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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第五章 魔法研究家・アンジェリカ

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借金地獄の魔女――アンジェリカのけじめ

 請求書を読み終わると、アンジェリカは体をワナワナさせ、

「何よ、コレ! なんで私がこんな金を払わなきゃいけないのよ!? 完全にカイアンのせいじゃない!」と叫んだ。

 しかし領主の使いの者は、

「さあ、私はこの書類を渡せとしか伺っていないもので」

と答えるのみであった。アンジェリカは、

「ミーちゃん、これから領主のところに文句を言いにいくわよ。ついていらっしゃい!」

と当たり散らすように怒鳴った。

「でも、元々はアンジェリカさんが共同開発した魔法が原因ですよね」

とエリザベスは少し厳しめに言った。

「そうですよ、大体アンジェリカさんは、今回の件に関して、何もけじめをつけていません!」

と、レイナ。

「私は副作用が出ることがわかった後、ちゃんとそれ以上開発するのを止めようとしたわ。悪いのは、その後も続けたカイアンよ! ……私は純粋な研究のつもりだった。でも、カイアンは利用できれば、そんな私の考えなんてどうでもよかった……。だから、支払うべきはカイアンよ!」

「だから、そのカイアンを捕まえて、支払わせればいいっていう話だろ?」

とアリシアは突きはなすように言った。

「何よ、皆揃って。私に支払う責任なんてないわよね、ミーちゃん?」

「いや、ご主人、オイラも彼女らの言っていることの方が正論だと思うよ!」

 溺愛している使い魔に、自分の主張を一刀両断にされてしまった。これが決定打となったようだ。請求された金額を見てしばらくしおれていたが、急に思い立ったようにフフフと笑うと

「人のことを殺そうとして、ミーちゃんをさらって脅迫してきたと思えば、さらに自分の尻拭いまでさせようとするカイアン……見てなさいよ、絶対とっ捕まえてこの金、支払わせてやるんだから!」

と叫びながら、ビリビリと請求書を破った。

「まあ、そういうことだ。じゃあな!」

と手を振りながらアリシアたちは去って行こうとした。

「ちょっと待ちなさいよ。あなたたち、カイアンを捕まえるのを手伝いなさい!」

 アリシアは頭を振ると、

「そんな、義理、全くないね」

と冷たく言いはなった。レイナも

「そうですね。私たち教皇様に会いに行くのに忙しいですから」

と珍しく冷たい対応だった。エリザベスも

「まあ、自分の魔法の責任は、自分でけじめをとるべきですしね」

と手厳しかった。

 結衣だけは唇を噛みしめながら、沈黙を守っていた。顔色も未だに悪い。

 アンジェリカは慌てて、

「海斗、あなたは違うわよね。いろいろ情報を教えてあげた私のこと、見捨てたりしないわよね?」

と懇願するように言った。

「まあ、その依頼の対価および必要経費は合わせて1000ゴールドぐらいかな?」

「キッー、何よ。皆揃って。あるわけないでしょ、そんな金! そうだ、私のことを雇いなさいよ。役に立つわよ、魔法使いとして。カイアンを捕まえるまでタダ働きでいいわ!」

 海斗たちはアンジェリカをじとーと見ながら

「どうする、皆?」

と海斗が尋ねた。

「まあ、確かに戦力的には魔法使いがいると楽ですが。でも、自分がしでかしたことをあんまり反省しているようには見えないですけどね」

「私は反対だね。ダーリンを解剖しようとしたやつを味方に引き入れるなんて。大体、解剖も含めて全部開き直っているじゃないか。その態度が気にくわないね。その猫も生意気だし」

「うーん、因果応報だとは思いますが、このまま放っておいてもアンジェリカさんが自分の魔法のけじめがつけられるとも思いませんし、どうしたものでしょう?」

 ……結衣は相変わらず沈黙を守っている。

 アンジェリカは

「お願い、お願いよ。私をパーティに入れて。魔法の副作用に加えて解剖の件も、私が悪かったわ。私に非があったことを認める。それに謝罪しただけじゃダメだということもわかった。わかったから、私に自分が開発した魔法のけじめをつけるチャンスをちょうだい!」

と懇願した。

 ようやく、その言葉が出たか、と海斗は思った。

「オイラからもお願いするよ。きっとカイアンは君たちが教皇に許しを得ることを邪魔してくる。その時に教会内部の事情やカイアンのことをよく知っているご主人が役に立つと思うんだけどな~」

 海斗はそれを聞いて、

「まだ教会の内部通報者との連絡は生きているのか?」と尋ねた。

「生きてる、生きてる。きっと役に立つわ。いえ、私、絶対に役に立ってみせます!」

 海斗は少し考えたが、

「なあ、皆、俺も解剖されかけたことを忘れたわけではないが、教皇に接触するにもコネや情報もいる。加えて、このパーティには魔法使いがいない。そう言う意味ではアンジェリカは充分役に立つと思う。それに彼女には支払わなければいけない多額の借金がある。その理由がある限り簡単には裏切れないと俺は思うのだが、皆はどう思う?」と言いながらレイナたちの方を見た。

「まあ、海斗さんがいいと言うのなら……でも、完全に信用したわけじゃないんですけどね」

「ダーリン、本当にいいのか? 私も信用しているわけではないけど……まあ、ダーリンがいいと言うのなら私は従うけどさ」

「いいですけど、私に変な魔法はかけないで下さいね」

 結衣は黙って首を縦に振った。例の巫女たちに出会ってから、様子が明らかに変だ。

 海斗はアンジェリカに向き直って

「よかったな。けど、教皇に会うまでタダ働きしてもらうぞ」

と言った。

「わかったわ。これで交渉成立ね!」

「オイラのことも頼むよ!」

 海斗は仲間に向かって

「じゃあ、話もまとまったところで、まずは教皇に会って俺たちのえん罪を認めてもらおう。そのために、サンクト・ルミナスへ向かう!」

と、力強く号令をかけた。

 サンクト・ルミナスには、六名と一匹の最後の戦いが待っている。


 ……パーティの最後尾を歩く結衣のすぐれない表情だけが、胸の奥に渦巻く複雑な思いを物語っていた――そして、その異変に気付く者は誰もいなかった。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 ついにアンジェリカもパーティに加わり、物語はいよいよ最終章へと突入します。


 海斗たちは無事に教皇へのお目通りがかなうのか。

 そして、カイアンはどんな動きを見せるのか。


 最終章では、これまで『謎』として張ってきた伏線をすべて回収していきます。


 最終章をお楽しみにしていただければ幸いです。

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