15衝撃
真摯に彼を見つめる璃久の眼を、薫森は物珍し気に見て、小さくため息をついた。
「お前、小学生の時のこと、何か覚えてるか」
「え」
藪から棒に出された話題に、璃久は怪訝そうにする。薫森が目線で促すと、璃久は仕方なく過去に思いをはせた。小学生と言えば、特に不自由もなく、当たり障りのない生活をしていたような気がする。帽子の中に桜の花弁を集め、木漏れ日の映った地面を光を踏まないようにして飛び跳ねて進んだ日々。
気が付けば中学生になっていたもので、ぼんやりと生きていたのだなということが思い出された。
「そりゃ、覚えてますけど……今の話に関係あります?」
「あるんだよ、本来はな」
薫森は煙草の箱を胸ポケットにしまうと、璃久の左側にある窓を、どこか遠くを見るような愁いを帯びた眼で見た。後悔、悲哀、そんな感情が滲んだ眼だった。開け放たれた扉から入ってきたさわやかな風にも、この空気を変えることはできない。
「そいつ、どんな服装だった?」
「えぇと……黒っぽいチェック柄のシャツに、灰色のスラックスでした」
「……そうか」
薫森はそれだけ呟いて、窓から璃久に視線を移した。
「璃久、あの祠に祀られてる……ミュオの歴史を知りたいんだったな」
璃久は真剣な眼差しで頷いた。ミュオが何者なのかを、ずっと空っぽで寂しがっている神様の隙間を、埋めてあげたいと強く思っていた。
「じゃあまず、知らなくちゃいけないことがある」
直感で、告げられる言葉は意外なものだと感じとり、璃久は薫森の眼を見つめる。薫森が言葉を紡ぐために息を吸う瞬間が、妙にゆっくりに感じられた。
「あいつはな、神じゃない」




