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婚約破棄、結構ですわ。ただし私が裏で支えていた王室予算三万枚、今すぐ一括返済してくださるかしら?  作者: 朝比奈ミナ


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第57話:『本社株主総会。わたくしの議決権、一割(すべて)を賭けさせていただきますわ』

「――無礼な。警備ユニット、その原住民の女を直ちに排除しなさい!」


 銀色に輝く円形ホール。全次元から集まった「セクター代表者」たちが居並ぶ、宇宙運営総本部の中心地。

 宙に浮く玉座から、アルファCEOの怒声が響き渡りました。

 武装した漆黒の監査ロボットたちがわたくしを包囲しますが、わたくし――エレノラ・フォン・ロスタールは、冷たい銀の床をヒールで鳴らし、一歩も引かずに扇を広げました。


「あら。排除? ……それはどの口がおっしゃるのかしら、アルファ様」


 わたくしが指を弾くと、わたくしの背後に控えていたシエルが、一束の黄金に輝く「委任状」を宙に展開しました。


「この会場に集まった三千のセクター代表者のうち、既に八割がわたくしに『全議決権』を委託しておりますわ。……今、この場所で最も力を持っているのは、あなたではなく、このわたくし。……警備ユニットの方々。……『不法侵入者』は、あちらの玉座に座っている男ですわ。早くつまみ出しなさいな」


 わたくしの言葉に、監査ロボットたちの電子眼が赤から青へと切り替わりました。

 システムが、わたくしの保有する『過半数の議決権』を正当な権限として認証したのです。


「な……っ!? なぜだ、なぜ他のセクター代表がお前に従う!」


「簡単なことですわ。……あなたが管理を放棄し、『不良債権』として切り捨てようとしていた彼らのセクター。……それをわたくしがすべて『債務整理』し、黒字化の再建計画を提示して差し上げましたの。……絶望の中で神の慈悲を乞うていた彼らにとって、わたくしの『具体的な融資案』は、あなたの安っぽい加護よりも遥かに魅力的だった……ただそれだけのことですわ」


 議場に集まった代表者たちが、次々と立ち上がり、わたくしに向かって深く頭を垂れました。

 かつては神の怒りを恐れていた彼らの瞳には今、新しいオーナーへの期待と、圧政者への軽蔑が宿っています。


「ふざけるな! 私はこの宇宙の管理者だ! 私がいなければ、このシステムは崩壊する!」


「崩壊? いいえ、正常化ですわ。……シエル、第二の証拠を」


「……承知いたしました、お嬢様。……CEOアルファによる、次元間エネルギーの『架空循環』および、個人用サーバーへのマナ流用の全ログ。……今、メインスクリーンへ出力いたしますわ」


 ホールの巨大な天球モニターに、複雑に絡み合った光の線が表示されました。

 それはアルファが長年行ってきた、あまりに杜撰な粉飾決算の地図。


「……なんてことだ。我々の命のマナが、こんな場所へ……」

「神だと思っていた男が、ただの泥棒だったのか!」


 議場が怒号に包まれました。

 アルファの顔が、恐怖と屈辱で土色に染まっていくのを、わたくしは最高に優雅な微笑で見届けました。


「アルファ様。……あなたは、この世界を自分の所有物だと勘違いなさいました。……ですが、この宇宙運営総本部は、各セクターの幸福を積み上げるための『器』に過ぎません。……顧客じんるいを欺き、資産を私物化する経営者に、もはや座る椅子などございませんわ」


 わたくしは壇上へ上がり、最高位の認証コンソールへ手を触れました。


「定款第1条に基づき、現CEOアルファの解任決議を採決いたします。……賛成の方は、ご自分のマナをこの議場へ!」


 一瞬。

 会場が、数千のセクターから寄せられた、眩いばかりの光で満たされました。

 圧倒的な、文字通りの『全会一致』。


『――認証。……CEOアルファ、解職。……全権限を剥奪。……直ちにシステムからのパージを開始します』


 無機質なアナウンスと共に、アルファが座っていた玉座が黒いノイズとなって崩れ去りました。


「あ、あああぁぁぁっ……! 認めない、認めないぞ! 私は……私は創業者ファウンダーに選ばれたのだぁぁっ!」


 アルファの身体がノイズに侵食され、足元から消えていきます。

 彼はわたくしを呪うように指差し、消えゆく間際に血を吐くような叫びを残しました。


「……笑っていられるのも、今のうちだ、エレノラ……! 本社が『空席』になれば……あの方が目覚める……! お前たちが『セクター000』と呼ぶあの地獄を作った、真の怪物がぁぁ……!!」


 その言葉を最後に、アルファの存在はシステムから完全に「削除」されました。


 静寂が戻った議場。

 わたくしは、誰も座らなくなった中心の演壇に立ち、乱れたドレスを整えました。


「……あら。……随分と物騒な置き土産を残していかれましたわね」


 わたくしの視線の先。

 メインモニターの奥底で、今まで見たこともないような『漆黒のコード』が、ゆっくりと胎動を始めているのが見えました。


「ショウ様。……今の、聞こえましたかしら?」


「……ああ。……セクター000……地球を作った『真の怪物』か。……エレノラ、どうやらここがゴールじゃなさそうだ。……本社の最深部に、まだとんでもない『負債の親玉』が眠ってやがるぜ」


「ふふ、望むところですわ」


 わたくしは、不安げな表情を浮かべる代表者たちを勇気づけるように、扇を力強く広げました。


「皆様、ご安心なさいな。……幽霊ファウンダーが目覚めようと、わたくしの監査からは逃げられませんわ。……本日より、この宇宙運営総本部の『臨時管財人』は、このわたくしエレノラが務めさせていただきます。……さあ、宇宙の全ての帳簿を、わたくしの前に持ってきなさいな。……本当の『大掃除』は、これからですわよ!」

お読みいただきありがとうございます!

「神の議決権を奪い、CEOをコンプラ違反でパージする」。

どれほど偉そうな神様も、全セクターの『委任状』を集めたエレノラ様の前では、ただのクビになった管理職に過ぎませんわ。

玉座がノイズとなって消える瞬間、最高にスカッとしていただけましたでしょうか。


しかし、アルファが最後に残した「真の怪物ファウンダー」の影。

ショウの故郷・地球を廃棄した張本人が、ついに動き出します。


「『いいえ、あなたは解雇された労働者ですわ』の一言、痺れました!」

「宇宙全体の管財人に就任とか、エレノラ様の出世が止まらない!」

そう思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の評価が、エレノラ様が「真の怪物」を買い叩くための、宇宙規模の資本金となりますのよ!


次回、第58話は『創業者ファウンダーの覚醒。世界を「失敗作」と呼ぶ感性、査定させていただきますわ』。

物語はいよいよ、宇宙の真の理に迫る最終決算へ。お楽しみに!

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