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寂神様〜自称神様のお兄さんと出会った男の子が友情を知るまで〜  作者: 鮎ヶ瀬お米


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14/21

14薫森

 あの後、それでも良いと言った璃久と拒否したミュオで話し合った結果、とりあえずはミュオが記憶を取り戻すまで神隠しは行わないようにしよう、ということになった。


 璃久が神隠しにあってからでは学校の文献などで調べられないし、もしもミュオが璃久を連れて行ったときに璃久まで記憶を失っては、元も子もないからだ。それに第一、触れれば魂を吸うことができると言うのも予想であり、実際はどうかもわからない。


 とはいえ、ミュオの記憶がない以上、調べようにも調べが付かず、調査は停滞していた。そこで、璃久は長く公園の管理人をしている薫森に聞けば何か分かるのではないかと目星をつけ、尋ねてみることにした。


 薫森と璃久は、璃久が学校から家へ帰るときに良く訪ねていたため仲が良かった。薫森は崖の下の公園の奥にある小屋、というよりは物置を空にして椅子を置いたところでよく煙草をふかしており、璃久は小学生のころからよく話していた。

 薫森は大学院生で、アルバイトも兼ねてよしみで管理人をしているとのことだった。


「薫森さん、こんにちは」


 ミュオと会う前は、学校の帰りにほぼ毎日通っていたのだが、近頃は話せていない。そのため少し緊張しつつ、学校の帰り、階段の踊り場へ行く前に小屋の戸を叩く。


「おお、璃久。生きてたか」


 戸をあけた薫森は、前と変わった様子もなく璃久を出迎えた。灰色の作業着は彼の凛々しい顔には似合わないけれど、見慣れた光景なので璃久は気に留めなかった。相変わらず煙草を咥えており、窓を開け放っていても小屋の中は煙たそうだ。


「ええ、最近は立ち寄れなくて……。でも、今日は聞きたいことがあって来たんです」

「へえ、俺に答えられることなら、何でもいいぞ。彼女の作り方と宇宙の始まりについて以外な」


 璃久と共に中に入って、椅子に落ち着いた薫森がまだ残りのある煙草を灰皿に押し付けながら言う。璃久が来るといつも煙草をやめてくれるのは、きっと彼の優しさだろう。


「ええと、この公園の上へ続く階段の踊り場にある祠についてなんです」


 璃久がそう言うと、薫森の動きがぴたりと止まった。そして、何も言わずに灰皿に落としていた目線をゆっくりと上げる。その眼には驚きと動揺がありありと浮かんでおり、彼が祠に関して何かしらを知っているということが見て取れた。


「……何を、知りたいんだ?」


 努めて普段通りの声で呟く。しばらくそのまま璃久を見ていた薫森は、意味もなく胸ポケットから煙草の箱を取り出し、受動喫煙に対する注意書きを眺めた。箱が訴えるには、健康増進法により禁じられている場所では喫煙ができないらしい。この公園はどうだったか、そういえば薫森は知らないと思い出した。


「あそこに祀られている神様の歴史とか、知りませんか?」


 小さな現実逃避から呆気なく引き戻された薫森は、神様の歴史、と呟いた。小屋の中に充満した吸いなれた銘柄の煙草のにおいが、普段ならば居心地が良いはずなのに嫌に喉に絡まる。

 璃久はそのまま、学校帰りにそこに人がいたこと、彼はミュオと名乗り、神様だと言ったこと。そして、記憶がないのだということを話した。薫森は煙草の箱から璃久に眼を移し、怪訝そうな眼で璃久を見た。


「それ、ただの変人じゃないのか」

「なっ」


  璃久としては大真面目なのに、大切な友を変人と一蹴されて少し腹が立った。しかし、すぐに薫森の言っていることも正しいと思いなおす。百聞は一見に如かず。自分で見るまで、話に聞くだけでは信じられるはずがないのだ。


「そう思うのもわかります。けど、彼は本当に人ではない。会えばわかりますよ」


 真摯に彼を見つめる璃久の眼を、薫森は物珍し気に見て、小さくため息をついた。

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