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婚約破棄、結構ですわ。ただし私が裏で支えていた王室予算三万枚、今すぐ一括返済してくださるかしら?  作者: 朝比奈ミナ


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第36話:『魔法は通貨、奇跡は負債。世界システムの裏帳簿を公開いたします』

「……これを、外へ流すのか? エレノラ、そんなことをすれば、世界中の人間がパニックを起こすぞ!」


 ショウの悲鳴のような問いかけに、わたくしは扇を優雅に閉じ、地下室の天井を仰ぎ見ました。その先には、何も知らずに『神の恵み』を待つ帝都の民たちがいます。


「あら。パニック? いいえ、これは『適切な情報の開示ディスクロージャー』ですわ。……シエル、帝都の全街頭スクリーン、および旧教会跡地の魔導投影機をすべてジャックしなさい。……魔法が使えないなら、ショウ様の『有線式信号機』を使いましょうか」


「……御意。接続完了いたしました。大陸全土の通信中継地点、帝国の管理下にあるノードをすべて物理的にロック。……全世界、強制配信開始です」


 シエルの冷徹な指先が、ショウの設計したレバーを引きました。

 次の瞬間。

 帝都の夜空、そして大陸の主要都市の広場に、巨大な光の幕が浮かび上がりました。


 そこには、ハッキングによって得られた『世界の収支決算書』が、わたくしがショウに描かせた「最も残酷で分かりやすいグラフ」として映し出されていました。


「――帝国市民、ならびに大陸の全人類の皆様。こんばんは」


 わたくしの声が、街中の拡声装置を通じて響き渡りました。

 混乱する群衆、呆然とする騎士たち、そして絶望的な表情で空を見上げる管理者のリン。


「皆様が日々、神の恵みとして享受している魔法。そして病を癒やす奇跡。……それらが、どの程度の『コスト』で運用されているか、ご存知かしら?」


 グラフが赤く明滅します。

 一つの『治癒魔法』に対し、削られる寿命の目盛りが、残酷なまでに明確に示されました。


「衝撃の真実ですわ。……あなたが魔法で灯りを灯すたび、あなたは自分の余生を数時間、管理者に支払っています。……大規模な奇跡を願えば、それは数年分の命という名の『超高金利融資』。……管理者は神ではありません。皆様の命を燃料にして、世界の恒常性を維持しているだけの、極めて効率の悪い『経営代行者』に過ぎませんのよ」


 帝都から、地鳴りのようなざわめきが上がりました。

 それは恐怖ではなく、何世紀にもわたって騙され、搾取されてきたという激しい『憤り』。


「不敬だ……! エレノラ・フォン・ロスタール! その口を閉じろ!」


 リンが叫び、黄金の光を放ってわたくしに襲いかかろうとしました。

 ですが、彼女が放とうとした攻撃魔法――管理者専用の消去コマンドは、不発に終わりました。


「……っ!? なぜだ、なぜ出力が上がらない!」


「あら、リン様。……市場マーケットを見てごらんなさいな」


 投影されたグラフの横に、もう一つの数字が浮かび上がりました。

 『マナの総供給量』。それが、滝のような勢いで急落しています。


「皆様! 魔法という名の『欠陥商品』の使用を、今この瞬間からボイコットなさい! ……命を削ってまで灯す灯りに、何の価値がありますの? ……祈るのを、魔法を練るのを、今すぐに辞めるのです。……供給が止まれば、この不当な契約は成立いたしませんわ!」


 わたくしの扇が、空を指し示しました。


 ――次の瞬間。

 帝都を覆っていた魔法の残光が、ぷつりと糸が切れたように消え去りました。

 数万、数十万の民衆が、本能的に理解したのです。魔法を拒むことこそが、自分たちの命を守る唯一の「防衛手段」であると。


「……ば、バカな……。管理プロトコルが……信仰という名のエネルギー回収が、ゼロになるだと……!?」


 リンが膝を突き、震える手で空を仰ぎました。

 世界を動かしていた『魔法』という名の通貨が、全人類による一斉売却(パニック売り)によって、一晩で価値を失った。


「リン様。……これが、わたくしが仕掛けた『神へのストライキ』ですわ。……さて、エネルギー源を失った黄金国のシステム。……維持費だけが嵩むこの巨大な『負債』を、あなた方はどう処理するおつもりかしら?」


 わたくしはゆっくりとリンに歩み寄り、彼女の冷え切った手に、一枚の『買収提案書』を握らせました。


「倒産寸前の経営者に残された道は、二つ。……この大陸すべてを巻き込んで無理心中リセットするか。……それとも、わたくしの管理下に入り、命を消費しない『新秩序ニュー・スタンダード』の共同経営者になるか。……どちらがお得か、計算は得意でしょう?」


 リンの瞳に、初めて恐怖が宿りました。

 わたくしが清算しようとしているのは、もはや金や領土ではありません。

 『生』と『死』の価値そのものを、わたくしの帳簿に書き換えようとしているのです。


 しかし。

 地下演算室のモニターに、不吉な警告音が鳴り響きました。


「……お嬢様。上空、大気圏外より高出力の熱源が接近中。……黄金国(本社)の『強制清掃クリーニング』シグナルを受信しました。……管理者が、この大陸を『不採算部門』として、物理的に焼却しようとしています」


 あら。

 交渉のテーブルを蹴飛ばして、力ずくで損切りに走るおつもりかしら。


「……ふふ。いいでしょう。……陛下、ショウ様。……神が放つ『最終的な差し押さえ(滅び)』。……それを、わたくしたちの技術と資本で『迎撃ブロック』いたしますわよ」


 準備は、すべて整いましたわ。

 神様。……あなたの放つ『天罰』という名の負債。……わたくしがすべて、この大陸の『防衛資産』として飲み込んで差し上げますわ。

お読みいただきありがとうございます!

「魔法をボイコットする」。

絶対的な恩恵を「使うほど損をする欠陥商品」に格下げし、全人類を味方につけて神をストライキに追い込むエレノラ様、いかがでしたでしょうか。

寿命を利子にするという悪魔のような契約を、会計士の視点で粉砕する様、スカッとしていただけましたでしょうか。


しかし、管理者の本社(黄金国)は、もはや交渉ではなく「大陸そのものを消去する」という荒技に出てきました。

上空から迫る天罰を、魔法なき人類がどう防ぐのか。


「神への不信任決議が最高に不敵!」

「ショウの作った迎撃兵器が見たい!」

そう思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたします!

皆様の評価が、エレノラ様が天罰を撃ち落とすための「迎撃ミサイル(物理)」の予算になりますわ!


次回、第37話は『全人類による「神のボイコット」。祈りを止めて実利を取りなさい』。

空から降る滅びを、エレノラ様が「買い叩く」衝撃の展開をお楽しみに!

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