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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第五章 魔法研究家・アンジェリカ

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体で支払ってもらおうかしら?

 海斗が冒険者に聞いた場所にやってくると、確かに雲海楼(うんかいろう)と書いてある看板を掲げた店があった。未成年の海斗がおそるおそる店の中に入ると、テーブルに三組の客たちとカウンターに一人、長髪で金髪の女性が酒を飲んでいた。

 海斗はカウンターの女性の席に近づくと、酒場のマスターが

「お客さん、何にします?」

と聞いてきた。

 海斗はアルコール以外の飲み物を頼むとなめられると思い、蒸留酒のロックを頼み、9カッパーを支払った。

 そして、コップを持って金髪の女性の隣に座った。

「すみません、あなたがアンジェリカさん、ですか?」

「アンジェリカだけど、何? 仮面の坊やが私に何か用?」

 アンジェリカは、大人の余裕を見せつけるかのように、グラスを揺らして氷が奏でる音を楽しんでいたかと思うと、グラスの中の酒を一気に飲み干した。

 横から見ると、胸元の開いた赤い革のワンピースに、太ももまでの茶色のタイツ。ワンピースとタイツの隙間からのぞく素肌が、妙に艶めかしかった。足には短めの黒いブーツ。茶色のマントを羽織った、美しい女性だった。スタイルも申し分ない。

 正直、視線を逸らすのが難しいほど、挑発的な装いだった。

「実は、賞金首の依頼を冒険者ギルドに伝える際に、教会側の窓口になっている方をご存じと聞いて来たのですが」

「そんなこと聞いてどうするの?」

「それはここではちょっと……」

 海斗は横目でマスターをちらっと見た。

 アンジェリカはマスターに向かって

「蒸留酒のロックをもう一杯。それと悪いけど、テーブル席に移動させてもらうよ」

 と言って、グラスを持って酒場の一番端っこの席に移動した。海斗もそれに付いていって向かいの席に座った。

「で、窓口になっている人間のことを知って、どうするつもり?」

「実は、ある人物を賞金首にした、教会内部の人間が誰なのか知りたいのです」

「ふーん。それって賞金首・Kaitoの話じゃないの? 仮面姿のKaito君?」

 海斗に緊張が走った。思わず癖で、背負っている剣の柄に手が伸びそうになった。

「おお、怖い、怖い。こんなところで人を斬ったら、それこそすぐに捕まるわよ、Kaito君」

 大人の余裕なのか、アンジェリカは全く動じる様子がない。

「どうして、俺がKaitoだとわかった?」

「知っていると思うけど、私、教会内部で飛び交っている情報には耳聡いのよ」

「教会内部では、既に俺が仮面を着けて行動していることもわかっていると?」

「それどころか、剣士、ハンター、ヒーラーの女を一人ずつ引き連れて、同じく賞金首のYuiと行動を共にしているとか、Kaitoは魔法剣も覚えたとか、最近ローレンシア教皇国に入ったらしいとか、いろいろとね」

 海斗は思わず(うな)ってしまった。それにしても、ここまであからさまになっているとは。もっとも今まで戦ってきた刺客の生き残りが教会に報告していたら、教皇国に入ったこと以外はそれくらい知られているのかもしれない。そして、魔女のこのお姉さんには仮面に付与された魔術の効果も効かないのかもしれない。

「そいつは話が早い。誰がどういう理由で俺たちを賞金首にしたのかを知りたいんだ」

「フフ、誰があなたたちを賞金首にしたかぐらいは知っているわ」

「本当ですか?」

「疑うなら、別に私はいいけど」

 そう言うとアンジェリカは蒸留酒を一口飲んだ。

 海斗はしばし考えた。が、今疑っていても始まらない。嘘かどうか後で検証することにして、今はその情報を聞いておくべきではないのか。

「疑ってすみません、できたら誰が俺たちを賞金首にしたのか、教えてくれませんか?」

「それ喋っちゃうとね、教会内の内部告発者が誰かばれちゃう可能性もあるからね。その人の逃亡費用も含めて、お高い買い物になるわよ」 

 アンジェリカはグラスを口の近くまで持ち上げると、揺らして氷を転がしながら言った。

 海斗はごくっと唾を飲み込むと、おそるおそる聞いてみた。

「それで一体どれだけ払えば教えてくれるのですか?」

「まあ、最低でも1000ゴールドね」

 1000ゴールド! アリシアが知ったら跳び上がりそうな金額だ。素材集めの魔物退治を何十回行ったら、そのぐらいの金額になるのだろう。いずれにせよ、そんな金、持ち合わせていない。

 海斗は三秒間見つめる口実で

「すみませんが、20ゴールドにならないでしょうか?」

と尋ねてみた。

「それって、値切るというより、ほとんどタダで教えてくれ、といった値段よね?」

と言うと、アンジェリカは蒸留酒で頬を赤くした顔を海斗の方に向けてきた。

……1、2、3、4。海斗は念のため見つめたまま三秒以上数えると、

「すみません、手持ちの金がないのです。他に教えてもらう方法はないですか」

と再度尋ねた。

 アンジェリカは赤い頬の顔を海斗の顔に近づけながら

「そうねぇ、じゃあ体で支払ってもらおうかしら……」

 え、体って。肉体労働って意味ですよね。……それとも、まさか、そういう意味なのですか? いずれにせよ、情報を教えてもらえれば最悪逃げ出せばいい、と自分に言い聞かせて、

「わかりました、それでお願いします」

と、海斗は答えた。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。


 海斗に、まさかの展開? 妖しい容姿のアンジェリカの妖しい言葉。


 果たして、はぐらかすアンジェリカから『海斗たちを賞金首にした張本人』を聞き出すことはできるのか?


 そして、海斗はついに卒業してしまうのでしょうか(何を!?)。


 次回もお付き合いしていただければ幸いです。

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