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【火の従事者】と名乗る6人の男性のみのPTが戻って来たのはそれからしばらく経ってからであった。その時すでにアンナは受付へと戻ってきており、彼らの報告待ちの状態だったのだ。
報告はギルドマスターの部屋でとなった。二度手間になるからだ。
アンナの先導の元、6人含めた8人でギルドマスター専用に宛がわれている部屋へと入室するのだった。
「(コンコンコン)ヴァロン様、テリスト様と調査に赴きました【火の従事者】の方々をお連れしました」
(お入り頂け)
アンナが扉を開け、道を譲ってくれた、先に行けという事らしい。此方へどうぞと席を進められ、テーブルを挟んだ対面に結構な齢であろう男性が座るのだった。
アンナはギルドマスターの斜め後ろへ、【火の従事者】はテーブルの横へ並んで立っている。
「緊急でお会いして頂き感謝申し上げます。この度、皇国の遠征軍で副団長の地位を頂いております。テリスト・ファーラル・アーレアルです。以後良しなに」
「ご丁寧なごあいさつ痛み入りますな。ステーツの魔物ハンターギルドの長を務めておりますヴァロンと申しますじゃ。
して、ファルスよ。領主館はどうであった?」
「……何と表現して宜しいのか分かりかねますが、鋭い斬撃を受け死んだものや、相当な高温に炙られ地形すら変わっている印象です。
その上で、建物を含めて全てが凍り付いております」
「……? 聞き間違いかの。もう一度説明してくれんか?」
「ですから。最終的に建物ごと凍り付いております」
要領を得ないな、ここは本人が居る事だし、俺が何をしたのか説明する方が早そうだ。
「俺から順番を説明した方が早いかな。切り刻んだのは【ウインドスラッシュ】の強化版だ。次に【アイシクルランサー』と【ライトニングバースト】を手前に居た連中に放って、後方遮断の為に【ロックフォール】を使った。
それでも逃げ出そうとしたから【フレイムウォール】を使ったんだが威力があり過ぎてな。溶岩地帯が出来たから冷やす為に【ブリザード】を使ってあのざまだ」
多分に引きつってる事から理解したのだろう、何よりだ。
「聞いた事のない魔術が含まれますが、まあ宜しいな。テリスト様と伯爵一派の戦闘があった事は確実じゃて。その件に関しては戦争であるからして何も言う事はありませんのじゃ。
それで。如何ようでお越しになられたのです?」
やっと本題へ移れるな。ここの税収次第だが、ある程度資金を渡しておく方が後の手間が省けて良いか。わたすほうこうで調整しよう。
「俺たちには治安維持にかける戦力が全く無いのですよ。なにせ10人も来てませんから。そこでですよ。町の巡回警備をハンターたちに任せたい。発注可能ですか?」
現在は冬で、長期間外へ出る魔物討伐には不向きな季節だ。それでも帝都へ食料の運搬を欠かす事は出来ず、その為に護衛の依頼はあるが、採取などの仕事は有るはずも無かった。
その為に手持無沙汰の者が多く、食費をケチる為にも冒険者ギルドへ集まっている次第だった。
「不可能ではありませんな。ただ、町全体となりますと相当な金額になるのじゃが、大丈夫ですかの?」
「政権が空白ですからね。税金を全て宛がって下さい。足りなければそうですね……これでも売却して当てて下さい」
今は寒いから丁度良いだろとばかりに、氷属性の下級竜の外皮を1枚取り出してテーブルの上に置いた。
「こ、これは……」
「皇国で扱っている最高クラスの皮系防具の素材ですね。今着てる俺の防具の素材でもあります。白金板出さないと買えない品ですから。予算として考えたらこれ1枚分で十分でしょう」
フリーサイズで作ったとしても、2名分は作れる。手数料を抜いたとしても、相当に利益は有る。統治が開始されるまでの間、発注代金としてならば余裕で足りるだろう。
「白金板……、い、いえ。高額過ぎですぞ。どうかお引き取りを」
サルーンも絶句していたが、余裕のある資金提供で顔を引きつらせるとはなぁ。やっぱりほどほどじゃないと駄目っぽいな。
「うーん、高くて困る事は無いと思いますが……それじゃランクは落ちますがこれにしましょうか」
外皮は収納して金塊を提示した。
「金だがインゴットではありません。ゴールドゴーレムのドロップ品です。これならそうですね、さっきのと比べたら半額程度ですかね? たぶん。これを売却した事にして資金にして下さい」
「あ、あの。高すぎるのじゃが。良いのじゃろうか……」
「良いも何も所有者が提供してるんだから問題無いですよ。仕事の発注者はどうしましょうか。俺が一筆書いて誰が仕事を頼んだのかはっきりさせておいた方が良いですかね?」
「そうですな。アンナ、代金は金塊の重さを計量して書いておくのじゃぞ。そう言う事ですじゃ。アンナ頼むのじゃ」
「承りましたマスター。それではテリスト様。必要事項に御記入いただきますので1階へ向かいましょう」
「おーそうじゃった。遺体などはどうされますかな? こちらで処理の仕事を発注されますかな?」
戦後の事後処理などをさせたくは無いのだが。この冬真っただ中では仕事が限られるし、そう言う意味では高額の報酬を宛がって処理してもらうのも吝かでは無い。俺の手間が激減するから良いことづくめでもあるしな。
「そうですね。奴らの資産も必要無いと言えば必要無いか。奴らの資金面の書類だけこっちに引き渡してもらいますかね。
そういう訳で領主館の中身もついでに全部処理してくれると助かります。1つ注意してほしいのは暖炉に短剣を放り込んであります。
火の魔術を永久付与してますから火傷に注意するように、火傷しましたと言われても治療しませんから」
「では同じく請け負いましょうぞ。代金は相殺させて頂き、残りは帝都までお持ちします」
「いやいや必要無いです。それも発注代金に足しておいてもらえれば良いですよ。書面だけは受けとるって事にしておきますか。そのうち来ますから保管をよろしくお願いしますね」
「さ、左様ですか」
金塊は一抱えあるので流石に重すぎる。一抱えあるので何kgだろうか。たぶん200kgはオーバーしていると思われる。
流石に持って降りてもらうのは酷である。もちろん受付まで運び込んであげ、鍛冶スキルを使用して小分けにして渡したのだった。
依頼内容から依頼者、代金まで事細かに書き上げ捺印するのだが、指輪印章にインクを塗って印を押すのは不作法らしく、蝋を熱して柔らかくし、それを羊皮紙に張り付けて印を押すのが正式らしい。
俺の立場ではそれが普通らしい。なにせ雑に扱えば蝋である為に割れたりはがれたりするのだ。よって、破損しない様に気を付けて扱う事から上級者であればあるほどこの手法だそうだ。
1つ勉強したって事でお礼を伝え、魔物ハンターギルドを後にするのだった。
適当な裏路地へ入り込み、人から見られない時点で【ゲート】を発動して帝都の城へ戻ると、どうやら他の2組は活動が無理だったらしく、既に帰還していた。
視界が悪い中で、尚且つ天候が悪い中で活動する者はそれほどおらず、治安維持活動するのも敵を排除するのも宜しくないと判断したようだ。
特に後者は打ち漏らしがあれば排除すべき騎士や衛兵が残る事から、天候の回復を待つ方が良いと判断したとの事だった。
俺の場合には領地運営の貴族を利用した事からうまくいっただけだったようだ。




