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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第五章 魔法研究家・アンジェリカ

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封じられた記憶と告げられた真実――勇者・高橋海斗の正体

「ダーリン、何かあったのか?」

 なかなか返事をしない海斗を心配してアリシアが大部屋に入ってきた。アリシアもその異様な光景にしばし圧倒されたのか黙りこんで、抜け殻になった巫女達を見ていたが、

「大丈夫だ、とりあえず敵もいなければ、罠もなさそうだ。入ってきていい。そして、猫、この状況を説明しろ!」と扉の向こう側で待機している仲間たちに声をかけた。

 使い魔に続いて、アンジェリカたちが入ってくると、アンジェリカの顔色が変わった。エリザベスはこの状況を見て、思わず両手で口を覆い、レイナはしばし茫然自失となった。今まで表情を変えてこなかった結衣もこの光景に驚いていたようだった。使い魔はご主人の様子に構わず、

「これが、オイラが見せたかったものだよ!」と言うなり、

「いやあ、この光景を見て、ご主人に報告しようと思ったんだけどさ、途中で捕まっちゃったんだよね~」

他人事(ひとごと)のように話した。

 海斗は一旦剣を背負っている鞘に収めると

「これは一体どういう状況なんだ。彼女たちは巫女なのか? 抜け殻みたいになっている彼女たちは、何か呪詛(じゅそ)にでもかかっているのか? 誰がこんなことを?」

と矢継ぎ早に問いかけた。

 使い魔は、

「いきなり、そんな立て続けに質問されてもオイラには答えられないよ。それに、説明をするなら、オイラよりもっと適任者がいるしね。と、言うわけで、ご主人、後は任せた!」

と、まるで主従が逆転しているかのような口ぶりで言った。

 アンジェリカは、

「……そうね、何から話したものかしら。まずは、恐らくこの者達はローレンシア教教会直属の巫女たちだと思うわ。それと彼女らは呪詛にかかっているのではない、いや、ある意味呪詛に近いと言えば近いのかもしれないけれど……」

と何とも歯切れが悪い。

 海斗は思わず叫んだ。

「これは呪詛なのか、それともそうでないのか、はっきりしろ!」

「わかった、わかったから、大きな声を出すのはやめてちょうだい。わかるように話すわ。これはね、カイアンと私が共同開発した魔法の副作用によるものなの。おでこにある刻印がその証ね。それと……」

 アンジェリカは巫女の一人のおでこ付近に手をかざすと、目を閉じて何かを感じ取っていた。

「記憶を封印する魔法が施されているみたいね」

「記憶を封印?」

「簡単に言うと、記憶喪失になるよう魔法をかけられているということ」

「それもお前がやったことなのか!」

と海斗は険しい表情で問い詰めようとした。

「言いがかりはよしてよ。ここに来たのも初めてならば、この巫女達を見たのも初めてなんだから」

 海斗は、本当にお前がやったことではないのか、と口に出かかったが、カイアンの名前が出たことでもう少し詳しく聞こうと思った。

「それで、その共同開発した魔法とは、一体どんな魔法なのか、説明してくれるのだろうな?」

「……それは、欲しい情報を100%確実に、そして強制的に巫女たちが神託として授かるようにする魔法。私は魔法研究家として好奇心で研究・開発したけど、カイアンはどうしても欲しい情報があるらしかった。でも、神託とは本来高次元にいる神が、人類に知らせるべきと判断した言葉を巫女に伝えるもの。それを無理矢理聞きだそうというのは、宗教的にも自然の摂理にも反している。そのせいかどうかはわからないけど、重篤な副作用が魔法をかける者にもかけられる者にも現われることがわかって、表面上開発はストップしたわ」

「表面上?」

「でも、カイアンは諦めなかった。どうして、そんなにこの魔法にこだわるのか、私には疑問だった。そこで、私は最後に、カイアンがこの魔法で何を知りたがっているのかを、この魔法を使って知ろうとした。そうしたら、知らなかった方が良かったことを知ってしまった。それで、私はカイアンから命を狙われるようになった……」

 海斗は

「一体、カイアンさんの何を知ってしまったというんだ。万が一、俺を騙そうとするなら、許さないぞ!」

と顔を真っ赤にしながら言った。その様子は、いつもの冷静な海斗ではなかった。

「それはね……カイアンは異世界から召喚された者なの。そして、彼が知りたかった情報、それは――この世界から元の世界に戻る方法よ。今こそ言うわ、カイアンは偽名で、その正体は先の大戦で魔王を倒した勇者・高橋海斗で、あなたから見れば、平行世界の高橋海斗なのよ。そして……」

 海斗の胸は理解を拒むようにざわつく。海斗は剣の柄に手をかけ、今にも鞘から剣を抜こうかという構えを見せて

「そして…何だ、言え!!」

と怒りを隠さなかった。


「あなたと結衣、二人を賞金首にしたのは、カイアン、その人よ」


とアンジェリカが言い終えるか終えないかの瞬間、理性より先に海斗の怒りが体を突き動かした。海斗は剣を抜いて中段に構えると、

「カイアンさんは老人だった! 平行世界の俺の訳がないだろう! それに俺を助けたカイアンさんが、そもそもそんなこと、するわけがない! また俺を騙す気か!」

と叫んだ。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 ついに、海斗たちを賞金首にした者の名前がアンジェリカの口から告げられました――しかし、海斗は受け入れられない様子です。


 アンジェリカは本当のことを言っているのか。

 そして、カイアンはなぜ海斗と結衣を賞金首にしたのか。


 この章も終わりが近づいています。

 クライマックスを含む最終章では、これまで張ってきた伏線が回収され、

提示してきた謎が次々と明らかになっていきます。


 読者の皆さまが最後までついてきてくださると嬉しいです。


 次回もよろしくお願いします。

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