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婚約破棄、結構ですわ。ただし私が裏で支えていた王室予算三万枚、今すぐ一括返済してくださるかしら?  作者: 朝比奈ミナ


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第54話:『多次元艦隊の襲来。迎撃の狼煙は、すべて「特許無効化」で上げなさい』

CEOアルファのホログラムがノイズと共に消え去った直後、至天宮の空が『黄金』から『漆黒』へと反転しました。

 それは夜の訪れではありません。セクター105の全天を、宇宙運営総本部が誇る「多次元制裁艦隊」が一瞬にして埋め尽くしたのです。


「……エレノラ。これ、マジでヤバいぞ。一万隻……いや、それ以上の反応がある。あいつら、全次元のリソースをかき集めてやがる……!」


 ショウ様が震える手で端末を操作しています。彼の顔は、先ほどの「セクター000の廃棄物」という言葉に打ちのめされたまま、青白く引き攣っていました。


「ショウ様。……その情けない顔を、今すぐお止めなさい。わたくしのドレスが曇って見えますわ」


「……っ、でも、俺は……本社の言う通り、ただの失敗作の……」


「あら。……それはどの口がおっしゃるのかしら?」


 わたくし――エレノラ・フォン・ロスタールは、司令室のモニターに映し出された一万隻の『神の軍勢』を一瞥し、ショウ様の胸ぐらを掴んで、その鼻先に扇を突きつけました。


「『セクター000(地球)』が失敗作? ……ふふ、笑わせないでくださいな。……あの方たちが自分たちのルールで管理できなかったものを、すべて『失敗』と呼んでいるだけですわ。……わたくしにとっては、物理法則だけで進化し、神の手を借りずに宇宙を覗いたあなたの世界の知識こそ、最も価値ある『超優良資産』ですのよ」


 わたくしは彼を引き寄せ、その耳元で最高に不敵な、そして熱い信頼を込めて囁きました。


「誰が何を言おうと、あなたはわたくしが『買い叩き』、わたくしが『価値』を認めた、世界で唯一の戦略パートナーです。……本社(前のオーナー)の評価額など、今すぐゴミ箱へ捨てなさいな」


「……エレノラ。……ハ、ハハ。……あんたにそう言われると、なんだか本当に、本社の方がバカに見えてきたよ」


 ショウ様の瞳に、知性の灯が戻りました。彼は眼鏡を押し上げ、コンソールに指を踊らせ始めました。


『――セクター104・105の全住人へ告ぐ。……貴殿らは本社の資産を不当に占拠している。……これより、物理的排除デリートを開始する』


 空を埋め尽くす一万隻の黄金艦から、一斉に目も眩むような白い光が放たれました。

 それは対象の存在を定義レベルで消し去る、本社の最終兵器。


「シエル。……関税の『徴収準備』はよろしいかしら?」


「はい、お嬢様。……敵艦隊の使用しているマナ・プロトコル。……すべて、ミネルヴァ様から接収した『旧・管理権限』のパスを逆用し、こちら側の『中継手数料』を課金する設定に変更済みですわ」


 わたくしは扇を広げ、迫り来る「無」の光を迎え撃ちました。


「ショウ様、実行なさい!」


「おう! 特許無効化パブリック・ドメイン宣言、全次元へ同時送信! ……あんたらが撃ってるそのビーム、俺たちの世界の『電磁気学』の盗作だ! 特許料払わねえんなら、その接続、こっちで『遮断』させてもらうぜ!」


 ――ビキィィィィィィィィンッ!!


 空中で、白い光がガラス細工のように粉々に砕け散りました。

 それだけではありません。一斉射撃を行った直後の一万隻の黄金艦が、不快な電子音を立てて火花を噴き、その場に停止しました。


「な……っ!? なぜだ、なぜエネルギーが供給されない!」

「こちらの演算回路が……逆流している!? バカな、原住民のハッキングだと!?」


 通信回線から漏れ聞こえる、管理官たちの悲鳴。


「あら、驚くことではなくてよ。……あなたたちが誇るその艦隊。……動かすために必要なマナは、このセクター105の『供給基地』を経由していたはず。……ですが、このセクターのオーナーは、現在このわたくしですわ」


 わたくしはモニターの中の、動けなくなった巨大な鉄屑たちを嘲笑いました。


「わたくしの私有地を汚そうという不届きな艦隊に対し、エネルギーの供給をする義理などございません。……現在、あなたたちの艦隊には、通常の三万倍の『接続維持費』と、不法侵入による『賠償金』が、一秒ごとに課金されていますの。……支払えぬなら、その艦体、わたくしが『しち』として差し押さえさせていただきますわ」


 一万隻の無敵の艦隊が、エレノラの提示した『請求書』の重みに耐えかねるように、次々と高度を下げ、地に落ちていきました。


「……準備はすべて整いましたわ。……アルファ様。……武力でわたくしを黙らせようとした代償、高くつきますわよ?」


 ですが、モニターの奥。

 墜落していく艦隊を見捨て、アルファの冷徹な声が再び響きました。


『……ふん。エネルギーの遮断か。……面白い小細工だ。……だが、エレノラ。君は忘れているな。……リソースとは、マナや金だけではない。……君の最も大切な『資産』……セクター104に住む、君の民たちの「記憶」と「心」。……それを本社のバックアップに強制転送バックアップしたら、彼らはどうなるかな?』


「……なんですって?」


『次話。……君の夫も、君の臣下も、君を「誰だか忘れた敵」として認識することになるだろう。……さあ、君の帝国が、君自身を拒絶する「地獄の監査」の始まりだ』


 宇宙運営総本部の、最も卑劣な『精神の差し押さえ』。

 わたくしの瞳に、初めて暗い炎が宿りました。

お読みいただきありがとうございます!

「一万隻の神の艦隊を、関税と接続料の未払いで全機停止させる」。

武力の勝負を「不法侵入の賠償金」にすり替えるエレノラ様、いかがでしたでしょうか。

ショウを「唯一無二の資産」と呼び、本社の評価をゴミ箱に捨てるシーン……これこそが、彼女なりの愛と信頼の形ですわね。


しかし、物理攻撃が効かないと悟ったアルファは、ついに「全人類の記憶の強制転送」という禁じ手に出ました。

最愛の夫も、信頼する部下も、エレノラを忘れてしまう……。


「ショウへの励ましが最高に格好いい!」

「一万隻の艦隊がガス欠で落ちるシーン、スカッとした!」

そう思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の評価が、エレノラ様が民の「心」を買い戻すための、魂の鑑定力クレジットになりますのよ!


次回、第55話は『資産凍結? いいえ、わたくしの愛は「非売品」ですわ』。

記憶なき帝国との絶望的な戦い。……ですが、エレノラ様が折れるはずがございませんわ!

お楽しみに!

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