあるが。此方にこれ以上の功績を与えて良いのかねぇ。ま、良いと考えてるからこそ要請に来てるのであろうが。

 蝋封された手紙を受け取り、開封して確認した。

 川を利用した要害の地を拠点にされ攻めあぐねているとの事だ。そこで、南側からも攻めてほしいとの要請であった。


「なるほどね。戦後の不利を承知で要請に来た。そう解釈して良いんだよな?」

「その通りです。タウラスの町を攻めあぐねいております。あの地は北からの攻撃にはめっぽう強く、川に掛かる跳ね橋操作を握っている事から容易ではありません。

 それに、住人を強制重用しているらしく前面に出して来るのです」


 町の立地は兎も角なんていう戦法だったかな。確か弱兵を前面にだして、後ろに引く様なら古参の兵士が後ろから攻撃を仕掛ける。これを避ける為には前に進んで敵を討ち破る他ない。

 兵の練度を誤魔化す為の兵法だった気がするが、やっている事は捨て駒扱いにして相手の疲弊を誘う事だったか? 腐ってる腐ってると思っていたが、まさかここまで腐ってるとはねぇ。


「また最悪な作戦取ってるな。要は捨て駒扱いしてるって事だろ。正面から俺たちが攻め入った場合、相手にするのは一般人ってか」

「テリの事だから。内部に入って食い散らかすつもりでしょ?」


 それが最善策だろうな。此方の位置を正確に把握可能な者が居ない限り遣り放題だ。あてずっぽうで広範囲魔術を使われようとも着弾しないので相手にもならない訳だが。

 今回の場合は後ろに控えているであろう正規軍を直接狙えることから、中から食い破る作戦が一番お手頃だ。市民の死傷者を激減させる最高の手でもある。ただ、詳細は煮詰める必要がありそうだ。


「それもだが逃がさないと不味いんじゃないか? 結局は頭を潰しても、下っ端にまで命令が行き渡ってたら暴走するだけだぞ」

「行き当たりばったりでその都度対処する他ないでしょ。そうよね?」

「確かにな。受けなきゃ被害が甚大か。明日さっそく乗り込んで内から食い破るとして、アウローラを連れて行くのは不味いな。グリちゃん、お前も留守番だ。それとリカもだな」


 グリフォンは目立つ上に気配遮断を使えない様子、連れて行けば即ばれるので除外だ。アウローラとリカは言わずもがな、だな。


「お受け下さり有難うございます。実を申しますと。もう一つ厄介事がありまして、例の長距離攻撃で、かなり離れた場所に陣を敷かなければならないのです。不用意に近づけば即死する始末でして、其方の処理もお願いしたいのです」


 対策は出来る様な事を言ってたがどうしたんだ?


「対処法があっただろ? 効果が無かったのか?」

「攻撃者が高い位置に居る為に後ろが狙われたのです。だからと言って全員に装備させる重装備が無く。対処法が……」


 射線の確保が容易か。遮蔽物が前線の重装部部隊ではな。そもそも魔術戦も想定しなきゃならんのに、密集陣形は非常に不味い。範囲魔術を撃ち込んで下さいとアピールする様なものだ。それでは目も当てられない惨状になる事が分かりきっている。よって、相手の射線を塞ぐ行為が取れにくいと言う事だ。


「なるほどな。乗り込んだ際に判別がつく様なら潰すなり、強制運用されてるのであれば逃がしておく」


 一旦話し合いが終ったかに見えたが、何やら思いつめた表情で言って来た。


「こんな事を言うのは本当に失礼な話ですが。どうかクロサスを助命するように掛け合っては頂けませんか?」


 いうに事欠いてそれか。馬鹿やらかした奴を助命する理由も無いが。2国が判断を下した事に対する内政干渉してくれって流石に酷いだろ。


「断言する。はっきり言って無理だな」

「どうしても、でしょうか?」

「内政干渉するつもりは無いぞ。処刑しなければ国の対面が保てないと2国の国王が判断を下してるんだ。いかなサルーンでも絶対に掛け合う事は無いと断言できる。

 相手の面子を潰す事になるとわかってて言ってるか? 相手の面子を潰すって事は、皇国も泥をかぶる必要が出るって事だぞ。国の体面を汚す行為だと理解しての要請なら、お前にもそれ相応の対応が必要になって来るぞ。どうなんだ?」

「申し訳ありません。今のは聞かなかった事にして下さい」


 この事はどうでも良いが。彼方は既に町に張り付いてる状況か。挟撃するのは何時か予想してるのか?


「まあいいか。それより肝心な事が抜けてるぞ。挟撃するにあたり、予定日は何日後だ?」

「……東西南北全ての方角で包囲する予定です。予定交戦日時は4日後の昼あたりです」


 川に掛かる跳ね橋と言ってたよな。左右からも襲えるように下流と上流から渡って包囲に参加させるのか。包囲殲滅するには良い手だが、市民が駆り立てられているなら皆殺しになるか……。


「了解だ。その前に侵入して上の頭は潰しておく。連携が乱れればめっけものだと思ってくれ」

「はい」


「さてと、返答をしたためる必要があるな。少し待っててくれ」


 要請にしたがい宣戦する旨を書き、ついで予定日と攻める町の名称をもいれた文章を書く。そして最後に署名捺印で終わりだ。

 ただし。偽造されない様に同じものを作成して割り印を押しておく。

 若干顔色が悪い様だが、何か不備でもあるのかね? ま、穴のない返答書を作成出来た事から、相手に不利益が被ろうと知った事では無い。何の不備かは分からないが。


「さて。そろそろ良い時間だし、夕食にでもしようか。泊って行くだろ?」

「い、いえ。私は宿屋を既に確保してきております」


((コンコンコン)テリスト殿おられるか?)


 おや? 2階から上の階には来ようともしなかったが、玄関先に人が居るようだ。お客が来た事を教えに来てくれたのか。


「入ってくれカロン殿」

 失礼すると入室してきた。

「何でも乗合馬車で、貴殿に会いに来ている女性がいるそうです。ですが……直接お会いした方がよろしかろう。状態が状態でしてな。城の前まで送って頂いてる様だ」


 俺に断らずとも連れて来ればいいものを、害意がある者が入り込もうと対処は容易だ。気にせず連れて来てほしかったが、言い淀んでいたし何か事情でもあるのか?


「カロン殿はお会いしたようだな。連れて来ればよかったのに」

「だからですぞ。直接状態を見た方がよろしい」


 動けない状態と考えたが良いのかもしれないな。


「わかった。とりあえずは行く方が早いだろう」


 何事だと全員で階下へ、玄関前まで来ている乗合馬車まで行くのだった。


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