相克の剣
鍔迫り合いをして、互いに圧し合う二人。
睨み合う、双眸。
軋む金属音。
平行世界の海斗は、
「お前だって、チャームのスキルや異世界へのトンネルを作る魔法が使えると世間にばれれば、俺のように疎まれ殺される運命になるぞ。それでもいいのか、海斗!」と叫ぶ。
「確かにそうかもしれない。しかし、それでも俺はこの世界で生きると決めた。俺には裏切れない仲間たちがいるからだ。たとえ、そういう状態になったとしても何とかするさ、信頼している仲間たちと一緒に。今までのようにな!」
「とんだ楽天家のお坊ちゃまだな、海斗。友達ごっこか? 人は利用できるうちはチヤホヤするが、もう必要ないとわかれば平気で裏切る。そういう動物なのだ。特にこの異世界の住人はな!」
「カイアン、だからどんな手段をとっても千葉に帰るというのか。関係のない者を召喚し殺し合いをさせ、それを利用する。欲しい情報を得るために、関係のない巫女を廃人にすることを厭わない。挙げ句の果てには、それを行えば多大な被害が元いた世界にも出るかもしれないのに、躊躇だにしない。それでは、お前が嫌うこの世界の住人と何が違うのか!」
「えーい、うるさい! 俺と結衣にはこの世界ではもう安心して暮らせる場所がない。安心して結衣と暮らせる居場所が欲しい。それが元いた世界である、ただそれだけのことだ!」
「お前の境遇に関しては同情する、カイアン。しかし、だからといって、何でもしていいと言うことにはならない。俺はその手段を選ばないお前のやり方だけは絶対に認めない!」
平行世界の海斗の脳裏に、苦い過去の記憶がよぎった。そして、青臭い理想論を振りかざす海斗に怒りを覚えた。
「青二才のお前に、人から裏切られた者の気持ちはわかるまい——俺は信じて強くなるために剣を振り続けた。そして、魔王を倒した。だが、その結果は――無用の長物以下の扱いだった。俺は利用されたから、利用し返す。それの、何が悪い!」
「最後まで意見が合わなさそうだな、カイアン!」
そういうと海斗は鍔迫り合いをやめて、間合いを取るために後ろに跳んだ。平行世界の海斗はすかさず魔法を唱えた。海斗におびただしい数の氷の矢が飛ぶ。海斗は構わず、
「炎の精霊よ、我が剣に地の底に眠る炎の一部を分け与え給え、火炎斬、最大出力!」
地を這う爆炎が平行世界の海斗を襲う。海斗に向けて放たれた氷の矢は爆炎に触れると次々と融解していった。
平行世界の海斗は
「また、懲りもせず火炎斬か。いくら出力を上げても俺には通用しないぞ、頭の悪い奴め!」と吐き捨てると、
「水の精霊ならびに冬の精霊よ、その聖なる水を凍てつかせ我が楯とせよ、アイス・ウォール!」
と詠唱して氷の障壁を海斗との間に作った。
平行世界の海斗めがけて驀進してきた爆炎が氷の壁に激突する。
咆哮する獣のように氷が急速に溶ける音が響く。
気化した大量の水蒸気が霧に変わり、辺り一面に広がる。
白い闇が平行世界の海斗の視界を奪った。
「くそ、視界が。海斗はどこへ行った?」
視界を遮る霧の中で何かが動く気配。一瞬消えたかと思うと、次の刹那には背後にあるように感じる。振り向く。錯覚か? 疑心は不安をかき立て、焦りを加速させる。
平行世界の海斗は、混乱しながらも目に見えぬ相手に剣を構える。
が、次の瞬間、爆炎の後を追ってきたのか——気配を感じる間もなく、海斗が氷の障壁を跳び越え、紅蓮の炎の刃を振り下ろしてきた!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
理想と現実。信じる者と裏切られた者。
正道を行く者と、手段を選ばない者。
互いに『自分の正義』を掲げる者同士の戦いに決着がつこうとしています。
そして、アリシアと結衣の戦いの行方は──。
この物語も、残すところあと二話となりました。
最後までお付き合いいただけると幸いです。




