表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイオリンの恋人  作者: ひとみんみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/15

11.音楽祭ステージ

………私はずっと練習をし続けていた。

もう学校に居るのか、家に居るのか。


時々、誰かが私の手を握って私を移動させてくれている。

握られた手が暖かくて、その時は多分私は笑っていたと思う。


まるで吹雪の中で灯りを見つけたようだった。

その手が私を導いてくれたら大丈夫。


………。

…………。

……………。


何回目になるかは分からない。

いつも私を握っている手が、いつもと違う場所に導いた。

喧騒に包まれて、階段を上がり眩しい光に包まれた。


「あっ………」


急に手が離れた。

寂しくて手を探すと、代わりにバイオリンを渡された。

私の大事なバイオリンの感触に笑みが零れる。


ふと、思い出した。

バイオリンは親が買ってくれた。


名の通ったバイオリンの写しだけれど、とても音が響いて華やかな音が出る。

4/4バイオリンが持てるようになった頃、さっそくおねだりしたわ。

高かったのだけれど、あまり物をねだらない私のお願いを聞いてくれた。

しょうがないな、と微笑んで買ってくれた。

勉強や稽古事を疎かにしないようにします、と私から約束したの。


ああ、ちゃんと私のお父様とお母様は私を応援してくれていた。


「大丈夫。僕はすぐ近くで伴奏するから大丈夫だよ」


笑顔が少し離れた所へ遠ざかる。


私は自然にすっとバイオリンを構えた。


ピアノの前奏が聞こえ始める。


さあ、最初は冷たい吹雪の音。

それはいつも聞こえているから大丈夫。

固く冷たい音を出すのは大得意なの。

冷たく凝り固まった私の雪を表現するだけだから。


難しい事はない。


私は私。

春なんていらない。


雪は降り続ける。


けれど………。


そっと、暖かい笑顔のある方向を見る。

寒い冬の中にも暖かさはある。

ずっと握られる手の温もり。


柔らかいタッチで、暖かさをそっと表現する。


冬の美しさ。


吹き付ける吹雪の白一色。

キラキラ輝く大気。

厳しい白の迫力。


その一方で、寒さの中の火の暖かさ。

繋いだ手の温もり。


私は私で、春なんていらないけれど。


やがてそんな私でさえ包み込む春がやってくるの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ