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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第六章 かつて魔王を倒した男、勇者・海斗

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明かされた真実――二人の断絶

「カイアンのスパイ……。本当、本当なのか。嘘だ、嘘だと言ってくれ、結衣!」

 結衣はフンと言いながら、

「事実を受け入れられない男は嫌いよ!」

と海斗達に向かってダガーを構え直した。

 海斗は体を小刻みに震わせながら

「……これまで、やたらと敵にこちらの最新の情報が漏洩していると思ったら、結衣、全部君が知らせていたのか?」

と信じたくない様子で言った。

「……教会が妙に詳しく海斗たちの動きを把握していたのも――全部あなたの仕業だったのですね?」

とエリザベスが念を押した。

 結衣は無表情で

「だから何?」

と疑問で返す。感情を押し殺した《《平行世界》》の結衣の言葉は、まるでロボットの自動音声のように聞こえる。

 信じたくない。

 けれど──結衣に抱いてきた違和感は、今この瞬間、残酷なほどに腑に落ちた。


 海水浴場で心肺停止になった筈なのに、森の中で俺を起こした結衣。

 少し大人びた感じに見えた結衣。

 セリフィアで宿屋の二階から飛び降りた際に予想以上に軽やかに着地した結衣。


「盗賊であったことを隠していたのも、スパイであることを隠すためか?」

 一瞬結衣は話すかどうか迷ったようだった。が、既にスパイであることが露見しているせいか一息つくとこう言った。

「そうね、それもあるけど、あなたに戦闘の経験値を稼いでもらうためよ。私が盗賊として手を貸していたら、いつまで経っても一人前の魔法剣士になんかなれないでしょう?」

 海斗はその言葉を聞いて、沸々と怒りが湧いてきた。おかげで何度も死にかけたのだ、自分も仲間も。そして、やらなくても良かった戦闘という名の人殺しに手を染めた。……しかし、次々と湧き上がる疑問の答えを聞きたい衝動には勝てなかった。海斗は一旦息をのむと

「なぜ、俺を魔法剣士として成長させようとした? 目的は何だ……ひょっとして、先程の古代魔法を発動させるためか?」

と聞いた。

 結衣はカイアンの方を見た。カイアンは不敵な笑みを浮かべながら頷いた。

 教会の敷地に寒風が吹く。

 アリシアたちは黙って、海斗と結衣のやりとりを息をのんで聞いている。

 結衣は海斗の方に向き直して

「その通りよ。私とカイアンが元いた世界に帰る目的で、あなたに、私たちの世界に通じるトンネルを魔法で作ってもらう。そのために戦闘の経験を積んで魔力を高めてもらった。……あなたが死なない程度にね」

と冷徹に言った。それを聞いた海斗は眉間にしわを寄せると

「つまり君が、俺が成長するためのお目付役をしていたということか。そして、同行するのが不自然でないように、俺同様、結衣も賞金首にした――と、言ったところか」

と、怒りの中で妙に冷静な自分に気づきながら言った。

「これだけの状況証拠から考えられる結論は、俺をこの世界に召喚させたのも――」

 海斗は剣を握りしめたまま、結衣を見つめた。

 胸の奥が焼けるように痛い。

 言葉が出ない。

 結衣は、そんな海斗をただ冷たく見返していた。

 そしてカイアンは余裕なのだろうか、


「その通り。君をこの世界に召喚したのは私だ。……異世界へのトンネルを作ることができる人材を探すのは大変だった。幾人の巫女が使い物にならなくなったことか」


と笑みをこぼしながら答えた。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。


 ついに海斗が異世界に召喚された理由とその首謀者がわかりました。

 海斗が賞金首になっていたのは、ただただ戦闘の経験を積んで魔力を高めてもらい、カイアンらが住んでいた世界に通じるトンネルを作ってもらう、そのためだった……。


 しかし、まだ謎は残っています。

 海斗の幼馴染であった結衣はどうなったのか?

 エルシオン王国の関所でおかまの隊長にチャームのスキルが効いたのはなぜか?


 これらの謎も次回以降明らかになっていきます。


 引き続き読んでいただければ嬉しいです。

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