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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第五章 魔法研究家・アンジェリカ

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崖上の乱戦――火炎斬と誤射、そして悲劇

 海斗は懐からアイテムボックスを取り出し、中の剣を手にすると中段に構えた。

 アリシアは助太刀のため岩陰からとび出してきた。

 一方、衛兵と傭兵もすかさず海斗の周りを取り囲む。

「それじゃあ、いきますか! 炎の精霊よ、我が剣に地の底に眠る炎の一部を……」

 大司教らしき男性は「やめろ、火炎斬はやめておけ!」と叫んだが、海斗は構わず

「……分け与え給え、火炎斬!」

と詠唱、たちまち剣に炎が纏い始めた。

 そして、炎の剣が振られると地面から吹き出した炎の蛇が中心から外へと渦巻状に拡がっていき、取り囲んでいた敵兵十名はたちまち炎に飲み込まれていった。

 しかし、その後海斗は脈拍と呼吸数が増加し頭痛と耳鳴りがした。

「どういうことだ?」

 アリシアが

「ダーリン、ファイアーボールぐらいならともかく、こんな狭い場所で火炎斬を使ってはダメだ。すぐに酸欠になるぞ!」

と叫んだ。

「なるほど、そういうことか」

 海斗は納得した。

 大司教らしき男性は、

「どうして人質交換の場所に洞窟を指定したか、わかっているのか? お前の魔法剣対策のためなのだぞ!」

と叫んだ。

「ハハハ、そういうことでしたか。すみませんね、あらかじめ言っておいてくれたら良かったのに」

と海斗は謝った。

「全く何も考えていない……。敵ながら(いろいろな意味で)恐ろしい奴!」

と大司教らしき男性はつぶやいた。

「えっ、何か言いました?」

「後、風属性の魔法も使うなよ。この洞窟は時々崩落事故が起きることで有名なのだ」

 海斗はなるほど、と思った。これで、火炎斬もカマイタチもダメで、この洞窟内では魔法剣は使えないということか。

「だからといって、なめるなよ! だてに魔物狩りで剣技を磨いてきたわけじゃない!」

 海斗は助太刀に来たアリシアに背を預けて、あらたに取り囲んできた残りの敵兵と対峙した。

「結衣、今のうちに猫を頼む!」

と海斗は叫んだ。結衣は岩陰から飛び出し、キャリーバッグを拾い上げた。敵のハンターが結衣の背に向けて弓を構えている。


 結衣は素早くキャリーバッグに近づき拾い上げると、アンジェリカ達がいる崖の方へ逃げようとした。

「そうはさせるか!」

 敵のハンターは結衣に照準を定めると、弓を限界まで引き絞り連続して矢を放った。この距離なら、そう簡単に当たるもんですか! 結衣は左手でキャリーバッグを持ち、矢を避けるか、右手のダガーで打ち落としながら逃走した。

 自分の猫のことで頭がいっぱいのアンジェリカはオロオロしていて全く戦力になっていない。

 レイナは岩陰を移動しながら、海斗達を取り囲んだ敵兵に向けて、矢を射ている。

 エリザベスは結衣を援護するため岩陰から詠唱する。

「全能なる神よ、我にその奇跡の光の一部を分け与え給え、ライトニングアロー!」

 光の矢が敵の矢に当たり、攻撃を無効化したかに見えた、その瞬間。光の矢は方向が変わって逃走している結衣の足下に刺さった。

 結衣は、エリザベスがいる岩陰の方を睨みつけた。

「結衣さん、これは違うんです。今のは、敵の矢に私のライトニングアローが当たって……」

 敵のハンターは、その隙を見逃さなかった。ハンターが放った矢が、結衣の背中に深く突き刺さり、焼けつくような痛みが背中から全身に走った。結衣は息が詰まり、膝が震え、体が支えきれずにその場に崩れ落ちた。


 エリザベスは

「どうしよう、もし矢に毒が塗られていたら…私、取り返しのつかないことを……」

と動揺した。倒れ込む結衣。

「結衣っ!」

 海斗の叫び声が洞窟内に響いた。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 エリザベスと結衣のわだかまりが原因で、ついに犠牲者が出てしまいました。

 結衣は大丈夫なのか? そして猫は? ついでに何の役にも立っていないアンジェリカは?(笑)


 次回もお付き合いいただければ幸いです。

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