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28;閑話、残され者

 残った者たちは何とも言えない空間に取り残されていた。

 テリストが皇国としては動かずに個人で動くと断言し、転移門を発動してさっさと居なくなったからだ。

 テリストが独断で動くとなれば確実に皇国への利益は発生しない。それ処か、全ての利益がテリストの懐へ入り皇家へ入る事になる。

 そもそも皇帝は既に捕らえられ、あの強さから帝国攻略の失敗は絶対にしないと確信しているからだ。

 そして直接交渉の場へと移り変わったとしても、あれだけ弁の立つテリストならば、例え相手が国王2名であろうとも1歩も引かずに交渉が出来る。取りっぱぐれなどは絶対に無い。

 そして相手国への配慮すら見せるテリストならば、追い詰めすぎて皇国の対面を汚す心配も無いと大半の者が考えていた。


 貴族には利益が10リルとして発生しないが……。


「やってしまいましわわね。テリストが単独で動くと決断した以上、誰にも止められませんわよ」

『相当に苛立っていたものな。殺されなかっただけでも運が良かった方であろう』

「何か考えているとは思っていましたが。あのような切り返しで強引に行動に移るとは予想外です。図らずも予定の通りに進みはするのですが、皇国へ入るのは僅かな代金のみですね」


 宣戦布告の際の人件費。皇帝一家の身柄管理費用。そして昨日からの資料纏め費用。そして今日の謁見費用。これらの代金支払いが皇国の収入となるのだ。

 1度きりとはいえ、国のトップである女帝の人件費も加算されるが、相当な金額を提示されようとテリストなら即金で支払うだろう。そもそも使いきれない資金を有しているのだから微々たる出費である。

 政権樹立さえなってしまえば、翌月から永久に土地使用料名目で数百万リルは懐に入るのだ。働かなくても余裕過ぎる生活を送る事が出来る。あの性格では魔物狩りに勤しみ、どんどん資産を溜め込みそうであるが。


「そうだ! 貴様が代官に関して認めてさえいれば、テリスト様は単独行動へ強行される事も無かった! どう責任を取るつもりだ!」


 侯爵の地位にある物の発言だった。相手が伯爵である事から完全に喧嘩腰での物言いだ。それも当然だろう。例え一時的に代官を派遣したとしても、何かしら功績をたてれば領地付きの町を任せられる可能性がかなり高い。

 現皇国は、寿命の長さも相まって、貴族の数は頭打ちで、相当な貢献をしなければ貴族になる事は難しい。そもそも、スタンピート対策でテリストとその婚約者たちが功績を上げ過ぎた。それでも功績として発表はされたが重役にすら付けずにほぼ、言葉の感謝のみだ。

 その前例がある事から相当にハードルが高くなっている。だが、飛び地とはいえ、代官だらけの帝国領になりはするが、このハードルが劇的に下がる可能性があった。それを難癖付けたおかげでご破算になった。激怒されて当然だった。


「それだけではありませんぞ。帝国の南部だけとは言え。広大な領地が併合されれば貴族枠が増えたのだ。功績さえ上げれば子供たちの進む道が新たに開けたものを! 何という事をしでかしてくれたのだ!」


 相手が伯爵だろうが、こうなっては押さえられるのはサルーンのみ。爵位が高い為に下の者は表立って汚い言葉は使わないが、どれもこれも批判する言葉だった。


「もうそいつを攻めても何もならん。テリスト様が断言する前にこやつを説得すべきだったのだ。何も言わず静観していた我らにも責任はある」

「文句を言っても変わらないが、この結果はあまりであろう! サルーン陛下が我々の事もお考えになり汲み上げて下さったのだぞ。それにテリスト様も帝都までの移動に協力なさると決定していたのだ。この損失は計り知れん! 死んで詫びられようともこの怒りは収まらんぞ!」


 飛び交う罵詈雑言の嵐だ。たった1人がたてつき。あまつさえ国政への介入でんでんを追及さえしなければテリストの単独行動だけは避けられたのだ。

 明るい将来が垣間見えている状態だったのが、一気に道が崩れ落ち断崖絶壁へと化したのだ。その場に陛下がいなければ、テリストでは無いが、殺意さえ向けている者がかなりの数に上っていた。


 テリストの国政への介入、これを避けるには話を全くせずに見守るほか無いのだ。ただ、最大の功労者であるがゆえに、内政干渉しないと判断をするならば、国策ではなく、個人の思惑として行動する他手が無かったのだ。

 この点を指摘されたテリストは、これ幸いとそれに乗っかり利用して、個人で解決すると舵を切ったのだ。

 図らずもサルーンの負担は事後処理に僅かに絡むだけであり、それほど仕事は増えず、負担は軽微で済むのだった。


 国の中枢をなす者たちの暴言の言いように激怒したサルーンは一言で黙らせ、謁見を閉会したのだった。


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