12濃縮還元
「……ああ、そうだな。結局最後に笑ってるのは俺たちだ」
友人はグラスを傾け、オレンジジュースを飲みこむ。いつもより酸味が強く感じた。
「それで……どうしよう」
青年もオレンジジュースを飲んだ。熱を持っていた体が内部から冷やされていく。
「噂だろ? なくなるのを待つとか……」
「それじゃあ時間がかかる……その間に工事が始まるかもしれない」
友人は肯定したが、他の案は思いつかないようだ。青年は腕を組んだ。深く考え込む。
「……いっそのことイベントをやるとか?」
「ええ?」
友人は青年の現実味のない発言に、またか、とさして驚きもせずに目線だけよこした。しかし青年はいつも通り本気のようで、真剣な眼差しで友人を見つめる。
「公園あたりで環境保全のイベントをすれば噂なんて取っ払えるし、その場で署名してくれる人もいるかもしれない」
「それは確かにできたら良いと思うけど……俺ら二人でイベント運営なんて無理だろ」
友人はそこで一口オレンジジュースを飲んだ。
「最悪噂がなくなるのを待つより時間がかかるし、現実的じゃないと思う」
「そうか……」
青年も流石に無理だと思ったのか珍しくそこで引き下がり、また腕を組んだ。
「今は、今まで通り署名を集めるのが一番なんじゃないか?噂の回り具合もわからないし」
「……確かに、噂を信じていない人もいるかも」
友人は頷き、さらに考えを捕捉する。
「出なかったらインターホンを二回押すとか、地区自体を二周するとか、やりようはあるさ」
「そうだよね……!」
青年は移動して友人の肩を叩き、久しぶりに笑顔を見せた。
「それで、この工事阻止したらイベントもしようぜ。そのが人も集まる」
驚いて友人を見た青年に、にやりと笑いかけて、友人はサムズアップした。青年は、非現実的だと言いつつも完全には彼の考えを否定しない友人に、たまらない喜びを感じて、強くうなずいた。
「あとさっきから思ってたんだけどさ、このオレンジジュース、薄くないか?」
「君のは濃縮還元のやつを水割りしたからかな。前オレンジジュースにケチつけたでしょ」
「濃縮還元の意味よ。あとそれは悪かった」




