作戦開始のはずがカオスに!?
「オーホホホ、Kaitoを生け捕りにしてやったわよ。早く人質の姿を見せてちょうだい!」
洞窟の深部にアンジェリカの声が響く。海斗は綱で捕縛されており、その綱の一端をアンジェリカが握っていた。
すると、海斗らから見て正面にある崖の上の穴から大司教らしき人物を中心に、装備から衛兵、さらにラフな格好の傭兵と思われる者たちを加えて、およそ二十名が姿を現した。
海斗とアンジェリカの立っているところは、ちょうど天井と底との中間の高さの崖であり、大司教らがいる崖とは橋の役目をしている狭隘路でつながっている。
すると、大司教らしき男性が、ペット用のキャリーバッグらしきものを取り出すと、
「ほれ、お前の人質はこの通り無事だぞ。あくまで今のところは、だがな」
と答えた。
キャリーバッグの中から、ミャーという鳴き声が聞こえてくる。
「猫?」
海斗は思わずつぶやいた。
「ああ、ミーちゃん、今助けてあげるからね」
と明らかにアンジェリカは動揺していた。
「おい、待て。俺は猫が人質なんて聞いていないぞ。……いや、正確には猫質か」
「だって、使い魔の猫が人質なんて言ったら協力してくれないでしょう?」
いや、確かに、確かにそうではあるが。
「俺は猫と同等の扱いかよ。というか、解剖されかけて殺されそうになったことを考えると、俺の命って、猫以下の価値なのかよ……」
と海斗はため息をついた。
「いいか、こちらから使いの者を出す。Kaitoを捕縛したまま、そこで待て。Kaitoがこちら側まで渡って来たら、お前の猫を解放してやる。くれぐれも変な気を起こすなよ。変な気を起こしたら……」
「わかった、わかったわ! Kaitoの命はどうなっても構わないから、ミーちゃんには手を出さないでちょうだい!」
こんなオロオロしているアンジェリカを初めて見た。だが、一つツッコませてもらうなら、普通そこは「私の命はどうなっても構わない」だろう? 俺の命はもはや猫未満かよ!
衛兵らしき二人が槍を持ってこちらの崖に向けて狭隘路を渡ってきた。海斗を捕縛している縄の一端をアンジェリカから奪うと、
「お前も変な気を起こすなよ。いつだってお前を殺すことはできるのだからな」
と海斗を脅してきた。
「わかっている。猫と交換って言うのが、イマイチ気にくわないがな!」
そして、狭隘路を敵兵と共に渡って、敵方の崖まで海斗は連行された。
「もう、いいでしょう! ミーちゃんを解放して!」
アンジェリカは懇願するように叫ぶ。大司教らしき男性は、コホンと咳払いをすると
「ところで、アンジェリカ、くれぐれもKaitoと戦って生きたまま捕縛してこいと厳命した筈だが……」
と言い始めた。
「何よ、戦って捕縛しようが、色仕掛けで捕縛しようが結果は同じじゃない!」
「それが違うのだな、こちらにとっては。さらにKaitoを解剖しようとしていたとの報告があがっている。これでは契約不履行だ。よってお前の猫は見せしめにここで殺す!」
「ちょっと、ちょっと待ってよ。大体何でそんなことを知っているのよ? 話が違うじゃない!」
アンジェリカの顔は血の気が引いて、明らかにうろたえていた。
大司教らしき男性は
「約束を破った自分を呪うのだな」
と言うと、猫の入ったキャリーバッグを地面に置き、ファイアーボールの呪文を唱え始めた。彼の手が赤く輝き、炎の球体が不気味に膨らむ。そして、洞窟内の空気が熱を帯び始めた。
「キャー、やめて! お願いだからやめて!」
火球の光を映すアンジェリカの瞳には涙が溜まっていた。
その時である。
「全知全能なる神よ、敬虔なる者達に御力を分け与え給え、フィジカルエンハンス!」
と詠唱する声が岩の影から聞こえてきた。
海斗の体が青白い光に包まれる。
「ヨッシャー、これで戦える!」
海斗は捕縛していた縄を一瞬のうちに引きちぎった!
ここまで、お読みいただきありがとうございました。
……今回は、カオスな回になってしまいました。
「俺の命は猫未満かよ!」
海斗の悲痛な叫び声が聞こえてきそうです!
そしてやたらとうろたえるアンジェリカ……。
ツッコミどころが満載な展開でしたが、
次回はようやく本格的に作戦が動き出します。
引き続き楽しんでいただければ幸いです。




