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29:戻って来た者たち

 皇宮の寛ぎの間の様に整えた、帝国の城の一室に転移していた。クインも子猫サイズになりソファーの片隅で丸まっていた。毛布を寝室から持ち込み潜っているようだ。

流石に礼服は不味い、って事で早速着替えたのだった。特段戦闘へ出かける予定もない為に、久々に普段着だ。10歳から18歳へと時空魔術で強引に引き上げたことから、下着と共に買った品だ。

 着替え終わるとクインの横へ座る。何故かアリサが横座り気味に俺の膝へ腰かけ、他は各々好きな場所へと座るのだった。

 ぴょこっと顔だけ出してクインが早速訪ねて来る。


『以外に早かったのじゃな。会議は終わったのかの?』

「テリが一方的に終わらせたのよ。帝都を副都とするところまでは何時もの通りに決まったのよね。さて誰を代官にするのかって所で選択できない事態になったのよ。

 その原因を作った貴族と大いに揉めて。結局は統治能力なしと判断したから今後は個人で動く事になったわ」


そうそう何時もの通りにね。揉めたって事だ。


「個人で動く以外に選択肢が無くなったのは俺が内政干渉しないと言ってたからだな。結局は戦争も外交手段の1つな訳だ。だったら皇国所属で動けないって話になる。

 その事を指摘されたんで、あえてその指摘に乗ってみた」


 今後は個人、いや、家族で動く事になる。一部業務委託と言えば良いか、皇帝一家の管理だけは丸投げ状態だ。


「テリクンの事ですから、相手の言葉を良いように解釈して利用したと思いました。しかし良かったのですか? 多大に皇国の利益を削ってしまいますが」


 国の利益は微増だろう。今回の代金を少しは支払うからだ。ただ、利益を削るってのは言って欲しく無いな。そもそも動いてるのは俺たちだけだし。

 土地を確保すれば最初は投資が必要だ。特に教育は手を抜けない問題、先行投資が実るのは何年先になる事やら。

 ただ、今回は交渉で丸投げする。個人資産は膨大に増えるんだよな。唯でさえ使い切れないのに、更に増やすとか、何に使うかボチボチ検証も必要だなぁ。


「それは当然の指摘だな。奴が一般の者を代官にする案を飲みさえすればこんな強硬策に出る必要は無かったのが実情だぞ。

 そもそもあの場はサルーンが一喝してでも強制的に決めなきゃ収まらない場面だ。なんせ選定可能な者が1人も居ないんだから他に舵の切りようが無いからな。サルーンの不手際でもある」


 権力が一点集中しているのだから少々の事は強引に進めるべきだった。今回は特にそうだ。貴族が副都の頂点に就けるはずも無く、その点を強調してごり押しすれば今の結果にはなっていない。

 結果からすれば、サルーンの思惑になったと思えば、少しは成果だったのかもなと思えた。

 

『また盛大に揉めて来たのじゃな。かなり先走ってる感じもするの』

「良く分かってるじゃないかクイン。それでこそ相棒だ」

『皇帝の譲渡は兎も角、それで。今後はどう動くのです?』


 そうだな。北へ向かってる連中の扱い。南部の平定と安定が課題だが、安定に関しては魔物ハンターギルドに丸投げするしか手が無いな。後は実行部隊とは別に編制してあちこち見て回る程度か。


「順当に進めば連合の方は明日辺り騎馬隊と戦闘おっぱじめる頃だろ。平原で真正面から迎え撃つなら騎馬が有利だが、やりようによっては騎馬の方が不利だからな。魔術が得意な者に壁魔術を使わせれば速度の速さが仇となる。

 その事を思いつく人物が連合に居るなら打って出るだろうな、その確認をしたい所だが却下だ」


 そんな余裕が無いからな。町の解放も必要だが、治安維持の面で考えれば体がいくつあっても足りない。


「だったら話さずにこっちの予定を言いなさいよ」

「ヤヨイとリカは残ってくれ。召喚魔方陣を調べたいんだろ?」

「そうです。だから付いて来ました。まだ破壊はしてませんよね?」

「確認もしてないから手付かずだ。好きにしててくれ。城から出る際は1人は残る様にな。何かあればこちらへ伝令を送って来るだろうから」

「わかりました」

「で、残りは排除した町の安定化と残りの攻略とに分かれる。明日はこの行動方針だが。明後日から、これに加えて北へ向かった部隊も監視する。そっちは俺の仕事だな。

 連合と戦闘をおっぱじめたら手助けするつもりだ。影ながらな」

「気配消して帝国軍部の指揮系統をズタズタにするつもりでしょ。バレバレよ」


 指揮系統の寸断は実働部隊に大いに影響を与える。安全な位置から戦場を把握し、最適な軍令を出さなければ被害拡大に繋がりかねない。そう言う意味では司令部の壊滅は全滅に直結する。


「うむ。遺体は放置する方向でな。そうすれば暗殺者なりが潜り込んでると勘違いしてお互い信用できなくなるだろ。ついでに食料もぶんどれば追い打ち倍増ってな。

 連中、数の不利を籠城で補うだろ。そこを利用する」


 籠城はメリットとデメリットの塊だ。利点が欠点となる様に弱点を突けばあっさりと崩壊する。その筆頭が食糧問題だ。周囲の村から納入が滞り、打って出る以外に選択肢が無くなる。食い物が無きゃ短期決戦に打って出る以外の選択肢が取れない。長期籠城が不可能になるからな。そうなれば待ち伏せするほうが有利となる。狭い門から打って出るのも人数に限度が出る。そこへ集中して弓なり魔術なり叩き込めば出てくる順に倒せる。


「はぁ、ある意味災厄よね。テリを敵に回した事が」

「ま。叩けるときには徹底的に叩かないと死にかねないって散々実体験したからな。帝都にいる騎士連中は鳴りを潜めているが。手を考えなきゃならんな」

「おいおいで良いですよテリクン。それより寒いです。暖炉に薪を焼べましょうか」


 よくよく外を見れば天候が荒れている。吹雪とまではいかずとも雪が降っているのだった。

 氷抵抗スキルはあるものの。寒いものは寒い。低体温や凍傷とは無縁だがその代りにHPが削られる。単に我慢の問題なのだ。

 此方へ召喚されて初雪か。皮肉かな、強制召喚した国を攻め滅ぼしに来て初体験とは……。

 そんな事を考えながら適当な短剣に【エターナルエンチャント/ファイアブレードLv1】 鞘に【エターナルエンチャント/火抵抗Lv2】を付与した物をカーラにほおって渡した。薪の代わりだ、空気の汚れないクリーンな暖房器具。それも、破損しない限り永久に使用可能なのでかなりのエコだ。



_____________________________


 時は遡る。

 帝国軍はエレクティアの咆哮による伝達で帝都が落ちたと見るや、最後尾に位置する隊は救助すべく、すぐさま帝都へ取って返すのだった。

 その際に伝令の早馬を他の隊へ寄越す事も当然忘れはしない。

 それでは数が少ないと見るや、全部で3部隊が南下し始めたのだった。

 そして夕刻、それぞれの部隊長が顔を突き合わせて協議した結果、そのまま奪回作戦として力押しすれば皇帝の命が危うい。そこで考えられた策は、民間人に扮し、城を急襲するというものであった。当然戦力が集中していると思われる事から。大部分は外から引き付ける役割を担う事となる。

 作戦の成否に関わらず、連合への追撃部隊へ後程連絡を寄越すとの伝令を放ったのは言うまでもないが、これが裏目に出てしまった。そう、追撃部隊からの伝令を飛ばさなくとも良いと判断したのだ。

 民間人として紛れ込ませる部隊を送り込む前にテリスト1人による急襲を受け1人残らず、それこそ伝令すら残らずに殺害されてしまったのだ。

 これにより、追撃部隊へ帝都の情報は伝わらず、そのまま連合対策のみへ人員を配置する事になる。


 帝都から北へ行く事8日余りの場所に要害の地がある。東にあるタウラス連峰より流れる川を利用したタウラスの町だ。

 以前は通常の橋であったが。周囲の国から警戒されている事から、新たに跳ね橋を建築し、依存の橋を取り壊したのだ。この橋を迂回すれば数日間、更に東西へと行かなければならない。帝都を攻める者としては最短距離に当たる為避けたくは無いのだ。

 先に辿り着いた帝国軍騎馬隊は早速籠城出来るようにとすぐさま行動を開始する。

 住民を総動員して武器になる物を集めたのだ。当然、無理やり戦力として数えられた。そして食料も押さえ配給制へと切り替えられた。

 その3日後、後続の歩兵部隊が合流する事となる。


_____________________________


 連合軍はテリストとの接触から2日後に南下を開始。その時既にカーラの許可を得て地図を見たアルフォンスの情報からタウラスの町は攻略せずに2万の兵を張り付け、他の2万の兵を二手に分かれさせ、それぞれ東西へと進ませるのだった。

 それも相手へ気取られる前に隊を分けて移動した事から帝国軍の大半はタウラスの町で防備に当たる事となった。


 跳ね橋操作による帝国軍に攻められる連合であったが、橋の幅はせいぜいが馬車2台がギリギリ通れるほどだ。良い的になる。1度の試みで被害は甚大だと判断された。

 そこで逆に、跳ね橋を降ろし、攻めて良いですよと挑発を繰り返すも、不利である事から挑発には応じず。暗闇に紛れて外壁へ向け、魔術を放つだけで様子を見る連合だった。

 連合の作戦はこうだ。タウラスに主力部隊を張り付け、東西からの挟み撃ちする。

 そして南方からは、皇国に協力要請を打診し、全方位を取り囲む形で殲滅する作戦だった。

 その使者が、テリストが皇都より戻り、3日後に到着した。

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