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19:一触即発

 攻撃を誘発させて狙撃者を排除する予定だったのだが。アルフォンスが大回りした事からそれもかなわず。到着したのは夕刻だった。遅過ぎである。

 町の出入り口である南側は厳重に封鎖されており。其方からはとてもでは無いが入れそうにない。そして、街中へ直接着陸するのも、相手へ警戒心を抱かせる行為なのでこれも得策では無い。

 よって、取れる手は一つだけ。北側に回り込み、カリース連邦側から警戒されないであろう距離に降り立ち、そこから徒歩で北門へ行くのだった。

 当然の様に門は固く閉ざされている。そして不用意に近づく俺たちは警告を受けるのだった。


「そこで止まるが良い! アルフォンス・レーゲンシャトウ殿。無事の御帰還おめでとうございます、しかし、見慣れぬ者を連れいてるご様子。それでは門を開け、招き入れる事叶いません。身分を明かし、身を立てるが宜しい」


 この状態だと人質作戦との懸念があるよな。当然の質問だ。さて、此方の事を知っている人物であれば良いのだが。


「では失礼して。皇国アヴァサレス遠征部隊副団長のテリスト・ファーラル・アーレアルである。2人の女性は、同じく遠征部隊の一員だ。

 連合部隊の団長殿との会見を望む」

 適当に部隊名を作ったが構わんよな? 単に副団長よりは分かりやすいかと思いくっつけてみましたハイ。

「皇国が参戦する事は伝令よりお聞きしています。貴殿の身を証明する品を何かお持ちではありませんかな?」


 参戦するにあたり。直接接触前にサルーンを此方へご招待するつもりだったからな。それらしい身分証は持ち合わせていない。さてさて、困ったな。


「何か無いのでしょうか?」

「獣王国で作成した指輪印章で身の証となりますか?」

「それでは確認作業に数日間を要します。此方も軍事行動中の身であり、それほど待たれるのも無理でしょう。他に何かありませんかな?」

「うーん。皇国にしかない品ならば持ち合わせているが。こればかりはサルーンに確認を取らなければおいそれと渡せないんだよな……」

「時空魔術の魔導書ねそれ。絶対に駄目よ」

「だよなぁ。俺自身が身分証みたいなもんだからそれらしいのは他にないぞ、うーん。出直すか?」

『鑑定させたらどうなのよ?』

「それも駄目だ。サルーンから禁止されてる。

 皇国が火龍一族と取り交わして守護龍としてお越し頂いている事をご存知かね?」

「それは、申し訳ないが存じておりません」

「では。上層部の方に問い合わせて頂けないだろうか。守護龍が同道していているので身の証にならないかと」

「よろしいでしょう。して、角や翼がある女性がそうなのでしょうか?」

「そうだ。エレクティア。すこーし離れて龍化してくれ」

『威圧してしまいますが、仕方のない選択ですか』

「お願いだから咆哮は無しな」


 本当にすこーししか離れずに龍化し、町を囲む外壁の上から話しかけるその者に顔を最接近させたのだった。

 脅すなと言ったのに、聞いちゃいない。後ろには下がれないので、脱兎の如く壁面上を走って逃げて行ったのだ。


「やっちゃったな……」

「やってしまったわね」

「はぁー。どうなるか分からんが少し待つか」

「お。おれは無事なのでしょうかね……」

「エレクティアなんだから何もしないさ。びくついてないでシャキリしとけ。ほら、グリフォンを見習えよ」


 ちゃっかり飛んで行き、エレクティアの背に乗るのだった。

 俺たちなら帝都まで僅かな時間で戻れるが。グリフォンの飛行速度だと到着は夜中かな……。立って待つのもアホらしいと、場を整えて待つのだった。アリサの要望でリバーシをしながらだが。

 人化したエレクティアにも教えて俺は交代し後は任せる。1時間もすると門の内側で動きがあり。ギシギシと音をたて、門が開くのだった。

 意の一番で駆け寄って来る者が1人。12歳か13歳ほどの男の子がグリフォンに抱き着くのだった。


「グリちゃんおかえりなさい」

「クルルルッ」


 安直な名前だなぁ。クインと名付けた俺も大差ないかもしれないが。で、この子は何処の子よ……。


「団長! それでは威厳が下がりましょうぞ」


 と、後から駆け寄って来た者に咎められるのだった。どうやら成人もしていないのに団長様らしい。


「アルフォンス殿。予定日時に帰還せぬから心配しておったぞ」

「敵兵に見つかってしまいましてね。此方のテリスト様にお助け頂き、一晩お世話になっていたのです」

「グリちゃんお怪我しちゃったの!」

「治療して頂き完治しております。それで、治療費と同じく食料も分けて頂いたのでお支払いせねばなりません」

「ふーん。それでいくらぐらいなの?」

「……。少なく見積もっても100万リルは下らないかと……」

「えーーーーー! そんなに払えないよ! 踏みたおしなよ。そうしたら0リルだよ!」


 ほう、踏み倒すねぇ。ぜひ踏み倒してもらおうじゃないの。どうやって踏み倒すのか見ものだな。力ずくならぜひ決闘して頂きたいものだな。成人前の子供だろうと、敵意を向けて来るなら刈取るだけだ。


「ご本人の前でそれを言いますか団長。死にたくなければ即座に謝罪をなさってください」

「そんな事言ったって僕に勝てる大人の人もいないじゃないか。決闘しようよ決闘。決闘して僕が勝ったら無料ね。大丈夫、手加減して殺さないと約束するよ」

 これは増長してるな。俺と同じく経験取得のスキルでも身に着けてるのだろうな。そうでなければ大人と渡り合うなど不可能だ。本来、この年齢なら精々が20レベルにも届いていないはず。

 今日は1人で3000人程度殺してる事からアルフォンスは警告するだろう、それはさせない方が良いな。


「おいアルフォンス。俺たちの情報を与えたりしたら、敵対と見なして即殺すぞ」

「アルフォンスを殺す? 僕がこの場に居るのに? それは無理だね、断言するよ。お兄さんじゃ10秒も持ちこたえられないね」

 おおう。言うねぇ。俺が攻勢に回った瞬間に死ぬのにな。


「あの、団長。皇国より来られている事をお忘れでは無いでしょうな。下手に揉めたりすれば国際問題になりますぞ」

「大丈夫だよ。お互いに納得しての決闘なら死んでも問題ないよね。そうでしょお兄さん」

 正論過ぎるな。その為早死にするか? さて、どう転ぶかね。


「うむ。全く問題無いな。此方にも見届ける者が2人いるからな。絶対に国際問題へ発展しない様に、自分の考えで決闘を受けたと伝える様に釘を刺しておこう」

「お兄さんも度胸あるね。決闘受けると考えて良いよね。僕は掛った治療費込みの代金を無料にすることを要求するよ。お兄さんは何を要求するの?」

「グリフォンをもらい受けようか」

「えー、それはやだな。他には無いの?」

 自分が勝つと確信しておきながら往生際が悪いな。


「その前に聞きたいがな。主が死んだらその使い魔はどうなる?」

「お兄さんそんな事も知らないの?」

「あ、あの。テリスト様「黙れよ、答えはどうなんだ?」」

「決闘だから勝者に全部の資産が移るよ。爵位は移らないけどね。納得した?」

「納得した。すまないな、どうにも常識をよく理解して無くてな助かるわ。それじゃこうしよう。少なく見積もって100万リルが請求額なら倍の200万リル支払ってもらおうか」

「待ちなさいテリ! 殺すつもりでしょ!」

 堂々と踏み倒す宣言した者は敵対者に他ならない。年齢が若くともな。ならば要求は適当で決闘を受けさえすれば良い。後は手元にグリフォンが転がり込む。


「そうだがどうかしたか? 代金踏み倒す宣言された時点で俺の敵対者リストに入れたぞ」

「チィ。今回は何処にもテリに落ち度は無いわね……。団長と言ったわねあんた。即座に謝罪して100万リル支払うと約束なさい。そうしなければあんたの命も直ぐに刈り取られるわよ」

「嫌だなぁお姉さん。そんな訳ないじゃないか。僕が負けて死ぬ? あり得ないよ。決闘で証明してあげるから早く始めようよ。

 そもそも龍族の方だっけ? その女性が相手じゃない限り負けないよ」

「これだけ言っても説得は無理な様ね。仕方ないから死になさい」

 そうそう死になさい。本人がやる気満々なんだから止めずともさっさと開始すれば良いんだよ。


「まぁまぁ。配慮してやるから心配するな。痛みなんて与えんよ。気が付く暇も無く殺すから安心しろ」

「テリスト様! なにとぞなにとぞご慈悲を! グリフォンは差し上げます。ですから矛を収めて下さい」

「アルフォンス。何を勘違いしてるんだ? 俺は代金を踏み倒される宣言を受けた上に決闘を申し込まれた被害者だぞ。俺は加害者に人権は無いと考えているからな。自らの考えで動いている以上、相手が何才だろうが降りかかる火の粉は掃うだけだ」

「クロサス! 死にたくなければ即座に謝罪しグリフォンを差し上げろ! でなければお前に未来は無いぞ!」

「はいはい、止めろ。さっさと決闘を始めるぞ。ま、初手だけは譲ってやるよ。最強の攻撃手段で打ち込んで来い。受け止めた後反撃してやる」

「ア、アルフォンス。本当に僕が殺されると思ってるの?」

「……」

「そ、そうなんだね。お、お兄さんごめんなさい。踏み倒すとか犯罪行為だよね。グリフォンは差し上げますから許して下さい」

「いやいや。止めなくて良いから撃ち込んで来い。俺は座ったままで大丈夫だからな。遠慮するな」

「テリ、いい加減にしなさい。まだ未成年で相手を立てる事を知らないのよ。大目に見てあげなさい」

『そうよ。広い心を持ちなさい。狭量は良くないわよ』

「わかったよ。この件はこれで終わらせる。グリフォンは頂くが。代わりにこれをくれてやる」


 失敗しても良い様に、予備で竜種召喚魔方陣を2枚渡した。相手がしおらしく、それなりの態度で臨んで来るのであれば、それに答えるだけだ。俺には不要な品だし、余分に渡しておいた。


「良かったわね、それは竜種を召喚する為の魔方陣よ。最低でもMP1000は必要と聞いてるから予備を渡したのでしょうね」

「良いの? お兄さん。僕が一方的に悪かったのに……」

「突然相方がいなくなると寂しいからな。獣系統の召喚魔方陣は持ち合わせていないからそれで代用してくれ。それでも呼び出せるかは実力次第だ。可能だと思ったら試せ、失敗しても知らんけどな」

「ありがとうお兄さん!」


 敵対してたって言うのに切り替えが早いのな。俺は抱き着かれるのだった。


「ま、まぁここでは接待も出来ませんからな。御足労願えますかな?」


 出していた品を収納し、近くに待機させていた馬車に乗り込み、領主の屋敷へと向かうのだった。






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