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25:戦後処理調整案

 今回の選択肢次第では大きく利権が異なる。特に土地の確保か手放すかによって負担の程度も変わって来る。

 利点欠点も違ってくるために1選択肢でも利点欠点の書き出しが面倒なぐらいだ。


 人員、教育、税制、法整備、食、職、環境などだ。これに魔物のドロップ品なども絡む事になる。

 これを大まかに書き出し、利点と欠点として書き出す。土地を確保した場合、放棄した場合に割り振り書いていく事になる。

 これに、先の団長がやらかした事を絡めれば出来上がりだ。といっても大枠としては2つだ。

 土地を確保に走った場合には団長がやらかした件が大いに絡む。より広大な土地を確保する方がうま味が大きい。貴族としては見過ごせない案件だ。なにせ全体の底上げが可能になり、子弟などが新たに叙勲されれば土地を任される可能性が出るのだ、当然だろう。


 土地を放棄した場合には、団長の件はそれほど重要性は大きくはない。結局は一時金として支払ってもらうか、長期に渡り受け取るかだ。そもそも国政へ回されるので貴族としては、あまりうま味が無いのだからな。ただ、恒久的な収入源が入る事により、年金額の増額は見込める為、収支すれば黒字になる事に変わりはない。

 こちらの案には納め方次第で結構な変化がある。この点も先日伝えたように3つの案として書き出しておいた。


「だああああああ! めんどくせぇ。これを考えると文官の人たちってすごいな。俺には向かないわ。体動かしてる方が性に合うし」

「そんな事言いながらも纏めるんだから流石テリよ」

「うーん。何かこう、八つ当たりしたい気分だな。何か適当に魔物を狩って来るか」

「提出したら付き合うから3階へ行くわよ」


 他の待機組は気を利かせて別室に居るのだ。アウローラだけは俺の傍に居るけどね。仕事があるからとデルフィアが言い聞かせて行った結果だ。作業の執筆も終わったのでアウローラを抱いて3階へ向かうのだった。

 一息入れようかと思っていたので別室に待機している皆を連れて行くのも忘れない。


「(ゴンゴンゴン)テリストです。作業が終わりましたのでお持ちしました!」

(もっと静かになさい。入ってきて良いわよ)


 どーも最近力加減が甘くなってきてる気がする。少し気を抜くと扉に穴をほがしそうなのだ。ガチャっと開けて入室し、サルーン専用の重厚感あふれるごっつい仕事机の前に用意してある、応接セットのソファーに腰かける。

 そして仕事の報告前に新作のアイスクリームをどっかりと取り出して一人ずつに盛って手渡したのだった。


「仕事の話はちょっと置いといてくれ。流石にイラついてそれ処じゃないわ。ちょっと休憩が必要なのよ」

「デスクワークには向かない性格の様ね。そうだとは思っていましたが」

「分業してもらえると助かるです」


 こんな事言ってるが、元々する気も無いが、サルーンもさせるつもりは無いだろう。一度敵対した国の出身なのがかなり響いている。そんな人物を国の中心部付近に就かせては反発が如何ほどになるか。それを考えれば当然と言えた。


「実に勿体ないですね。それだけの知識がありながら片方は苦手とは」

「そっちはアリサに任せるわ。元ハンターギルドの受付嬢だから書類仕事には慣れてるし」

「役割分担は必要よね。でも、テリの奥さん全員が戦闘しても問題無いのよ。それなら書類作成が得意なテリに回した方が良いわ」

「それはないよ!」

『墓穴掘ってしまったな、それよりテリスト。これは販売しないのですか? 確実に売れそうです』

「駄目ですよデルフィアさん。ただでさえ資産持ちが商売をしては余計に蓄財するだけです」

「そうそう駄目ですよ。作るのが面倒なので、俺をこき使わないで下さい」


 はいあーん、とアウローラにも食べさせている。最初はおっかなびっくりだったが気に入ったのか、口を開けて待っている。


「それならテリ、レシピを作って無料配布したらどうなのよ」

「異世界の知識だとバレるからダメだな、却下。あ、ヤヨイとリカがいる次点でどうでも良いのか」

「そうよ。それと、もっとよこしなさい。あれじゃ足りないわよ」


 うちの家族全員だが。レベルを上げてからというもの。食べる量が増えて来ているのだ。それで体型維持できているのだから、消費カロりーの問題だろう。食べなきゃ痩せる。今の量で丁度良いとすれば、少々間食したとしてもそれほど体型は変わらないだろう。

 元の大鍋ごと宛がっておいた。好きなだけ食べてくれ、他にもあるし。


 サルーンの食べ終わったのを見計らって書いた書類を手渡した。


「見事に纏めましたね。流石テリストです。

 ……。これは問題ね。多岐に渡る上に利点と欠点を全て発表して意見を貰う訳だけど、最初に話したのを忘れるんじゃないかしら。それを明日までに映して配るとなると手が足りないわね」


 解決する手を知っているリカが早速それに応対したのだった。ただ、直ぐに実践可能な手では無い事が悔やまれるが。


「テリスト。活版印刷の技術を提供しないの? 準備は大変だけど一度準備が整えば後は楽よ」


 確かに技法だけなら分かるが。とんでもなく難しいぞ。印鑑1個なら良いが。サイズが同一なのを大量に準備とか、技術があるのかねぇ。俺なら匙投げるんだよな。


「今からだと間に合わないだろ。それに、その準備が途方も無く大変だぞ。逆に掘らなきゃならないから技術も必要だし。最低でも鋼鉄に掘らなきゃ錆びるから掘れる人いるのかね」

「どう言うことですか?」

「結論を先に言うと。準備さえできれば短時間で同じ文章を転写出来るんだよ。

 ちょっと説明しずらいが。指輪印章あるだろ。あれを文字に置き換えたと考えてくれ。それを文字の大きさ。それも正方形にして掘るんだよ。一文字一文字な。

 これまた本体を作っておいて。ぴったりはめ込めるようにしておくんだよ。隙間があると文字がずれて汚くなるから相当に難しい。

 後は文章に合わせて印鑑を並べるだろ。インクを塗って羊皮紙にべったり押し付ければ書面1枚の完成だ。

 後はインクを塗りながら押し付けるだけだからな、何枚も刷れる」

「採用します。紋章官なら指輪印章を掘るのに慣れてますから適任でしょう」


 簡単に採用とか言えるのか? どうやるのか見ものだが。どうにも難しさを理解してない気がするな。


「うーん。大丈夫かねぇ。言っておくがハードルがかなり高い。正方形かつ同じサイズで同じ長さに作らないと凸凹になって版を押せないからな。小さければガタついて良く無いし、大きいとそもそもはめ込めない。

 文章1列でも同じ文字を複数使うから、同じ文字を何十個も準備しとかなきゃ、いざ足りませんじゃ話にならない。

 本体もだぞ。寸分狂わずにその判子に合わせたのを準備しなきゃならん。大丈夫か?」

「……。テリストにサンプルを作ってと頼んだら作れますか?」


 印鑑用の駒を作って、掘る為の専用の台が欲しい所だな。掘っている最中に駒が動かないのを。それならマジッククレイに型合わせして焼き固めれば土台作りは可能か。後は1個ずつ掘れば何とかなる。駒の大きさを正確に統一させなきゃならないがな。


「文字一つなら可能だとは思うぞ。ただ、完全な正方形で歪なく作るには鍛冶の経験が無いから無理だ。俺なら掘る前の前段階の駒は鍛冶屋に発注する。なんせ整形に関しては腕があるからな。それを大量に作らせて、そのはめ込む本体も羊皮紙の大きさに合わせて発注する。

 注意しなきゃならないのは、縦横計算した上で、一列ずつはめ込めるように作らなきゃならん。とりあえずは可能かどうか鍛冶屋と相談だな」

「掘るのは問題無いでしょう。鍛冶師に後程相談します。

 脱線しましたね。まず大枠から提示してそこから再度調整が必要そうですね」


「でだ。聞きたいんだが、どうしても土地を放棄して利益だけ取る方向で調整したいのか?」

「その口ぶりなら可能な方法があるのね?」

「これを纏めていて気が付いた。ただし、俺が泥をかぶる必要があるだろうな」

「言ってみなさい」

「そもそも占領が可能だったのは俺たち家族の力あってこそだ。本来の進軍で到達するには他国を跨がなきゃならん。その調整だけでも結構な時間が掛かる。それに移動距離が半端じゃないからな。そうなると、無事到着したとしてもほとんどが連合に平らげられた状態で到着する訳だ。

 そんな状態だと帝国兵はほぼ壊滅状態だろ。そんな所に攻め入ってはとんだ笑いものだ。利益の為だけに参戦したと思われる。そうなれば国益の為に利益は捨てなきゃならん。無駄骨って奴だ。

 この事を説明して俺がごり押しすれば反対出来る奴はいない」

「その案は却下よ。国政に関しては極力口出ししませんと宣言したのだからそこを突かれるわ。皇家の一員が堂々と嘘をつく訳にはいかないの。今回は飲まざるをえないわね」


 なら、団長であるカーラだと……。余計に不味いか。


「それだとカーラが言うのは余計に不味そうだな」

「そうね。また獣王国へ攻め入る案が再燃する可能性があるわね」

「だろうな、正面切って国益損ねる発言をするんだ。俺が提示するより余計に不味い」


 カーラが今も獣王国と繋がりがあり、皇国に不利益をもたらすのか? と考えられたら俺が出るより不味くなるのは分りきってる問題か。それじゃ、サルーンの考えはボツで成り行きに任せるしか無いな。逆になる算段が大きいが仕方ないだろう。


「そもそも飛び地ですよ。サルーンさんには統治する計画はあるのですか?」

「副都として扱わないと無理ですね。公爵でもいれば宛がうのですが、その手が使えないとなると侯爵を宛がう他ありませんか」

「何も貢献していない上に、統治しなきゃならないからって帝都を任せるとか、確実に反発を食らうぞ。例の俺に喧嘩売って廃業した侯爵がいただろ。そいつを代官として送り込めないか?」

「可能か不可能かで答えるなら可能です。それも反発は受けるでしょうね」

「その時は切り返せ。最も貢献している者にすら与えぬのに。貴様程度の貢献ではとても与えられぬとな。だからこそ福都は皇家の管理下に置くと宣言すれば終わる。ついでに言えば、既に町を管理している貴族に回しても元の町の管理が出来なくなれば本末転倒だ。領地を所有していない貴族を代官として送り込む方が良い」

「わかりました。その様に調整しましょう。で」

「で? その後は?」

「例の羽根ペンを返して下さい。仕事の効率が落ちました」


 なんじゃそりゃ。元日本人の俺としては鉛筆サイズが一番握りやすいが、此方は羽根ペンになれているから細いのでも大丈夫だと思っていたが、やっぱり大きい方が握りやすかったんだろうな。

 ただ、全部売っちゃって材料が無いのよね。


「ふむ。憂さ晴らしついでにそいつも倒して来るかな。乳もけっこう減ったし補給しておきたい。ついでにオウカの所に顔も出したいんだよな」

「相変わらず時間が足りなさそうですね」

「はぁ。そうなんだよねぇ。もう1個体が欲しい。何かないの? 実体分身可能なスキルとかさ」

「ある訳ないでしょ気持ち悪い」

「気持ち悪いは余計だろ、それじゃ返しておくよ。とりあえずオウカとこに行って助け出した例の人たちの心境報告でも受けて来るかな。それじゃ行って来る【ゲート】」

『あの。付いていって良いのかな?』

「テリだから絶対ダメとは言わないわよ。行きますよ」


 アリサの言葉が聞こえる前に、とうに転移門を潜っているテリストだった。


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