28:謁見後半
皇国アヴァサレスの飛び地として管理すると決定はしたのだが。これ以降が非常に難航したのだった。
「サルーン陛下。実際の統治に関しまして。何方を当てるおつもりか考えておられますかな?」
俺から見て正面の入り口寄りの男性だ。場所から伯爵だろうか。
「サウスバルの町を統治させている代官を帝都の代官に当てるつもりです」
「なんと! 爵位すら持たぬ者に副都の統治を任せるおつもりか。せめて侯爵の地位にある者を就けねば、皆納得しますまい」
「もっとも武勲ある者にすら任せぬのですよ。皇家の代官を置く事により、副都を皇家の管理下とします」
「し、しかしそれでは貴族ですらない者が帝国領の頂点に君臨する事となりますぞ」
俺の助言が無駄になったか、正面から反論されるとは思わなかったな。なら、俺が出張って反論せざるを得ないか。
「横合いからすみませんね。皇家の代官だとしても爵位無しは就けないと法律でもあるのですか?」
「その様な事はありませんが、命令される貴族の立場も考えて頂きたい」
「ほう。サルーン陛下が指名する代官は貴族位にすら劣ると言われるのだな」
「その様には言っておりませんぞ」
「だが、実際にはそうなるだろ。例え皇家の代官であろうとその下で働く気は無いと、違うのか?」
「それは極端すぎますぞテリスト様。我らの立場も考えて頂きたい」
ふむ。なら、文句言ってるこいつを帝都に据えるか?
「ふむ。ではサルーン陛下。代替え案がありますが提案しても宜しいですか?」
「許可します。提示なさい」
「今指摘された方を皇家の代官として副都の長に据えてはどうでしょうか? 本人は職位持ちですので、爵位に合う年金に代官としての給金を上乗せして支払えば宜しいかと」
「それは飲めません。現在の管理地が不在となってしまいます」
やっぱりか、駄目だろうとは思ったが案の定だな。そうなると統治経験者で尚且つフリーの方って選択肢が全部潰れるよな。貴族経験者すら外せって意見ならば相当に幅の狭い選択肢になる。
エルフは寿命が長い。長いからこそ1人の貴族の任期が長い。ならば、後進を育てる事がおろそかになっている節がある。例の侯爵家の跡取りが馬鹿しでかした様に、傲慢なのが多く、育ってない可能性もある。実際問題、皇宮で働いてる者に爵位持ちが殆ど居ない。領地に当ててる人数以上に余裕が無いのだ。この事が過分に足を引っ張る結果になっていた。
「ですがサルーン陛下。長年皇国の統治下にあった地を任せるならば兎も角。敵から奪う土地です。統治に関して未経験の者を当てるのは非常に不味くありませんか? ここは経験者を充てるべきです」
「そうです。その事から代官をあの者にと考えていたのです。経験者で尚且つ引退している者となると……」
「ヴァルサル様をご指名ですか?」
あの方なら爵位が無くとも誰であろうと納得するはずだが。
「テリスト、あの方はお年なのですよ。しかし弱りましたね」
だろうな、やっぱり反対されたか。ならば反対した者へ振ってみるか。
「ふむ。反対した貴方。誰か適切な人はいないのですか?」
「そ、それは。侯爵の地位にある方は既に管理されておりますので。統治に穴が開いてしまいます」
「さっきと矛盾してる。侯爵を副都の長に付けた方が良いとは貴方の答弁だったはずですが、違いますか?」
「追及は止めなさい、それでは解決しません」
だが、こいつを追及して枠組みを外させないと選択できる人物がいなくないか? それならサルーンの側近ならどうだ?
ただ、優秀な人材をサルーンのサポートから外すと仕事に支障が出そうで怖くあるんだよな。その点を考えたらサージ先生ならどうかな。あの人ならサルーンも安心できるはずだし、領地運営もしてないから適任でもある。
「うーん。ハーンス室長、もしくはサージ先生だとサルーン陛下の腕が捥がれるも同然ですから不味いですよね?」
「ご指名ですよサージ。テリストの要望に応えますか?」
「御冗談を、統治の経験が無い事は陛下が知っておいででしょう。その様な大役は身に余ります。どうか他の方にお任せをお願い致します」
彼も貴族だ、が、爵位自体は低いのだろう、伯爵らしき人物より入口よりだ。
「ハーンスを当てては非常に不味いのですよね……」
適任者無しならサルーンの思惑の方向へ舵を切ったらどうよ。
「ふむ。これは最後の手段ですな。統治を諦めて連合に任せるが宜しい」
「それはなりませんぞ!」
だが、適任者おらずでどうやって統治するつもりだ? 王都に宛がう人材もだが、他にも規模は違うが町がある。其方に就ける人材すらいない事を示している事態だ。
「適任者不在では統治できませんよ。断言するなら適任者を推薦してください」
「陛下すらお悩みの中、推薦できる者がいるはずもございません」
「テリスト。貴方が副都の長に収まりますか?」
「あのね。まだ結婚式すらしてませんが。家族を分断するとかありえません、却下です」
「言ってみただけです。そもそも就けさせません」
なら言うなよ。そもそも提案されたとて蹴るがね。さて、最終的な確認をするか。それから強制させれば良いだろ。
「でしょうね。
さて、最終確認です。其方の方が提示した条件とサルーン陛下の提示した条件をより合わせますと、貴族で尚且つ領地管理の経験者、更に現時点で領地運営を行っていない者となります。
その様な方居ませんよね、はっきり言えば無能であったが為に爵位は辛うじて残ったが、管理地を取り上げられた者しか居ないはずです。どうですか?」
「その通りです。ですから悩んでいるのですよ」
やっぱりか、それじゃ選択には上がらないよな。よりハードルの上がる帝国へ行かせるなんて選択肢があるわけない。
より悲惨な事態となりかねないからな。
「それじゃ貴方はどうだ? この状態でも貴族でなければ認めないと言い張るか?」
「そ、それでは侯爵の方々の内1名を代替地として帝都に送ってはどうでしょうか?」
「何を寝ぼけている。なら、その者は皇家の代官としての地位に就くって事で良いんだよな?」
「流石に侯爵の方を代官とするのは……」
ほらみろ、反対して来た。皇家が一番の功労者だから代官を置くってのは必須条件だぞ。そこへ侯爵を代官で送るとか、そもそも本人が嫌がるだろ。
「おいおい。お前の提案で選定できる者が誰一人として居ない事態に追い込まれてるんだぞ。自覚しろよ。それでも撤回しないのか?」
「テリ。口調をもう少し整えなさいよ。サルーン陛下に御迷惑掛かるでしょ」
「そんな事はこの際どうでも良んだよ。おい、答えろ」
「い、いえ。ここはハーンス殿がおつきになれば解決する問題ではありませんかな」
陛下が反対なさったのを聞いてないのかよこいつは。馬鹿だろ。
「ほう。現時点でハーンス室長を外せば皇国全体が回らなくなるぞ。そんな馬鹿げた提案をするのか?」
「ならばテリスト様も同列ですぞ、提案されたのはそもそもテリスト様のはずです」
「はぁ。だから不味いですよねと付け加えただろ。良くないと思ってるが、他の選択が無いから確認したんだよ。だからこそサルーン陛下がお答えになっただろ。前後を考えて言ってくれ」
「……」
「ふん。分が悪くなったら答えんか。それじゃ適任者無しで統治能力なしと見なす。連合へ全ての土地を譲り渡すとして交渉するぞ」
「テリスト様、それは余りにも横暴ではありませんかな。どうか冷静になり考えられよ」
横暴も何も、お前の提案が邪魔だからこそ紛糾してるんだろうが。こいつが撤回さえすれば穏便に事が進む事を理解しないとか、とんだ抜け策過ぎて話にならんぞ。
だんだんイライラして来たぞこいつ。排除するか。
「お前が横暴と言える立場か? 何も功績を上げてない貴様が。陛下の提案を蹴った挙句、尚且つ選定が難しくなる提案をした挙句、選定できない状態になったとしても撤回すらしない。
貴様は貴族として此処に来てるが、何様のつもりだ? プライドばかり高いが、それで国が動くのかよ。
俺様は貴族だから偉いとかボケた考えで職務にあたってるんじゃないだろうな?
貴族以外の者から命令されるのは嫌だと、それで貴族が務まるのかよ。上に立つ奴は下からの意見も汲み上げ、有用なら、例え提案者が貧困層の者だろうと実行する器が無きゃ務まらんぞ。
相手の立場次第で有効な手立ては全て却下するって考えだぞ、お前の考えはな。今貴族位を返上してくれても構わんぞ。失せろ」
「テリスト、そこまでですよ。もっと冷静になりなさい」
また、こっちはこっちでこいつを排除してるってのに邪魔するのか。お前の案は却下するとか一言断言してくれれば良いのに、それをしないから余計に揉めるんだぞ。
「断る。今回の帝国攻めに関しては俺に一任してるはず。それは交渉然り統治方法然り、全て含まれているはずでは? こんな馬鹿に利益が行くと考えたら反吐が出る。
適任者がいなければ放棄するしかない。これで進めるから解散して良いぞ」
「テリスト様。貴殿は皇国の運営に関して口を出さないと誓ったはずではありませんか。皇家の一員になられる方のお言葉とはそれほど軽いものなのですか」
馬鹿が、それを言ったら終わりだぞ。利益を俺の家族で分担させ、皇国の介入を排除すれば纏まるだけだ。そうすれば俺の介入は無くなるし、そもそもこの謁見すら必要無くなる。
「よくぞ言った。貴殿の言う通りだ。ならばこうしよう。今回の帝国攻めは俺と婚約者だけが直接動いている。よって、宣戦布告はしたが皇国としては介入させない。
ただ、対面は保つ必要がある事から処刑と交渉の場には出てもらう。それは俺が別途皇国へ人件費を支払おう。
同じく、宣戦布告した際に動いた者や、皇帝一家の管理する代金を皇国へ支払おう。それで貸し借り無しだ」
「何を馬鹿な事を仰っておられるのです。テリスト様が既に動いておいでですぞ。皇国が動いたも同然ですぞ」
「それは外から見たらだろ。騎士の派遣もしなくて良いから俺たちだけで片を付ける。皇国からの支援に関しては俺から見合った代金を支払う事で相殺させる。
こうすれば皇国へ俺が干渉せずに済むからな。当然皇国からも干渉させない。ギブアンドテイク、ビジネスとして取り扱う。
では、サルーン陛下。そう言う事ですので謁見はこれまでとしましょう。俺も帝国南部を押さえる必要がありますから失礼しますよ【ゲート】」
腕を両側から握られているがどうとでも成る。腕を前から上に、そして後ろ方向へと回し、一回転すると手を離さざるを得ない。そして帝都へと転移した。
直ぐには消さない。数秒間待って誰も来ないことを確認しないと、胴体ちょん切りとかなった日には殺してしまうからだ。
誰がついて来るのか見ものだったが、アリサ、カーラ、ヤヨイ、リカ、エレクティアが来た。
アウローラは俺の頭に抱き着いてるので嫌でも帝国組へと入るのだった。




