21:予想
ほぼ、会話のみです。
遅れに遅れてしまった。屋敷へと案内された時点ですでに夕方だったのだ。搬入作業も中身を確認しながらで時間が掛かり過ぎる。
帝都には団長様がいるので丸投げする事にしたのだ。搬入作業も途中で打ち切り。夕食はごちそうになった。そしてそのままお泊りコースだ。
俺たちは俺たちで部屋を割り当てられ。明日も顔を合わせるからと雑談などはせずにそれ其れの部屋へと戻って行くのだった。
宛がわれた部屋の中央に場を整え。新作アイスクリームを取り出してパクつきながら雑談を交わしていた。
「これ果物よね? どうやって作ったの?」
「元が柔らかいからな。果肉を角切りにして冷却する際に投入するんだよ。後は混ぜていれば勝手に潰れて満遍なく混ざる」
「他にも色々と投入する果物しだいで味が変えられるわね」
「何種類か作ってあるよ。出さないだけで」
『テリスト、これも彼方の知識なの?』
「そうだよ。ワングル乳だっけ。そのままだと薄いから濃縮して使うのが基本だね。そのうちケーキも作りたいな。ただ、バタークリームになるけど」
生クリームを作りたいのだが、単なる濃縮では作れないんだよな。バターを別途投入して乳脂肪分を上げたとしても、分離しているからそのままでは単なる水と油の様なものだ。
この世界では作れないなと切って捨てる事にした。
「? バターとは聞かない名ね。何なの?」
「ワングル乳をさ。凍結しない程度に冷やしてひたすら攪拌するんだよ。そうすると分離してね。脂肪分だけが取り出せるの。それがバターで、それに砂糖を加えて練るとバタークリームになるんだ。ちょっとざらつくけど濃厚だよ」
『ケーキじゃなくても良さそうね。それだけ作ってパンに塗って食べれないの?』
「可能と言えば可能だね。柔らかいパン限定になるけどね。浸さなきゃ食べれないパンには無理だ」
下手に噛みつくと歯が折れるからな。
「それはそうよ。それより、抜け駆けして食べたと知ったら恨まれそうね……」
そんな事を言いならがアイスクリームをつついている。
「なーに、話さなきゃ良いだけだ。そもそも誰も作ろうとしないんだから。俺の気まぐれで食べさせたって事だから気にする事じゃない」
対面に座っていたアリサだが。俺の隣へと座って来た。
(それで。連合の方はどんな手を使って来ると思うのよ)
なるほど。雑談から今回の対応へどんな処置をするのか、その点を話すのか。それは確かに聞かれたら不味いな。
(アルフォンスから俺の戦力がどの程度なのかを聞いてるだろうな、何せ危険だし。そもそも皇国のスタンピートに関する報告は聞いて無さそうだ。真っ先に調べるな。同じく少数精鋭で来ている事から、他の嫁さんの力量も同程度か、もしくは突出した力量だと直ぐに看破するだろうさ)
(その位は分かるわよ。その後よ、敵対したも同然の態度をテリに取ったのよ。間接的にサルーンさんに剣を向けたも同然なの、何か手を打って来るんじゃないかしら)
確かにそう考えれなくはないか。女帝の婿に対して支払うべき代金を踏み倒せだもんな。それに実際決闘を突き付けた時点で、口では無く行動に出ると宣言したも同然だ。
あの時点で皇国国内なら、決闘をするまでも無くあの団長は捕まって公開処刑だろうな。なにせ女帝の旦那は大したことありませんよアピールしたのだし。間接的にとはいえ、女帝に対して顔に向け泥を被せたも同然だ。即座に対処するのは明白だ。
ただ。戦場であったが為に、それに、相手が団長であったが為に此方は直接的な行動は取れない。何か非があったとしても、直接遣れば連合は崩壊まではしないが連携が崩れるのは明白だ。
そもそもそんな馬鹿をやらかした時点で、組むには値せずと判断された場合には解体すらあり得る。
目先にぶら下がる利益から可能性としては低いが、連邦か国王か分からないが連絡が届き。抗議は必ず入るだろう。
《敵対的な手は絶対に取って来ないわね。数万程度の軍勢程度なら相手をする事が可能だと判断しますから》
エレクティアの真の姿を見せているんだ、そんな事は絶対に無いと断言できる。それでも手を出すようなら、単なる自殺願望者だ。
(だろうな。手を考えるならばその矛先をいかに躱すかに力を注ぐだろ。俺が対象国の国王なら取れる手は2つだ。1つは賠償金の支払い。謝罪を込めて大金を手渡す。国家予算の数割をな。
そしてもう一つは元凶の首を差し出す事だろうな。処刑する事で誠意を見せ、矛先を躱す。ただ、これだけだと納得しない場合があるから、金銭的な上積みはあるだろ)
(そんな所でしょうね。付け加えるなら大金で済ませた場合は隷属化するでしょうね。国家の駒としてね)
(だろうな。それにだ、俺レベルかは分からないが経験値取得に関してのスキル保持者だな。それも生まれ持った状態でだ。そうでなければ大人に勝つなんて早々出来ない)
(確実にそうでしょうね。しかも帝国の分割に関わる一大事に関わって来る案件よ。戦争の最中に暗殺して首を差し出して来るかも知れないわ)
(可能性は否定できないが確立としては低そうかな。俺だったら生かしてこき使う。経験取得の対象者を国王の家族に限定して強制レベリングをさせれば今後安泰だからな。一時金銭的に苦しくはなるがそれ以上の恩恵がある。なにせ強くなれば暗殺さえ怖く無くなるからな)
(もし、用済みと判断されたら……)
(ある程度上がれば強いのは邪魔になるからな。殺して排除だろ。どっちに転んでも奴の未来は暗いな)
《本当にそれだけなの? テリストは獣王国に命を狙われて亡命したのよね。同じ事を画策しないのかしら》
亡命か。ただ、俺の時と条件が違いすぎる。片や犯罪者、片や罠に嵌められた者だしな。
(ふむ。戦闘中に逃げたとしたら成功するな。団長だし、好きな位置で戦闘に参加できる。逃げやすい位置に自らを置き実行するだろうな。ただ、それほどの馬鹿をした奴を国が囲うかね。ただ、欲しがるだろう団体はいるが)
(犯罪組織ね。戦力を考えれば頭に据えても可笑しくないわ)
(ご名答)
そうなると厄介だな。逆切れして犯罪者を送り込んできそうだ。純粋であるがゆえに、黒く染まるのも早そうだし。
(そうなる可能性が高いわよね、逆恨みしそう……)
(逃げたと情報が入ったら此方も追跡部隊を出すべきかな。俺が出るんだけど)
(役割としてはテリがうってつけの人材ね)
《中々に楽しい展開になって来たわね。あの子はどんな行動をするのか、楽しみだわ》
(そうなるとサルーンと話し合っておくべきだな。スキルレベルには達したし。帝都に戻り次第に早速試すか、カーラに判断を迫るには難しい問題だ)
(それよ。そもそもカーラはテリほど頭は切れないわ。暴走しないようにとの配慮だけで団長の地位に就いてるの、そこを間違えないで頂戴)
(それは分かっているさ、だけどな、対面で座っての交渉だとどうしてもカーラに選択を迫らざるを得ないだろ。俺が決定を下せばカーラがお飾りだと相手が気が付く。それではカーラの立場が台無しになるんだよ)
(サールンさんも厄介な地位を押し付けたものね)
(元々が王女の地位だったからな、期待するのも分かるが、まだ成人したばかりだって事を考えに入れてないんだろう。経験を積ませるには良い手だが、失敗の許されない外交に据えるべきじゃないとは思う。
経験させるなら少々失敗しても良い、国内の何処か領地運営でもさせるべきだ)
(なら、テリがそれとなくフォーロしなさい。副団長の地位だから当然でしょ)
(答えを誘導して導けって事だよなそれ、また厄介な注文だな。自分で決断下すよりも難しいんだぞ)
(奥さんの為なんだから頑張りなさいよ)
(はぁ。俺と同等に考えられる右腕的な存在が欲しいな。頭も体も1つしか無いのが悔やまれる)
(そんなほいほいテリと同じ思考の人物なんて……いるじゃないの!)
(いるな、いるけど交易商を夢見てるんだから、引っ張り込むのは気が引けるんだよ。それでも知識量では劣るから俺の側近として常日頃連れまわす必要は出て来るし)
(なら諦めなさい。テリが頑張るしか無いのよ。戦後なら少しは落ち着くじゃないの)
(戦後はな。戦後処理の最中が一番悩み所だろう。なにせ国元の貴族は活躍の場が何一つ与えられないままに戦争へ突入して、皇家が全部の活躍を掴むんだからな、絶対にやっかみを受ける事になる。今頃は彼方も調整に勤しんでるだろうさ)
(それ。分かってたのよね?)
(当たり前だろ、サルーンが判断を下したんだ、俺に反対する意思はないぞ。不利益どころか俺に任せてくれてありがとうと感謝してるんだからな)
(それでサルーンさんはその対応で少なからず頭を悩ませるのね)
(それも織り込み済みだろう。騎士団を派遣するとしたらゲートを使用するしかない。それでは周囲の国が警戒するからな。そこも計算に入れてると思うぞ)
(監視下に置いた場所限定での使用に制限してるとアピールする為よねそれ)
(むやみやたらには使用しませんと自らに枷を嵌めてますよ、アピールだな。効果は分からんけど)
(先を見越して考えるか。難しいわね)
(話してて俺も気が付いたんだ。流石はサルーンだ。長年女帝として君臨してるだけの事はあるな)
(気が付いてなかったのね……)
(うむ、話し込んですまないなエレクティア。そろそろ寝ようか)
《考え方の方向性を知るいい経験になりました、謝罪は要りません》
ベッドをくっつけて3人並んで寝るのだった。




