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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第五章 魔法研究家・アンジェリカ

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巫女救出の後で――アンジェリカに降りかかる『不幸』

 すると、使い魔が「ハイ、ハイ、湿っぽくなるのはコレでおしまい! とっとと、彼女らを保護してもらうために近くの街まで行くよ! ここで悩んでも意味ナッシング。生きているだけで人生、丸もうけ。明るくいこう~、明るく!」

と軽い調子で言った。

 ショックを隠せず、黙って何も考えられない様子の海斗を見て、アリシアが

「やい、猫! お前の言っていることは正しいかもしれないけど、ちっとは空気を読みやがれ!」

と怒鳴った。

「オイラは猫じゃなくて、猫みたいな使い魔のミーちゃんだよ。言葉にはもっと気をつけて欲しいな!」

 ミーちゃんが言った後、アリシアがぐっと拳を握ると震わせ、鼻息を荒くする。海斗はその様子を見て、ゆっくりと手でアリシアを制した。

「いや、ミーちゃんの言うとおりだ。まずは彼女達の保護が最優先事項だ。……それで、この修道院から一番近い街はどこになる?」

と、海斗が聞くと、周りは一斉に、ここが地元であるアンジェリカの方を見た。ただ一人、未だに青白い顔色の結衣を除いては。

 アンジェリカは慌てて

「そ、そうね、やはりアルティアになるのかしら……。そうよね、ミーちゃん」

とミーちゃんの方をちらっと見た。

「そうだね……。微妙な差だけど、やはりアルティアかな? でもご主人、他に言うことがあるんじゃないの?」

「……遅ればせながら、この度はミーちゃんを助けてくれてありがとう。それに……私の魔法の研究のせいで……こんなことになってしまって、本当に……その……ごめんなさい……」

と頭を下げた。アリシアは、ほうっという顔をして

「アンタも愛猫から指摘されると、素直に謝るんだな?」

と意外そうに言った。

「そこは愛猫じゃなくて、『愛くるしい使い魔』だよ、おばさん!」

 アリシアは、

「ぐぐっ……本当は喧嘩を買いたいけど、ダーリンに止められているから……我慢する、いや我慢しろ、アリシア!」

と怒りで拳を震わせながらも堪えた。海斗は

「それで、アルティアに行く前に、まだ四点聞き忘れていることがあるが、答えてくれるか、アンジェリカ?」

と再度尋ねた。

「何よ、大体知っていることは答えたわよ」

「いいから、答えろ。愛猫は助かったんだろ!」と、アリシアは怒鳴った。

「はぁ~、もうめんどくさいから、オイラはツッコむのやめとくよ」

「頼む、知っていたら教えてくれ。カイアンさんが俺たちを賞金首にした理由を知っているか?」

「悪いけど、それに関しては、聞いた神託はその内容に関して全く触れられていなかったので、私にもわからないわ」

「わかった。カイアンさんは俺たちを賞金首にしたのに、どうして俺のことを助けた? その理由を知っているか?」

「私がカイアンに関する神託を聞いたのは、もっと前の話よ。そんな最近のこと、私が知っているはずないでしょ」

「そうか。後、俺をこの世界に召喚したのはカイアンさんなのか?」

「それも聞いていない。でも、状況から考えてその可能性は充分あると思うわね」

「最後に、『共同開発した魔法』を詠唱した者にも副作用があると言っていたが、どんな副作用なんだ?」

「何よ、そんなことを聞いてどうするのよ?」

 海斗は少し表情を曇らせて

「万が一、アンジェリカの言っていることが正しかったとしたら、教皇に弁解をしにいく過程で、カイアンさんと戦うこともあり得ると思う。考えたくはないが、敵の情報はできるだけ知っておきたい」

と苦しそうに言った。カイアンの事実を受け入れたくない海斗にとって、かろうじて理性が感情を抑えての質問であった。

「……そう。共同開発した魔法を唱えるとね、その詠唱者の生気が失われ、体力の最大量、魔素の最大量、力、魔力等戦闘に関するあらゆるパラメーターが減少するの。簡単に言うと、魔法を唱える度に戦闘に関してレベルダウンが起きる、と言ったらわかりやすいかしら?」

「そうか、……ありがとう」

と海斗は小声で礼を言った。


 その後、巫女を監視するためにアリシアを残して、海斗達はアルティアに向かい、冒険者ギルドを通して領主に保護を依頼した。自立して行動ができない彼女らを西の洞窟までの山間部の道を運ぶのに苦労したらしい。いずれにせよ、領主からの使いによると、彼女らは無事保護されたようだ。


 アリシアと合流した海斗達がアルティアの冒険者ギルドを出ると、

「それじゃあ、私は魔法研究所に戻って少し休もうかしら。帰るわよ、ミーちゃん」

とアンジェリカはやれやれといった感じでミーちゃんに声をかけた。

 すると、領主からの使いの者が、

「お待ち下さい、アンジェリカ様。これをお渡しするように、領主様から言いつかっております」

と呼び止めた。

「何よ」

 アンジェリカは手渡された書類を見ると、そこには『請求書』の文字が。レイナが横から覗くと、

「えーと、アンジェリカ殿。貴殿に巫女を運搬した人件費・20ゴールド、今後火の月までの巫女を養う費用・100ゴールドを××日までに支払うよう命ずる。なお、この状況を直接作り出した下手人を拿捕して、上記費用を支払わせることを妨げるものではない。最悪下手人の死体を持ってくれば、この費用を弁済したものとする……」

と読み上げた……。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 前回の重い展開から一転して、今回は少し軽いノリの回になりました。

 読者の皆様の息抜きになってくれていれば嬉しいのですが。


 とはいえ、いくつかの謎はまだ残ったままです。

 海斗たちは、教皇のいる首都サンクト・ルミナスを目の前にして、これらを解き明かすことができるのでしょうか。


 アンジェリカ編もあと一話。

 次は、いよいよ最終章へと突入します。


 引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。

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