↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/62

18:借金

 俺たちは食事を終えてそのままテーブルで話し合っている。エレクティアだけは俺から肉を受け取り、グリフォンへ食べさせているが……。


「アルフォンス殿は先に向かっとくか? 俺は途中の部隊を叩いてからお邪魔するから」

「いえいえ。後方に控えていますので存分に戦って頂いて結構です。帝都を落としたお手並みを拝見したいと思います」

「見るのは構わないけどさ、面白いもんじゃないぞ。はっきり言って不愉快だと思うけどな」

「戦闘そのものはそうでしょう。命のやり取りですから、ですが世紀の一戦を見逃す方が後悔してしまいます」


 そんなものかね? 一方的に遣る虐殺ショーになるんだが……。俺だったら見ないな。


「止める事も無いか。さてと、エレクティア。あまり食べさせると飛べないとか言い出すからほどほどにな」

『そうなのですか?』

『クルルルッ!』


 そんな事は無いと抗議してるのか顔を横に振っているが前例があるんだよな……。つい昨日ね。


「飛べなかったら捨てて行くからまあ良いか。さてと、ぼちぼち行きますかね」

「テリ、私も行くわよ」

「え? 来るの?」

「お目付け役を担ってるのよ。当然よ」

「確かにそうだったな。後れを取る事は無いと思うが、皆も気を付けてな」


 エレクティアは自力で飛べるので問題ない。国旗をアリサに持たせ、お姫様抱っこしてゆっくり飛んで行くも、グリフォンが置いてけぼりを食ったのは言うまでもない。

 エレクティアにゆっくりと来るように言いつけて。俺とアリサは先行するのだった。


 ほどなく時間が経過した頃、向かって来る敵陣営が視野に入る。どうも野営の撤収作業をしているようだ。ガチで正面から当たるつもりだったのだが、早すぎた様だ。

 それでも300m程度に接近すれば見張りの者が気が付き、撤収作業は放置で身なりを整えようと慌てるさまが見て取れる。これより以降は地上に降り立ち、歩いて接近する。時間を与える為にだ。


(身なりを整えた者は俺に続け! 時間を稼ぐぞ!)


 40から50名ほどだろうか、向かって来るがそれには及ばない。


「10分程度時間をくれてやる! 陣容を整えろ! それまでは接近しない!」

「だけどそれって時間の無駄じゃないの? テリらしくないわね」

(急げ! 奴が止待っている間にさっさと整えろ!)

「良いんだよ。なんせばらけていると倒し難いしな。固まってくれた方が戦いやすい。

 おいおっさん! 降伏するなら全員の命を助けた上に、危害を加えないと約束してやる! だが、ひとたび開戦したら、全員殺すまで止まらんぞ、例え命乞いしようが降伏しようがな。好きな方を選べ!」

(降伏だと、そんな訳にいくか! 貴様を殺し! 皇帝陛下をお救い申し上げるのだ!)


 命を粗末にする方を選んだか。それなら今回の一戦では遠慮する必要が無くなったな。命乞いしてる者を殺せば汚点になるそうだが、トップが言い張ってるのだろうし退路は断たれたと。そもそも誰も逃がさなければ良いだけの事だ。馬で逃げようと遅すぎるしな。


「下らんな。他人を虫けらの如く扱うクソ野郎を助けたいなどと。貴様も同じ穴の狢か」

(国力を増す為に行っていた行為の何処が虫けらのごとき扱いだというのだ。適当な事を言うな!)

「一般市民を馬車で引き殺そうが咎めもしないクソ野郎を、クソ野郎じゃないとしたら何になるんだ? 便所虫かクソ野郎!」

(もう我慢ならん! 攻撃開始!)

「はぁ。結局時間を与えた意味が無いじゃないの。結果的にこうなるのよね」

「うむ、ある意味順当だな。アリサは旗を傷つけられない様に後方へ下がっておいてくれ」


 矢も飛んで来るが魔術も飛んで来る。アリサはさっさと後方へ移動し、俺は矢の着弾地点から離れるべく、前進を開始する。

 魔術に関しては直線的に飛んで来るので、横へ躱せば何でも無いが。そのまま体で受け止めながら強引に距離を詰める。


「接近させるな! 弾幕を張り、その間に強烈な一撃を叩き込め!」


 だが、そんな指示は意味が無い。魔術への抵抗力もとっくに人レベルから限界を突破している。スキルレベル5程度の魔術ならば単に目障りなだけだ。防御膜を突破できるはずも無く着弾すらしないのだからな。

 開始時点で200m程度しか離れていなかった。ゆっくり歩いても1分程度で指揮していた奴の元へたどり着く。

 剣で斬りかかれるも素手で掴み取り武器を奪い、体へ収めてやる。

 散々魔術を受けたにも関わらず無傷、そして隊長が斬りかかるも素手で奪い取られて殺されるのを目のあたりにした者たちは戦意など保てるはずも無く逃げの一手に出た。


「逃がす訳無いだろ。これまでの暴挙を胸に刻んで死ね【ディメンションカッター】」


 遺体の回収は帰りに際に、もしくは翌日で良いだろう。今は連合の方へ顔を出すのを優先しようかな。そうとなれば行動は早い。

 天幕へは【ファイアボール】を投げ込み。敵騎士へは時空魔術で刻んでやる。兵站部隊の物資は荷馬車事奪い取り、馬はその場で尻を叩いて走らせ逃亡させる。


 攻勢へと回れば早いものだ。武器は奪い取るが遺体は回収しないので遣り放題だ。一人に2秒も掛かるはずも無く。3部隊からなる合計3000名程を全滅させるのに2時間もかかりはしなかった。


 事が終り。アリサとエレクティアたちを確認すると。遺体回収と合わせて、持ち物をはぎ取っていた。アルフォンスもだ。

 アルフォンスが手伝う必要は無いのだが、どうしたものか。

 それならそうと、装備剥ぎ取りは後程に回すとしてさっさと回収するかと割り切った。4人ですれば早いものだ。それから20分程度で回収し終えるのだった。


「アルフォンス殿すまないな、手伝ってもらって」

「え、いえ。エレクティア殿が。回収した品は資産にして良いと言われたので参加させて頂きました。あの、宜しかったでしょうか?」


 手間のかかる遺体処理も同時にしてくれるなら安い物だろ。その分の手間賃の方が面倒だしな。


「そういう事ね。全然問題ないな。遺体は此方で焼却後、埋葬するから渡してくれ。どの道俺たちがする必要があるからな」

「それは連合とて同じです。でしたら共同で行いませんか?」

 歩調を合わせるのは時間が掛かりそうだな。こっちは時間があるときに一気にしてしまいたい。


「それは時間が掛かるから止めておこう。資産をはぎ取らずに収納したからな。他の町も占領しなきゃならないしその都度行うのは手間だ。纏めてするよ」

『テリスト、喉が渇いたわ。何か出して頂戴』

「そうだな。水分補給はこまめに取る方が良い。ちょっと場を整えるよ」


 街道は砂利道なので。脇の、低い草の生え揃えている場所に場を整えて準備をした。


「例の物資に酒もあるから飲むか?」

「エレクティアさんは良いけど、交渉するんだからテリは駄目よ。分かっているわよね?」

「そりゃそうだ。此方から話を持ち掛けるのに、それ以上の不愉快な事は無いからな」


 エールの入った樽があるのだ。炭酸が抜けない様にと100ℓ程度の少量ずつで詰められている。それを取り出してエレクティアに宛がい。他は果実水だ。


「テリスト殿は何でも持ち歩いておられるのですね。軍事物資も買い取られましたし。相当な資産も持ち歩いておられるのですか?」

「俺だけの資産では無いと最初に伝えておくが、結構色々と持ち歩いてるな。家財道具から食料にキッチン用品とか魔物の素材に、後は各種金属とダンジョン産の宝箱とかも持ち歩いてるな」

「多種に渡りますね。元々はハンターたっだのでしょうか?」

「そうだな。元は雑貨店で手伝いをしてたが、それから冒険者になってアリサと知り合った。それから色々と厄介事にも巻き込まれて、今は皇国へ亡命して皇宮で生活してるな」

「え? 皇宮でですか?」

「だな。そう言えば正式な立場の説明はしてなかったか。皇国アヴァサレスの女帝であるサルーン・アーレアル・アヴァサレスは俺の婚約者だ」


 がばっと立ち上がり。直角に腰を曲げて頭を下げ、ご無礼な態度を取り申し訳ありませんと謝罪して来るのだった。


「そんなのは要らないから、今は軍務中で肩書は副団長なの。そっちが優先だから気にするな」

「はぁ。そういうものなのでしょうか?」

「テリはそんな事全然気にしないから口調はどうでも良いのよ。ただ、敵対したら態度が変わるからそこだけに気を付ければ良いわ」


 わざわざ忠告する事か? 陣営は別だが帝国を同じく攻める者同士だ。敵対しようがないと思うけどな。


「きっちり忠告するとか優しいな」

「事実じゃないの。そもそも敵対して生きてるのってほんの僅かでしょ」

「は、あははっ」

「あ、そう言えばグリフォンに何も飲ませてなかったな。何か飲む……か。ってお前何飲んでる!」


 樽に顔を突っ込みラッパ飲みしていやがる……。


「はぁ。やってしまいましたか……。申し訳ありません。食費は必ずお返ししますから、どうか温情を頂きたく……」


 超高額なんだけど。飼い主の団長さんは支払えるのかね? 食費の工面で相当にきついらしいけども……。


「……本当に払うのか?」

「もちろん飼い主に支払わせます」

 断言しちゃったよこの人……。


「下級ドラゴンのドロップ品である肉の塊を4つと。エールを丸々1樽分か。いくらほどかな?」

「40万リルは請求して良いわよ。それでも買取価格だから、販売価格ならもっと割高よ」

「へー。皮がべらぼうに高いから結構高いかと思ってたが安いのな。それなら末端価格で請求するか。いくら程だ?」

「そうね。5割増しで良いんじゃないの?」

 そんなものか。少しは譲歩が必要だし買取価格で良いかな。


「あまり変わらないな。元の値段で良いや」

「あ、あの。そんな高級な肉を食べさせていたのですか……」

「蛙の肉と鶏肉なら少しはあるけどな。ドラゴンの肉が一番在庫的には多いんだよ。だからそれを食わせたって話だな。うまいぞ、焼肉にして食ってみるか?」

「い、いえ。安月給では支払えないのでご遠慮申し上げます」

「そう言えばだ。これ、払えなかったらどうなるの?」

「他所からお金を借りて返金か、もしくはテリスト様に猶予を頂くか、もしくは……」

「その後は?」

「借金奴隷として身売りするしかありません」


 それはそれで悲惨だな。使い魔を預けたら借金こさえて戻りましたじゃ発狂しそうだよな。俺だったらアルフォンスも道連れにする。

 それか、作戦行動中に失敗したのはお前だろで押し付ける。


「そもそもさ。作戦行動中の治療や食費だろ、軍備に関する諸経費で落とせないのか?」

「団長と言えども一人で高額を使い込んだら首ですよ首。下手すると物理的に飛びますよ」


 そりゃ、切り詰めて行動しないと出費が凄そうだものな。万人単位での作戦行動だろうし、普段なら各個人の食費は個人負担だが、この場合は全部国が負担する訳だ。1日作戦行動が長引くだけでも相当な負担になるはず。そりゃ、国王が切れるな。


「ふむ。それじゃさ。【クリーン】の代金は必要無いけど。【オールキュア】を3度と【グレーターヒール】を5度も使ったんだよね。払えるの?」

「そ、それは……」

『テリスト。奴隷落ちするようなら身請けなさい。それで我が家にこの子が来てくれます!』

 それはそうだが、貸し出したら奴隷に落ちたって洒落にならんな。発狂しそうだ。


「まったまった。アルフォンス殿の手前、そんな事言わないの。そもそも交渉すら開始してないんだから先走らないの」

「テリも少しは大人になった様ね。偉い偉い」

「アリサ。もしかしてけなしてる?」

「褒めてるのよ」

「はぁ、まあいいか。それは良いが。そこの鳥! いい加減に樽から頭を出せ。飲み過ぎて飛べませんとか言い出したら、足を吊って運ぶからな」

『クルルルァ!』


 間髪入れずに顔を出して抗議して来るが非常に怪しいのよね。話せるんじゃないのかこのグリフォン。


「そうですよね。きちんと飛べますか? また【オールキュア】のお世話になっては、ご主人様の支払額が増えますよ。今でも支払えない金額ですが。貴方を売却して清算するかもしれませんね」

『クルルルッ』


 結構凹んだのか。頭が下がって元気をなくしたのだった。


「交渉次第でどう転ぶか分からないし、脅さなくて良いって。これ以降はこの子の速度に合わせて飛んで行くぞ。例の狙撃手、絡まれたら仕留めて行くから上空を突っ切るぞ」

「あ、あの。若干ズレて飛んで行くのは……」

 対処すると言ってるのにこの反応はトラウマになってそうだな。


「そこは任せる。俺は身を晒していくけどな。攻撃してきたら排除しておくわ。もし勇者だったら強制運用状態だろうから解放する」

「そう言えばヤヨイの同期が何名なのか聞いてませんね」

「確認しても無駄じゃないか。戦闘に不向きであろうと戦争に投入するぐらいだし。特に優秀な人材なら送り込むだろうしな」

『考えても結論は出ないわよ。そろそろ行きましょう』


 エレクティアに急かされる形で出発するのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。